↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/166

110話

遅くなりました。

「未練ですか……そりゃありますよね」


 見た目的にお松さんは十代前半といった感じだ。人生これからというところだっただろう。昔は結婚するのも早かったというし、もしかしたら結婚相手なんかも決まっていたかもしれない。

 しかしモンスターを捜し求めて来たはずなのに、いつの間にか苦手なはずの幽霊と世間話をしている。人生って何が起こるかわからない。


「それで、その未練というのは何なんですか?」


「カステラという菓子を食べて見たかったのです」


「カステラ、ですか」


「あと男前な旦那さんと可愛い子供たちに囲まれて、幸せに生きたい人生でした。シュナイダーのような可愛い犬も飼いたいです」


「……シュナイダーのとこは今思いつきましたよね?」


「あと……」


 それからもかなり未練が残っているお松さんの愚痴を聞かされる。しかしなぁ、やはり幽霊になってしまっていては叶えるのが難しい物ばかりだ。

 シュナイダーもなんとかならんのか? と言ってくるが、お松さんすり抜けちゃうしカステラは食べられないと思うんだ。

 一応カステラ自体は収納に入ってるけど、出しても食べられないから残酷なだけだ。


「カステラあるんですか? 見たいです」


「見たいって……食べられないけど良いんですか?」


「お願いします! 見るだけでも」


 そういうことならと、カステラを取り出して切ってお皿に並べてすっとお供えする。これで成仏できるだろうか?


「おぉ、これがカステラ。四角い!」


 お松さんがキラキラした瞳でカステラを見ている。そしてカステラに手を伸ばすが、やはりすり抜けてしまい掴むことすら出来ない。

 悲しそうな表情をして俯くお松さんに、何とかしてあげたい気持ちもあるが、こういうのは専門外なので自分にはどうしようも出来ず、良い案は思い浮かばなかった。


 正座している膝をポンポンとシュナイダーが叩いてくる。どうしたのかとシュナイダーを見ると、幽霊って人に取り憑いたり出来るんじゃない? と言ってくる。

 いや、流石にそれは……いくらお松さんが怖い幽霊じゃなかったとしても、自分にはハードルが高すぎる。第一出来るかどうかもわからないし、出来たところでそのあとの自分がどうなるか……


「憑依か……アレならできるかな」


 アイテム欄に物凄く曰くがありそうなあれがある。見た目は可愛いらしく、説明文が怖いやつが。収納から生き人形を取り出して、カステラの横に置いてみる。


「お人形? 可愛らしいですね」


「お松さん、この人形に乗り移ったりってできませんかね」


「乗り移る?」


「ええ、この人形なんですけど……」


 生き人形の説明をすると、やったことはないけど試してみるとお松さんが目を閉じて人形に手をかざし、むむむむむと唸り始めた。

 次の瞬間、パッとお松さんの姿がかき消える。成功したのかはたまた唐突に成仏したのか、息を飲んでみていると、ピクリと生き人形が動いた。

 うおっ! 多分お松さんなんだろうけどめちゃくちゃびっくりした。いや、たまに動くって説明に書いてるしまだ分かんないか。


「お松さんですか?」


 呼びかけるも返事がない。いやこれお松さんじゃなかったら余計に怖いぞ。しまっちゃおうかな。


「動く、動くよ! ほぁ、喋れた!」


「おお、その声はお松さん。成功したんですね、良かった」


 まだ慣れていないのか、ぎこちない動きの生き人形inお松さん。まさか本当に成功するとは思わなかったが、モンスタードロップの不思議な力だろうか。

 後は物が食べられるかどうかだけど……流石にそこまでは無理か?

 カクカクとした動きでカステラに歩み寄るお松さん人形は、中々ホラーじみている。なんとかカステラまでたどり着くと、かぷりとカステラに噛みつきもぐもぐと咀嚼していく。


(えっ、食べられるんだ……)


「甘い! おいしい!」


 お気に召したのか凄い勢いでカステラを食べていくお松さん。呆気にとられてみていると、自分の大きさの半分はあろうかというカステラを、全て平らげてしまった。あの人形の大きさのどこに入ったというのか、そもそも食べられることに驚きだ。

 しかしこれで成仏できるだろうか。カステラを食べたお松さんは、シュナイダーにモフついて幸せそうな表情をしている。

 シュナイダーは良かった良かったっとモフられるがままだ。優しい奴だよ本当。


「どうです? 成仏出来そうですか?」


「ありがとうございます。これで夢の一つが叶いました」


 お松さんに話しかけると一旦モフるのをやめ、こちらに向き直りぺこりとお辞儀をしてくる。

 うんうん、これで自分を恨んで呪ったりとかは無さそうだ。お松さんが良い幽霊で良かったよ。


「それで次なんですけど、相手は年上の男前な方が良いです」


「えっ? どういうことですか?」


「お兄さんなら、わたしの望みを叶えて成仏させてくれるかもしれません。この機会を逃したら、わたしは一生独り身です」


「えぇ……でも幽霊なんてお松さん以外会ったことないですよ? それに人形も女の子の形のやつだけですし。それに最近では結婚しない方も増えてきてるし、焦らなくても良いのでは?」


「そこは、なんとかなります。愛さえあれば形なんてどうでも良いんです! 焦るも何も、もう何百年とたってるんですよね? 行き遅れなんて話じゃないですよ」


 そう言われてもなぁ。そもそもお松さん、生きてないじゃないか……なんだか妙なことになった。

 こうして幽霊入りの人形が同行することになった。どうしてこうなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー ツギクルブックスの作品紹介ページに飛びます画像をクリックするとツギクルブックスの作品紹介ページに飛びます!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。