表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
システムソフトウェアの日常譚  作者: ありぺい
第1章 「ガーランドと星の少女」
14/14

相棒




ガーランドとの戦闘から日を跨がずして夕刻。


撤退を余儀なくされ、再びステラ宅に逃げ込む男女計四人。

スタットは馬の世話をする、と言われる前に自分から家に入るのを拒否した。非常時だろうと、「男は家に入るな」というステラの言い分を尊重する姿に義理強さを感じる。


ステラは個室に閉じ篭り、俺とピアはリビングで頭を悩ませている。


「ピア、どうだった?」

「駄目でした。何を聞いても返事は無いし、目も焦点が合ってないみたいでした。本当に何が原因なのか分からなくて……」


ステラは、ガーランドが復活した瞬間から精神が安定していない。旧知の仲という事でピアに探りを入れさせたが、全く無意味だったようだ。


数少ないステラの発言から分かることは、過去の事件は『災悪の術式職人』とやらが関わっており、そして、両親の死にそいつが関わっているという事。


ガーランドとステラの関係は?

災悪の術式職人は一体何者で、何をした?

ステラの語らぬ事件当日、一体何があった?


疑問は尽きず、解決しないまま増えてゆく。

真相がわからずとも、ステラをあの状態のまま放置するのは人としてどうかと思う。


「仕方ない、今度は俺が聞いてみよう。何か違う反応をしてくれるかもしれない」

「だといいんですけどね……」


心配そうなピアからバトンを受け取り、ステラの個室に向かう。


「ステラ……入るぞ?」


返事は無い。

無言を肯定とみなし、俺は無遠慮に中に入る。

部屋の中には、ベットの上で体育座りをしながら、頭を膝に埋める少女がいた。


「お願い……何も聞かないで………。じゃないと私は……」

「分かった落ち着け。俺は何も昔の事を聞きに来た訳じゃない」


嘘である。

慰めるためとはいえ、一瞬前まで過去の真相を聞くつもりだった。しかし、本人が拒否していると知って速攻で目的を変更する。


「俺はこれからの事を話に来た。まず、ガーランドと戦うのはもう無理そうか?」


無言で首を縦に振るステラ。

「討伐」という単語を使わずに、「戦う」と表現したのは俺なりの配慮である。


「私にあの子は殺せない……」


あの子という言い方は、ステラが育てる目線に立ってガーランドと接した過去を示している。

そう、これなのだ。

彼女本人の口から、両親を殺したのはガーランドではなく「災悪の術式職人」だとは聞いているが、この事件にガーランドが関係しているのは、ギルドの長でありステラ兄であるパルサーの話からはっきりしている。

両親が殺害された後、その場から飛び立つガーランドを見た………と。

そしてこのステラの「あの子」という言い方。

まだ何かあるのだ、俺達が知らない何かが。


「じゃあ、俺達がもう1回あいつを殺しに行く事になったら、お前は止めるか?」


今度は首を横に振った。

ガーランドは帝国でも手をつけられない殺人兵器並の戦闘力を有し、そして森林を少しづつ削って砂漠化させる自然破壊の最前線だ。

ガーランドの死は仕方ないと受け入れつつも、自ら手を下す事は出来ないという事だろうか。


「そうか。なら、俺達はもう一度ガーランドを討伐しに行く。いや、もしかしたら『俺は』かもしれないけどな」

「家は使っていいよ……。泊まるところ、ないんでしょ?」

「いいのか?」

「ご飯作ってくれるなら……」


ステラが俺達の行動になんの嫌悪感も抱いていないのが救いだろうか。しかし、スタットはこっそり例外にして。


「分かった、ありがとう」


ステラの部屋を後にすると、リビングで申し訳なさそうな、それでいて神妙そうにしているピアがいた。

何か言いたげにしているみたいなので、こちらからそれを促してみる。


「どうした、ピア?」

「私、一旦ガーランド討伐降りてもいいですか?」


そうだろうなとは思った。

ピアがガーランドを討伐したいと言い出したのは、元々ステラの両親の敵討ち。そのステラが殺すことを望んでいないとしたら、ピアがガーランドに執着する理由はなくなる。むしろ、討伐する事でステラが悲しむなら、それはピアにとってマイナスにすらなりうる。

それでも「一旦」と前置きしてくれるのは、ここまでやってきたのに急に降りる申し訳なさと、まだ協力の意思がある事の現れだろう。ステラの意思さえ固まればもう一度一緒に戦おう……という。


「そう言ってくると思ったよ」

「すいません!私が言い出した事で、私が勝手に付いてきたのに、こんな自分勝手な辞め方してしまって……」

「いいっていいって。元々ステラの為だろ?」


俺もの方もあっさりと承諾するが、その実、今が危機的状況であるのを否定するだけの材料はなかった。

これで魔導は、術式を用意出来ても発動はできないというぽんこつに成り下がった訳である。

―――――――じゃあ今から付け焼き刃で剣術でも覚えて、ガーランドに挑むか?

そんな程度で倒せる相手なら、とっくに他の誰かが倒しているだろう。そうでないという事は、つまり無力な一般人がどうにかできる相手ではないということだ。

しかし、事件調査の前金がそこそこ残っている事と、前払いという便利なシステムを駆使して魔導師を雇えば、まだ不可能ではない。剣士も、雇えばいいだけの話である。


「とりあえず、ステラから許可を貰って、寝泊まり等の拠点としてここを使わせてもらう事になった」

「よくステラはそんな話納得してくれましたね」

「いや、言い出したのはステラだ」


信じられない、といった様子のピア。

でも事実そうなのだ。

宿の提供は、俺から申し出た話じゃない。


「しかしだな、ステラの飯を作るのを条件として出されてるんだ。だけど、俺はまだ料理が出来ない」


何が言いたいのかちゃんと察してくれたピアは、それならば、と快く引き受けてくれた。

よかった。断られたらどうしようかと思っていたところだ。


「じゃあ、俺はスタットでも連れて付近の街に行ってくる。夜までには戻ってくるから」

「じゃあ今日は何か美味しいものを作っておきますね!」


妻というものがいるなら、ピアみたいな奴が理想形であるのだろう。そして、そんな相手に夕食を作ってもらえることを内心嬉しく思いつつも、決して異性として意識して貰えることは無いと分かって少し悲しくなる。


家の外では、スタットが気難しそうな顔で空を見上げていた。


「おーおー、どうしたスタット。空なんか見上げちゃって。なんかあったか?」

「お前らのせいに決まってるだろうが……。分かってるのに聞くの、ほんといい性格してやがるよお前」


商売道具である馬車を失ったスタットは、ただ二匹の馬を飼うニートとさほど変わらない。

だが、減らず口を叩く気力すらないのか、あまり強く文句を言ってくるわけでもなかった。


「そんなスタット君に朗報です。あなたの就職先が決まりました」

「…………?」

「今この瞬間から、ガーランドを討伐し、ついでにある事件の真相を探り終えるまで、俺がお前を雇ってやる」

「………ほう!」


口調から、スタットがいつもの調子を取り戻したのが分かった。悪ノリが好きそうで、それでいて雑で、情に厚くて、いつも楽しそうなこいつの通常運転が再開したのだ。


「今の所持金が続く限りは給料も払おうじゃないか。だから俺の事は社長と呼びたまえ」

「やなこった」


冗談をニヤニヤ顔で一蹴するスタット。

そうそう、お前はそうでなくちゃ。


「とりあえず街に出るぞ。この付近で街っていうとどこら辺だ?」

「そうだな………、確かもともと森林内の街だったが、荒野に飲み込まれて廃れた土地があるとかなんとか聞いた記憶があるぞ」

「決まりだ、そこに行こう。ヒントは案外、そういうところにある気がする」


ともかく、事情を知ってもらわなければ協力もクソもない。

俺は、今までの経緯をスタットに伝えた。

この世界に来る以前の全てを。


「なるほどなぁ。それで、ガーランドの事件なんて調べてたのか」

「その通り」

「ガーランドの事件なら、俺も少しは耳にしてるぜ?」

「そういうのいいな。結構期待できる」

「ガーランドの事件はファインデリーズじゃ有名だし、ステラってガキも噂程度には聞いてたからな。まぁ、期待してもらったところ済まないが、これも噂程度の話だ。ガーランドが急に現れた瞬間を見た主婦がいるって話」

「それ、詳しく」

「やけに食いつきがいいな。その主婦ってのが夜更かしが趣味で、その晩は満月を一晩中眺めてたって話だ。そんな時、街を歩く『五人組』の姿を見たらしい。そして、その内の一人がステラってガキだったんだとさ」


五人組………?

確か、事件の日に殺されたのは………

ステラの母親。

ステラの父親。

ステラの弟。

そして、その場にいて生き残ったのはステラ一人という話だったはずだ。

どう計算しても、「その場には四人しか居ないはず」なのだ。


「あのガキのさっきの話を聞いて俺は思ったね。その場にいたもう一人ってのは……」


ここまでヒントがあれば考えるまでもない。


「「災悪の術式職人」」


俺とスタットの認識は一致した。


「間違いないな」

「ああ、最高の情報提供だ、スタット。」

「だけど、夜目の効かない普通の主婦だ。見間違いの可能性を忘れるなよ?」


と、言いつつも、スタットはその仮説を確信しているようだった。そしてそれは俺も同じである。

今求められているのは、根も葉もない噂だろうとなんだろうと、欠片でもいいからガーランドに関する情報を集める事だ。


「それじゃあしばらく協力してもらうぞ。よろしくな、スタット」

「馬車代稼がなきゃいけないしな、その為だったらガーランドだって何だって倒してやるよ。よろしく」


そう嘯くスタットを握手を交わす。

事実上の相棒だ。


「そうだ、目標をはっきりさせてくれや。そっちの方が、ただ指示をうけるより、こっちとしてもやる気が出る」


スタットにそう要求されて気がついた。

明確な目的が、現状存在しない事に。

確かに、俺は今「ガーランド討伐」、そして「ガーランド襲撃事件の調査」というふたつの依頼を抱えている。

討伐できなかったら真相探ってそっちの報酬で生活すればいいか。逆もまた然り…………くらいの雑で不明瞭なプランを進行させていたのは否定出来ない。

しかし、ピアという強力なサポートを失った今、適当な行動は命取りになる。特にガーランドとの戦闘は。

それにステラとに約束した上に、ピアにまで誓ってしまった。


――――――パルサーに真相は伏せる、と。


「先に宣言しておくが、ガーランド討伐は続行。一度負けてそのまま引き下がる訳にはいかない」

「賛成だ。けど手段は?」

「俺は術式が書ける。到底人間では書くことが出来ないレベルの高威力高精度なものが、だ。それを武器にしないテはない」


そして、ここからが本題だ。


「その次に、過去の事件を探って……まぁ、ステラを慰めたり出来たらいいな? 」

「おいおい、はっきりって言ったのにそれかよ」


が、スタットに怒っている様子もなく、納得してくれているのは間違いない。義理堅い男だ、きっと俺の気持ちも分かってくれるだろう。

そう、この世界に来てからここまでの俺の目的の全てが、安定した生活の確立と、恩義に報いる事だった。

要するに、金とピアの為である。


ならば両立するまで。

最近は作戦失敗など不調続きだが、そろそろ高性能据え置きゲーム機としてのプライドを見せていかないとまずい。


「そしてこれが最後の目的になるが……『災悪の術式職人』とやらをとっちめてやろうかなって思ってる。情報も、そいつから聞き出せれば一石二鳥だ」

「いいじゃねぇか、乗るぜ」


恩人であるピアの親友であるステラ。その両親を殺した輩となれば、紛うことなき敵である。

そいつは真相を完璧に知っているだろうし、そいつに謝罪の言葉でも述べさせれば、ステラも少しは今の状態から回復するだろう。


「と、そういう訳だ。あんだすたん?」

「あんだすたん」

「OK。なら、早速街にいくぞ。夜までには帰りたいんだ」

「何か外せない用事でも?」

「ピアが夕食作ってくれるのに、帰らないわけにはいかないだろう」


違いない、と笑うスタット。


早速街へ行こうと、特に他意はなく栗毛に乗った俺だが、ここで問題発生。

腹を蹴ってみたら、突然暴れ出す栗毛。


「ちょ……危なっ……」


実際はちょっと揺さぶられた程度なのだが、乗り慣れてない俺は速攻で落とされてしまう。

腰を強打して倒れ、スタットの手を借りて立ち上がる。


「おいおいどうしたレイド。ガーランドから逃げた時とは随分様子が違うじゃねぇか」

「おかしいな……? 持って生まれた抜群のセンスで昨日は乗りこなしてた筈なんだが」

「しょうがねぇ。マロンの前に俺が乗るから、お前は俺の後ろに乗れ。白鳥丸は留守番にしておこう」


マロンが栗毛の名前だとわかった時、俺は白鳥丸の時と同じ事を思った。


――――――飼い主のネーミングセンスがないって可哀想だな……。


しかし、マロンならまだ白鳥丸よりはマシな気がして、より一層白鳥丸への同情が増した。

そんな事を思いながら、俺たちは馬を街まで駆けさせた。


今、リアルが死ぬほど忙しいです。


なのに、おはなし書くの、たのしいな?


冗談を言っている場合ではないので、4月15日まで一切続きを書きません。

それ以降は狂ったように書くと思いますので、どうかご容赦を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ