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010_『風の手』の壊滅

またもや残酷な描写がございます。

レビュー・感想お待ちしております。

俺はサボーをゴーレムに預け、人目に着かない所へ運ぶように指示を出した。

その後、何も知らずに新人を連れやってきたタージュは困惑していた。

新人は急にクエストが中止になったから、帰れと言われタージュはサボーを探そうと一人になった所を拉致した。


その後に拷問にかけていたのだが、厄介な事になった。


「くそ、俺は帝国の間者だ!!もし国にバレたら、お前如きどうなるかわからんぞ!!?」

「帝国…だと?」


その後、色々やって口を割らせたが俺が欲しい情報は持っていなかった。

かつて俺が住んでいた村を焼き払った帝国兵、いや実行犯は分からなかった。

単に国からの命令で村の蹂躙を行ったという情報のみだ。

そして2年前にウィレームの街を襲ったのは、帝国兵ではないという事だ。

こいつ自身もそれを調べるため、ウィレームの街を離れられないでいたらしい。


サボーと同じく縛り上げて監禁する事にしておいた。

そして残りは二人。


残念な事に、あのババアことリルハはもうすでに街を去っていたとの事だ。

1年前のダンの結婚を機に別の街へ行ったらしい。

それ以来、サボーもタージュも消息は分からないと言っていた。



-----------------------------------------------



本当に順調だった。

ウィレームの街でも有数の冒険者であるダンからプロポーズされ、私は幸せだった。

良く言う、結婚すると旦那はダメになると言われてるがそんな事はなかった。

ダンは私のために、冒険者稼業もやりつつギルドの細かい仕事まで引き受けてくれる。

そのおかげで、老齢だったギルド長も次のギルド長候補は彼がいいと分かってもらえた。


そして今日はダンがクエストから帰ってくる日だ。

きっと疲れてるだろうけど、ダンの事だから私をとっても愛してくれるだろう。

冒険者として活躍するダンも素敵だけど、そろそろ危ない仕事は離れてもいいんじゃないかな?

それにそろそろ、二人の間に新しい命を育んでもいいんじゃない?

きっと子供が出来たと分かれば、ギルド長もその役を降りてダンに任せてくれるわ。


今日はダンの為に、好物のシチューを作ろう。

奮発してワイルドボアの肉も買ってきたんだから。


「あれ、もう帰ってきたのかな?」


私は調理を途中でやめて、扉を開ける。





それから数刻経ってからダンが帰ってきた。


「おかえりなさい、貴方」

「ああ、ただいま、イリス」

「あの…、貴方のお友達が来てるわ」

「友達?」


ダンはその人を見ると、とても驚いていた。

もしかして友達じゃないのかな?


「ね、ねぇ、ダンどうしたの?知り合いではないの?」

「あ、ああ、その」

「すいませんね、ダンさん。急にお邪魔しちゃって。近くに寄ったもんですから」

「あら、知り合いじゃない」

「そ、そうだ。久しぶりだな、サボー」


俺は近くの物陰からミニゴーレムでその様子を見ていた。


「プハァーーーー!!何あれ!?ダンの奴、口が開きっぱなしだよ!!」


ともかく、ダンへの復讐が開始された。



「そうだ、今日はあなたの好物のシチューを作ってあるわ!すぐ食べるかしら?」

「あ、ああ、食べる。すまない、サボー。今日は引き取ってくれるか?」

「いやぁ、なにぶん、ダンさんと俺との関係ですから、てっきり泊めてくれるかと思って立ち寄ったんですが。それにこんな時間じゃ宿屋も人を入れてくれないでしょう」

「あら…、それは大変だわ。どうしましょう」

「いやいや!すいませんね、奥さん。まだ新婚なのに。分かりました、俺も冒険者ですから軒先でも寝れます。ただ飯の準備だけは出来ないんで、久しぶりに友人との再会も祝してご飯だけ頂いてもいいですか?」

「いや、しかしだな…」

「まぁ、いいじゃない!本当はお部屋でも用意したかったんですけど、小さい家ですからごめんなさい。でもダンがギルド長になればもっと広い家に住めますわ」


サボーさん?

ちょっと最初は雰囲気が怖かったけど、ダンが帰ってからは急に明るく話しかけるからやっぱり友達なんだね。

ダンの為のシチューだけど、友達ならちょっとくらい食べさせてもいいよね。


「おいしいですね、奥さん!」

「奥さんだなんて、、、まだそう呼ばれるのは慣れてませんわ」

「いやいや、ダンさんがギルド長になれば、奥さんはギルド長夫人?になるんですかね、ワハハ」


サボーさんは口がうまい。

何だか話してて楽しくなる。

昔はダンと良くモンスター討伐をしていたらしい。

ダンはあまり冒険者稼業にういて語らないけど、こうして友達からダンの活躍ぶりを聞くと誇らしく思えるわ。


「ダン、どうしたの?あまり食が進んでいないけど?」

「あ、いや、おいしいよ」

「そう良かった」


おかしい、ダンの顔色が悪そうだ。

クエスト帰りだから疲れてるのかな?

残念だけど、今日は早く寝かせてあげよう。

また明日になっても幸せな日は続いてるのだから。


「そういえば、奥さん。俺はダンさんに感謝しているんですよ」

「今度はどんな、ダンの自慢があるのかしら?」

「えぇ、俺は昔にヘマしちゃって、犯罪者になっちゃったんですよ。けどね、そこでダンさんが俺に色々教えてくれたんですよ」

「え・・・?」

「ダンさんがアホな新人や商人とかを連れてくるから、お前が殺して金品を奪えってね。いい女とか使える奴は奴隷商に売り払えとも教えてくれましたよ。いやー、ほんとに目からウロコっていうやつですね。犯罪者になって、全うに街に出入りも出来ない、冒険者も出来ない俺がこうやって生活出来てるんですから!」

「ちょ、ちょっと、どういう事なの!?」

「あー、それと。ダンさん、最近ギルドの頭の悪そうな受付嬢を物に出来たって。うまく行けばギルド長の地位も狙えると自慢してくれましたよ!」

「どういう事!!?」

「違うんだ、イリス!こいつは嘘をついてる!こんな奴は俺の知り合いじゃない!」


突然、目の前が真っ暗になった。

一体、この人は何を言っているの?

どういうことなの?

私は頭が悪くて、またもゆるい・・・?

どうして?

どうしてそんな事を言うの?

違うって言ってよ、ダン。

私の目を見て、違うって言って。


「くそ、帰れ!サボー!」

「いやいや、何言ってるんですか?無事にギルド長になれたら、そこのビッチは俺らに輪姦させて、売り払っちまおうと言ってたじゃないですか?」

「サボー!!」

「じゃあ、俺が確かめさせてあげましょう」


サボーは突然、剣を抜くと私を斬りつけた。




----------------------------------------------------




あー、もうだめだ。

笑いすぎて、腹の筋肉がおかしくなりそう。

さ、仕上げに入るか。


「サボー、てめぇ!!!」


ダンは脇に立てかけたあった両手剣を掴むと、サボーへ斬りかかる。

さすがのサボーも実力者だ。

片手剣とはいえ、しっかり防御の態勢を取りダンの攻撃を防ぐ。


「いやいや、良くやったね、サボーくん」

「あ、ご主人様!!」


ダンから距離を取り、向き合ってるサボーに俺は問答無用でケツに蹴りをかます。


「お前がご主人様とか言うな、気持ち悪い。それにちゃんと殺さないように加減したんだろうな?」

「は、はい!致命傷にはしてません!」


俺とサボーとのやり取りを見て、ダンは驚く。


「な、何だ、お前は…!?確か、昔に見た事あるぞ…!」

「おお、さすがは次期ギルド長候補だ。ちゃんと人の顔を覚えてる。他の連中と比べると天と地程の差だ」

「すいません」


サボーは謝る。


「いや、バカな!?生きてるのか。…確か、アインとか言ったか」

「名前まで思い出すとはすごいね。…しかし生きてると言ったか?そりゃ生きてるよ、お前らをぶっ殺す為に俺は生き残ったんだから」

「どういう事だ、サボー!?あの時、お前らは殺したと言ったじゃねぇか!?」

「へい、リルハと話したんすけど、面倒だから殺したって言っておけばいいかなと」

「くそ!!お前らの手抜き仕事のせいでツケが周っちまったんじゃねぇか!」


どうやらこいつの中では俺の事を死んだっていう扱いになっていたらしい。

つか、俺あの後頑張ってギルドに言ったんだけど、そこで倒れてる女はダンに言ってなかったのか。


「う、うぅぅ・・・ダン…」

「イリス!!・・・ちっ、聞いていたのか」

「ダン・・・。お願い、助けて・・・」

「クソ!!全部失敗だ!クソクソクソ!!全て終わらしてやるよ!お前らも、イリスもまとめて殺してやるぁぁーーー!!」


ダンは激昂して両手剣を振り回す。


「はーい、ちゃんと言質取れたね。イリスさんも聞いていたよね?」


イリスは斬られた苦しさとダンの裏切りの両方に泣いている。

すぐにダンの前へ割って入ると、攻撃を防ぐ。


「なっ、クソ!!」

「残念だが、お前程度じゃ俺を倒すことは出来ない。それに狭い室内だ。そんな大きな獲物で立ち回りは出来ないだろう?」

「くっ」


俺の言ったとおり、ダンは室内では両手剣の性能をフルには出せない。

こっちは小回りの効く片手剣だ。

隙を突いて、腹へと剣の柄で一発入れる。


「ぐおぅっっ…」

「まだ殺しはしない。寝ておけ!!」


背後を取り、後頭部へ一発きついの入れる。

ダンの意識がなくなったのを確認すると、イリスを回復させ次の目的地へ移動する。




薄暗い部屋。

俺が事前に見つけていた、街の外れにある空き家の一つだ。

サボーは、ここでダンを見張っている。


「うっ、、、ここは?」

「目が覚めましたか、ダンさん?」

「サボー!!」

「起き掛けなのに、元気ですね」


ダンはサボーを見つけるなり、大声で叫ぶ。

拘束されながらも何とか逃げ道がないか、辺りを調べる。

だがすぐに難しいと分かると、サボーへ向き直り話しかけた。


「てめぇ、俺を裏切ったのか!?よりにもよって、あいつの側に着きやがって!!いくら積まれたんだ!?」

「裏切る?とんでもない、ご主人様はこの惨めで卑しい俺に自分の価値を教えてくれたんだ」

「はっ?何を言ってる?お前、ホントに頭がどうかしちまったのか??」

「いえ、至って普通ですよ。むしろご主人様のおかげで[精神異常耐性スキル]まで身につきましたから」

「ホントにどうしたんだよ、お前?おかしいぞ?騙されたアホを嵌めて殺してるのが愉快だって笑ってたじゃねぇか?」

「えぇ、そうでしたね。あなたのおかげで俺は何人も罪のない奴を殺しまくりました」

「あぁ、そうだろ?それがお前じゃねぇか?特にいきがってる奴とか、そう!あん時の新人の女、冒険者も良かったよな!?朝まで俺らで強姦してさ!」

「ええ、楽しかったです」

「だろ?なぁ、昔みたくまた暴れようぜ?」

「そうですね。今、ご主人様は隣街まで出ちゃってますし、逃げるなら今のうちかもしれません」

「マジか!?頼む、サボー!お前だけが仲間だ!一緒に逃げてやり直そうぜ!」

「もし、拘束を解いたら、まずどうします?」

「くっ、とりあえずは頭の悪い女をぶっ殺してからずらかってやる」

「イリスさんでしたか?」

「ああ、あいつを使えばギルド長にもなれたものを…。そこそこ面倒見てやったのに、俺の言葉を信用もしねぇ!!」


ダンは藁にもすがる思いだったのだろう。

確かに以前と比べるとサボーは様子がおかしくなっていたが、話が出来なくはなかった。

頼む、俺を助けてくれという気持ちなのだろう。

だが、俺がそう易々と奴の気持ちを叶えさせてやる訳がない。


部屋の外から全てを聞いていた俺は、扉を開けるとイリスを連れ中に入る。

ウィレームの街で名も売れていない俺が、信頼されている『風の手』の犯罪を証明するには確固たる証拠もしくは証人が必要だ。

イリスにはこいつらの全てを教えるから代わりにとある場所でそうだと言って欲しいと事前に伝えてある。


「なっ!?イリス!!それにお前まで!!」

「という事だ、イリスさん」

「うううっ、ダン…。貴方は全部嘘だったのね!!」


イリスは泣きじゃくりながら、ダンを睨みつける。


「待て待て待て!!違う、誤解だ!!頼む、助けてくれ、イリス!!」


イリスは涙を拭いながら、ダンの元へと近寄っていく。


「ああー、イリス。お前だけを俺を助けてくれるのか。ありがとう、イリス。愛してるぜ」

「愛してる?」

「あ、ああ、愛してる!お前だけだ!!」

「愛してるなら、これ位平気よね!!?」


イリスはダンの鼻っ面を思いっきり蹴り上げる。


「ぶばぁっっ!!何を!ちょ、やめて、やめてくれぇぇぇぇっっ!!」

「ふざけんじゃないわよ!!この最低男!!は?何?口止めに私を殺す!?やってみなさいよ!!ほら!ほら!」


やめろやめろと叫ぶダンを無視して、イリスはダンの顔面を蹴りつける。

しかし、女は怖いな。

イリスがここまでキレてるのには理由がある。

信じていた男が犯罪に手を染めていただけではなく、女として一番許せない行為。

つまりはこいつ、ダンの浮気である。

ミニゴーレムで『風の手』の様子を調べた際に一番ボロが出たのはダンであった。

クエストに行くと偽っては他所の女の所に入り浸り、挙句にはサボーたちの上がりをクエストの報奨金として、イリスに見せていた。


「ちょ!イリスさん、あんまりやり過ぎるとホントに死んじゃうから」


このままでは蹴り殺されてしまうかと思い、思わず俺が止める。


「くそ、この駄目男がっ!ぺっ!」


ダンは傍目に見ても、そこそこ顔が整ってる方だが今は見るも無残だ。

ツバまで吐きつけられるとは…。


ゴーレムに伸びてるダンを運ばせる。

これでお膳立ては十分だ。

旧『風の手』の確保と犯罪行為の把握。

そしてそれを裏付けてくれる証人も作れた。


タージュもゴーレムに連れられ、俺の所へとやってくる。


「さぁ、最後の仕上げだな…」


一旦、イリスと別れてからとある場所で待ち合わせをする。


「サボー、良くやった」

「はい!ありがとうございます!」

「お前はあいつら同様に最低の奴だ。だが、最後に己の過ちを理解した。もういいぞ、死ぬ事を許してやる」

「ほ、ホントですか!ご主人様、ありがとうございます!!」


サボーは腰の剣を取り出すと、迷わず自分の首筋目掛けて剣を振るった。


「ぐぅぅぅ。あ、ありがどうございまず…」

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