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17話 おじさんと魚を釣る3


「むっ」


 オルディンがどこか空を見上げる。

 釣られて俺も空を見るが、特に変わったところもない晴天だ。


「どうしました?」

「いや、何か強大な魔力を感じた気がしたが……」

「そうなんですか……あっ、遺跡が見えてきました」


 ここへ来た時に、偶然繋いでしまった扉。それはある遺跡の最奥に繋がっていた。

 それがどんな遺跡なのかオルディンにも分からないらしいのだが、その繋がった扉は――ある人形の腹に付いていた。

 石で出来たその人形を、オルディンはゴーレムと呼んでいた。


「……これは。何かがあったのか?」


 来た時と比べると――遺跡の内部の植物が倍増していた。

 壁に張り付いていた枯れたツルも青々しく花をつけ、枯れた草木もまるで生き返ったかのように鮮やかな緑である。

 樹海の中なのに遺跡周りだけは殺風景だったのが、見事に植物に包まれている。


「そうみたいですね」


 幸運にも通路まで植物は詰まってないようだ。

 若干生い茂る草をかき分けつつ、奥へと進んでいくと――。


「あそこに誰か居ませんか」


 指を指したその先に……茫然と立ち尽くす赤髪の少年が居た。

 背中には赤い翼が生えており、冒険者のような鎧を身に着けている。


「む? あれは……もしかして《《カルロス》》か?」

「あっ、これはオルディン殿下……」


 カルロス――そう呼ばれた少年はこちらに振り返ると、サッとその場に跪いた。


「ここで何をしていたのだ? いや、それよりも――」

「オレ……いや、私にも皆目見当もつかず……気付けば、このような場所に居て空を見上げていました」


 彼の足元には、茶色いヒナが2羽ピヨピヨと歩いていた。

 どうやら彼に懐いているようで、頭を身体へこすりつけたりしている。


「ふむ――ひとまず城へと戻るとするか」


 オルディンは鍵を取り出すと、俺の方へと振り返った。


「今日は相談に乗って貰ったばかりでなく、色々と付き合わせて済まなかったな」

「いえ。そういえば料理の方ですけど……大丈夫ですか?」


 そう尋ねると、オルディンはその額に汗を浮かべる。


「………………むう」


 どうやらアテは無いようだ。

 他に料理を教えてくれそうな人と言えば――。


「あっ。それでしたら、彼に頼んで見ましょうか」

「彼?」

「忙しいようなので、ちょっと聞いてみないと分からないけど……」


 そう言いながら、今度は俺の鍵を取り出した。


 もちろん行先は――。


  ■◇■◇■◇■◇■◇■◇■


 

「オダナカさんと……この前のオッサンか! どうしたんだ?」

「お忙しい所、申し訳ありません……実は」


 回転寿司店は、今日はメンテナンスと掃除でお休みのようだった。

 お頭ことジョニーに、ここまでの経緯(いきさつ)をかいつまんで説明する。


「ふむふむ。つまりこの川魚を使ってオッサンが料理をする訳だな」


 クーラーボックスの中と、圧縮魔法(?)という方法で小さくなっているゴッドクイーンマウンテンを見せる。


「川魚は専門じゃねーけど、なかなか立派じゃねーか!」

「それと牛のモツ煮と、折角なのでオニギリ――で、その中身なんですけど」


 やってみたい料理と簡単な作り方を教えると――ジョニーは目を輝かせた。


「――へぇ。そんな料理があるんだな!」

「私も詳しい調理方法は知らないので……ちょっと戻って調べて来ます」

「よっしゃ。じゃあまずは材料からだな」

「うむ。では我は牛を用意して来よう。カルロス、一旦戻るぞ」

「はっ」

 

 腕の中でヒナを抱えたカルロスは元気よく返事を返し、オルディンの後について店を出て行った。

 俺も急ぎ、回転寿司店の扉を貸して貰い、自室へと戻る。

 各々の準備を手早く済ませ、再び現地に集合した。


 そして、


「オッサン、まずはそれ奇麗に洗う! 具材は食べやすい大きさに切る!」

「お、おう」

「さすがにこれだけの米を洗うとなると大変だ……」


 まだまだ水も冷たい春先――大人しく米研ぎ用のアイデアグッズを使いながら、2人の様子を観察する。

 慣れない包丁でたまにまな板ごと切ったりしてはジョニーに怒られてはいるが、本人は特に気にしていないようだ。


「ハンスと、そこのカルロスだっけ? 野菜の皮むきはどうだ」

「順調です!」


 カルロス君は慣れた手つきでナイフを扱っている。

 彼の足元では、木製の鳥カゴの中でヒナが仲良く寄り添っている。

 

「なんでオレまで……」


 ハンスは身体が大きいのでナイフが小さく扱い難いように思えるが、そこは慣れているのだろう。

 器用に野菜の皮を剥いていく。

 

「なんか言ったかハンス」

「いいえ! 順調であります!」


 厨房の後ろでは、カルロスとハンスが野菜の皮むきなどを手伝ってくれている。


「オッサン、じっくり火を通すから弱火にセットするんだ」

「この赤の魔石の加減が難しいな……そうだ、強火でやれば調理時間の短縮になるのでは」

「ならねーよ!」


 こうしてオルディンは右往左往しながらも、調理は進んでいった。

 俺も米を全部洗い終わり、魔力石バッテリーと繋いだ炊飯器にセット完了。


「よーし。それじゃあ、運ぶとするか!」


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