17話 おじさんと魚を釣る2.5 カルロスの戦い
「これが禁忌のゴーレム! ついに、ついに我が目の前に!」
遺跡の最奥に、それは鎮座していた。
もう何百年も前に建造されたのであろうゴーレムは、全身にコケやシダ植物が覆っていて、森と一体化しているかのようだった。
しかしどれだけの月日が経とうとも、その奥底に眠るプレッシャーのようなものを、カルロス達は感じていた。
これを手中に収めれば、魔王さえも敵ではない――それが現実のものとなろうとしていた。
「おぉ、ついにカルロス様が」
「魔王となられるのですね……」
「お前達、苦労を掛けたな……では、いくぞ!」
「「はッ!」」
そう言ってゴーレムの腹に付いてある扉に手を掛けようとすると――。
バサッ――。
「ん?」
「カルロス様、頭上です!」
1羽の美しい鳥が、ゴーレムの頭に降り立った。
その燃えるように赤と橙の翼を大きく広げ、目の前に居る3人を見据える。
「ホホホ――」
「お前は、贋作の魔鳥!」
「魔王軍の四天王ね……ここで何をしているのかしら」
「――お前如きに答える必要は無い!」
「あら……でもね、余には関係があるの」
フェニックスはその鋭い眼光で、カルロスを睨み付ける。
魔王四天王であるカルロスが、その視線を前に思わずたじろいだ。
「それ起動して何をするかは知らないけれど……そんな事をすれば、まず森が焼けるでしょうね」
「それがどうした! 我が覇道の前に、森の1つや2つ些末な事よ!」
「――娘が巻き込まれちゃうのよ」
思っても見なかった言葉に、カルロスは間抜けな声が出てしまう。
「はぁ?」
「まぁ不死身かどうか確かめるのにそれも一興かと思ったんだけど……見過ごすのも目覚めが悪いわ」
不死鳥はどこかの方角を見ながら、そう呟く。
目の前のカルロス達なんて眼中にないといった態度に、カルロスもイライラが募る。
「なにをグチグチと……貴様、度々我が国に現れては、混乱をまき散らす害鳥。過去にお前の血を飲んだ者は、その場で悉く死んだという記録もある!」
「そのようね。相性が悪いかったのかしら」
まるで他人事のように言い切る不死鳥に、カルロスの怒りはすぐに頂点へと達した。
「貴様のような鳥風情が! ここで討伐してくれるわ!」
「カルロス様!」
「我々も戦いますぞ」
カルロスが剣を抜き、ガルーダ兄弟も槍を構える。
「――下賤の魔族風情が」
それまでの余裕のある口ぶりからして一転、フェニックスは燃えるような姿でありながら、氷よりも冷たい声を発していた。
「余の力の一旦、見よ。感じよ。そして――」
翼を羽ばたかせる度に、赤い魔力の放流が部屋を覆い尽くす。
「滅びヨ!!」
「うおおおおお!!!」
「カルロス様ぁぁぁぁ!!」
両者の魔力による炎が、遺跡の中を蹂躙する。
カルロスの炎は、四天王だけあって強大なモノであった……。
しかし、フェニックスのそれは、カルロスを大きく凌駕している。
「この、害鳥がぁぁぁあああああッ!!」
「ホホホ――」
そして天にも昇るほどの火炎による渦が生まれ――音もなく、消し飛んだ。




