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2話 出会い

 わたしと来和(こより)の出会いは高校に入学して直ぐだった。

 近所の私立高校。公立受験に失敗して、滑り止めで楽に入った、一応の進学コース。私立のお陰か、放課後に特別講習を任意で受けることができた。

 特別進学コースだった来和は強制参加だったらしい。

 放課後講習が始まって直ぐに、軽い実力テストみたいなものがあった。次回の講習時に結果が張り出され、得意だった国語の結果だけ、わたしが2位だった。思ったより高い順位に、当時、喜びよりも困惑が優ったのを今でも覚えている。困惑しながら結果を眺めていると、国語で1位、他の教科でも1位か2位を取っていた名前に目が留まった。

 

 「御手洗 来和」


 「御手洗」という苗字を身の周りで初めて見かけたし、名前の「来和」に関しては何て読むのか全く分からなかった。小学校の低学年で習ったような漢字なのに、二つ並ぶと何て読むのか分からない、それがなんだかとても楽しかった。


 放課後の講習の時間、特別進学コースの子たちから、男女の混ざった出席番号順で名前が呼ばれていく。


 「ミタライ さん」


 ミタライさんは、特別進学コースの子たちの中で最後に呼ばれた。背中の真ん中ぐらいまである、毛先まで真っ黒で真っ直ぐで、艶やかな髪。たまに覗く、綺麗に切り揃えられた前髪と、少し気の強そうな目。

 ()()な人だなと思った。

 どこか人離れしているようで、刀の切っ先の様な顔、とは、こういう顔のことを言うのだなぁ、と漠然と思っていた。

 

 講習が終わってから、なんとなく、先生に質問しに行くと、ミタライさんがわたしの後ろに並んで来た。ミタライさんも同じ様なところを質問しに来ていたらしい。途中からは、わたしとミタライさんで先生に質問していた。

 一通り質問を終えて、先生が帰った後、教室には、わたしとミタライさんの二人だけになった。

 廊下から差し込んだ西日に、彼女の髪が輝いている。

 ぼうっと、ミタライさんを見つめていたら、不意に、ミタライさんがわたしを振り返った。

 「どうしたの?わたしの髪に白髪でも混じってた?」

「...白髪、生えるの?」

艶々した髪の持ち主から、白髪という単語を聞いて、一瞬、面食らってしまった。

「一回だけ生えたことあるよ。友達にその場で抜けれて、すごく痛かった」

笑いながらそう言った彼女の顔を見ていると、自分と同じ、15、6の女の子なんだと実感した。

 そんなことを考えていたら、ふと、気になっていたことを思い出した。

「ミタライさんの、下の名前ってなんて読むの?」

「あぁ、『コヨリ』って読むんだよ。『御手洗 来和(ミタライ コヨリ)』。苗字も名前も変わってるでしょ?漢字は簡単なのにね」

「確かに、音は柔らかいのに、漢字だとゴツいね」

言ってから、失敗したと思った。怒っていないか、恐る恐る御手洗さんの顔を伺うと、彼女はキョトンとしてわたしに視線を落としていた。それから、弾けた様に笑い始めた。

 「笹木さんは、ユルフワ系かと思ってたけど、結構ズバッと言うんだね」

「ごめん、一応気を付けてはいるんだけど、中々治らなくて」

「いや、面白いなって、笹木...名前なんだっけ?」

「みやびだよ、平仮名でみやび」

「名前と見た目の第一印象は合ってるね」

「...それ、どうゆう意味?」



 それから、放課後の講習を終えると二人で先生に質問して、一緒に駅まで帰る様になった。

 日々たわいもない話をしていくうちに、互いに性別に拘らないことを知った。それは同時に、互いがダイナミックスであることを打ち明けるきっかけになった。

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