3話 きっかけ
ゴールデンウィークが明け、日差しがジリジリと迫ってくるようになった。
ミタライさんとは放課後の講習の後、二人で先生に質問して、それから、学校の最寄りから、少し離れた駅の近くのファミレスに寄って帰るようになった。
最初は駅で話しているだけだったのに、離れ難くて、帰るのが遅くなるようになっていった。
ミタライさんの負担になっていないか気になって、両親に相談すると、「ファミレスで晩御飯一緒に食べてきなさい」と、二人分の晩御飯代をくれた。
ミタライさんに両親と相談したことを話すと、すごく恐縮してしまった。
逆に気を使わせてしまったかと思ったが、後日、ミタライさんも御両親とお話ししたらしく、ミタライさんの分は御両親が出してくれることになった。
窓際の角のいつもの席に、いつもの通り、わたしとミタライさんは向かい合わせで座る。
ミタライさんは、しっかり卵でくるんである普通のオムライス、わたしはカルボナーラを注文した。
ドリンクバーは頼まない。
わたしたちは食事中はそれほど喋らなかった。
それでも、大抵はミタライさんの方が先に食べ終わって、それから、わたしが食べ終えるのを眺めながら少しだけ話をしたり、教科書をテーブルの上に広げはじめたりする。
奇麗なミタライさんにずっと見つめられながらの食事は、初めはどきどきしていたけれど、それを本人に指摘する気にもなれなくて、耐えていたら、段々と、彼女がわたしを見ているということに、なんとも言えない気持ちが芽生えて、そんな自分に気味の悪さを感じた。
「ごちそうさま」
それを聞いたミタライさんは、にっこり笑って、
「今日は数学、やろっか」
と言った。
食べ終えた後は、少しの間は黙々とそれぞれその日の講習の復習をしていた。
集中が先に切れて、口を動かし始めるのはいつもわたしからだった。
その日も、30分程度で集中が途切れて、ミタライさんに話しかた。
「ねぇ、今日は、河内くん大胆だったね。ミタライさんはどうするの?」
わたしはいつものように話しかけたつもりだった。勉強中のミタライさんは、集中力がとても高くて曖昧な返事しかしない。
でも、その日は違っていた。
「...大丈夫?」
ミタライさんは手を止めて、ノートに視線を落としたまま動かなかった。
わたしは動悸を感じながら、彼女を眺めていた。
暫くして、ミタライさんが顔を上げた。
髪の影で気が付かなかったけれど、ミタライさんの顔が蒼くなっていて、少しの間、息をするのを忘れた。
「笹木さん、これからカラオケ行かない?」
動悸が胸の高鳴りに変わっていく。
わたしは黙って一つ頷いた。




