ヨーロッパの旅
ホストファミリーとお別れし、一同は再びロンドンへ。
にしやんはライブの疲れがまだ残っているし、由香里はファミリーとの別れの辛さを引きずり、バスの中は静まり返っていた。
ちなみにマージナルマンのメンバーは、ロンドンを充分に満喫して一足先に帰国した。
今日はロンドンで過ごし、明日の朝にイタリアのローマに向かう。ホテルに帰ったら、荷物の整理やら両替やら細かいことで忙しくなるだろう。
夕方までの時間は、美術館を回る。イタリアでもフランスでも有名な美術館はあり、スケジュールにも入っているが、ロンドンにもまだまだ見るべき美術館があるので駆け足で回る。
ナショナルギャラリー。ここは大英博物館と共に二大ミュージアムと言われている。レンブラント、ラファエロ、ゴッホ、フェルメールなど、教科書でも見たことのある名画が展示されている。教科書で見るのと、実際に見るのでは全く違う。精巧な技術に圧倒されてばかりで、あっという間に時間が過ぎていった。駆け足で回るのはもったいなかった。
生徒なりにも良い作品であることは理解しており、ゴッホのひまわりのポストカードを購入したり、気に入った作品の写真を撮ったりしていた。
また、キリストに関連した作品が多数あり、キリストの誕生から処刑、そして復活するまでの流れを描いた作品がたくさん展示されていた。
「見てこれ。マリア様から産まれたでしょ? そして、人々に布教してるでしょ? 処刑されたでしょ? で、復活してる」
「マジウケるんだけど。4コマ漫画かっていう」
「漫画にしては精巧に作られてるよね」
「これ、復活した時の絵。周りの人めっちゃ驚いてるじゃん。腰抜かすほど」
「そりゃ、死んだと思った人が復活したらビビるでしょ」
生誕から復活までの流れが1つの絵になっている作品を見つけたbelieverのメンバーが、笑い転げている。それほどコミカルな絵だった。
「『復活!』っていう感じだね」
大爆笑していて何事かと思ったにしやんが来て、絵を見て納得していた。
由香里も少しは寂しさが紛れただろうか。
〜〜〜
そしてロンドンを立つ直前のヒースロー空港。
「見て。記念に地図買ってきた」
本屋で地図を購入して、得意げに見せてきた律子。
「へー、どこの地図買ってきたんだい?」
ちょっとニヤニヤしてわざとらしく聞いた由香里。律子がまた何かやらかしたことに気づいたようだ。
「イギリスの地図だよー。ほら、Britainって書いてあるでしょ?」
「よく見てみなよ。Britainじゃないみたいだよ」
「ブリテン……ブリ……何これ」
「Berlinじゃん! ウケるんだけどりっちゃん! 今回ベルリン行きませんけど!」
恵美子が気づいて寄ってきた。そして由香里の代わりに間違いを指摘した。
またもや大騒ぎしているbelieverのメンバーたち。
「まあ、大人になって自分で海外に行けるようになったら活用しなよ」
笑いを堪えながら智美が言う。けど、我慢出来ずにみんなで大爆笑した。




