表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Marginal Man  作者: 志藤天音
14/105

track_4 live together

 サトルが作業部屋で曲を作っている。


『live together』

声が聞けるだけで 落ち着くの

それだけでいい そばにいて


いつも一緒だよ 心からの笑顔に

優しい気持ち感じられる ずっとそのままで


手を伸ばしても届かない 憧れだった

これからは一緒にこの空飛んでいける


喧嘩しても分かり合える

そんな勇気を教えてくれる

いつまでもずっと抱きしめて


この先の長い道 ずっとついて行くよ

時々は休んで 楽しみながら行こう

あなたと一緒で良かった



 出来たんじゃないかな。シゲさんがめちゃくちゃ良い曲を書いてくれたから刺激されて、アンサーソングっていうか、女性目線の歌詞にしてみた。

 シゲさんって俺が思ってるまんまを歌にしてくれるからビックリしてる。全部を話したわけじゃないんだけど、何でだろう。知らないところでリサーチされたのかな。それとも俺の性格を熟知してくれてるからか。

 俺はにしやんと同い年だから、特別に仲が良いんだけど、シゲさんはそんな俺たちのことをずっと温かく見守ってくれたアニキ的な存在だ。っていうか、周りを本当によく見てる。シゲさんには嘘なんかつけないよ。

 それじゃあ、今出来た曲をメンバーに送っておくか。彼女のこともちゃんと紹介しないとな。今度いつ集合するか、打ち合わせもしよう。


 あー、そう言えば。女性目線で思い出した。軽音部員から歌詞を預かってたんだった。まだちゃんと見てなかった。曲をつけてやらなきゃ。believerとBLACK Cherryの分。対象的なバンドなんだけど、これからもっと上手くなりそう。

 believerなんて自分たちで曲作れそうなのに、何で今回は持って来たんだろう。うーん……まあ、なんとなくわかるけどな……何故なら今回は尾形が一人で持ってきたから。いつもは部活の時にメンバー全員でお願いしに来るもんな。曲が出来た時もみんなで確認してほしいと言いに来ていた。だからきっと、今回は尾形が個人的に書いた詩なんだろう。


『believer尾形』

いつも見てたから それだけでいいと

彼女の存在気にもせず ただ会いたかった


ずっと胸に秘めたままだったの

決して口には出せなかった


少しだけ大人の あなたがとても遠くて

いつまでも背中に言うの 愛してるって



 ……これは、切な過ぎる。俺が書いた詩と比べると対象的過ぎて……一番だけの歌詞だけど、これに曲がついたらまともに歌えるのかな。もしこれが実体験だったら、気持ちを込めて歌うだろうし、涙無しには歌えないぞ。曲だけつけてあげて、続きの歌詞とかアレンジは自分たちでやってもらうことにしよう。これはきっとバンドの代表作になるだろうな。

 

 自分がもうすぐ結婚する立場になってから、初めて恋が成就する曲が書けるようになった。今までなら、告白して振られたり、喧嘩して別れたりっていう曲が多かった。そもそも恋愛ものよりも、「人生とは」がテーマの方が書きやすかったりするんだけどね。

 たかだか30歳で何がわかるんだって感じだけど、「人間とは」「生きるとは」って哲学的な話が好きなんだろうな。世界史の授業が道徳みたいになっちゃう時もあるし。「愛」を語り合うこともある。だから、にしやんに「ラブ&ピース先生」って呼ばれるんだよ。

 ちょっと話が逸れちゃったな……。

 そう。だから片想いがテーマとなると、生徒たちの方が上手く書けるんだろうな。青春って感じでいいな、うらやましい。

 たまたまBLACK Cherryから預かってたのも、片想いの詩だった。こっちの方は告白しようと前向きに考えてる感じだな。うん、イメージが浮かんできた。

 それにしても……うちは女子校なのに、生徒たちはこんなに恋心を抱くんだな。そんなに恋愛って出来るものなのか。さすが、女子高生はパワフルだ。


 ……どうやらサトルは、律子が書いた詩がサトルに向けてのものだということには気が付かなかったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ