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Marginal Man  作者: 志藤天音
13/105

track_3 to be with you

 「ちょっと待って……いっぺんに情報が入ってきて混乱してる……ちょっと休憩させて……」「これは重大事件だな。どうする? 何だ? ごめん、ちょっと俺も混乱してきた」年長組のNAOとシゲの元に、複数の予想外の報告が入ってきた。ところが二人は思った以上に混乱していたので、気持ちを落ち着かせるためにもう一度ゆっくり報告した。

 「マツ先生、シゲさん。俺とにしやんには、それぞれ結婚を前提にお付き合いしている彼女がいます。二人とも卒業生で同級生です。だけどずいぶん前の卒業生で26歳なんです。俺が新任で入った年に卒業してます。教え子じゃないです」サトルが頑張って説明する。

 最初、二人が結婚すると聞いて、サトルとユウジが夫婦になるのかと勘違いされていた。

 「お、おー、そうか。ようやく理解した。おめでとう。二人仲良いからって、結婚相手も同じ卒業生だし、結婚するタイミングも一緒なのか? 合同結婚式? まさか、子ども産むタイミングも合わせてるとかじゃないよな」普段から仲が良い二人だから、同性婚をして夫婦になるということを、なんとか頑張って認めようとしていたシゲだが、それぞれ彼女と結婚すると聞いて、気が抜けた。気を紛らすために饒舌になっている。

 「タイミングはそれぞれで決めますよ。親も子どもも同級生だったら面白いとは思いますけどね」ユウジは答えた。

 「ところで、接点の無い卒業生とどうやって出会ったんだ?」NAOが気になって聞いた。

 「毎年学園祭の手伝いをしてくれる卒業生たちがいるじゃないですか。舞台の設営とか巨大パネルとかの。で、ある時卒業生たちが、後夜祭で俺とにしやんが歌うところまで残ってくれて、片付けまでしてくれたんで、他の先生たちと食事に連れて行ったんです。お疲れ様会みたいな。そこに参加していたのが彼女たちだったんです。出会いはそんな感じですね」

 この学校の卒業生たちはみんな、この学校が好きで、何かしらのイベントや気が向いた時に、いつでも遊びに来る。先生たちも温かく迎えてくれるので、生徒同士だけでなく、先生とも長い付き合いをしている卒業生もいる。

 「10年前に入学した生徒だったら、俺とかシゲさんなら知ってるんじゃないか? 名前は?」NAOはシゲと顔を見合わせた。

 「それがうまいこと被らなかったらしいです。だから名前聞いてもわからないかも。接点無かったって言ってました」

 もう確認済みだった。「なんだ」と年長組の二人は残念がった。

 「まあ、とにかくおめでとう。これで一気に既婚者が増えたな。後はナガちゃんか、焦らなくていいからな」シゲはHIROを気にする。

 「俺はJKには興味ないですからね。あ……まあ……俺は結婚を考えたこと無いっすから」何かを思い出したように答えた。

 「ナガちゃん、俺がナガちゃんのために作った『モンブランとチーズケーキ』、にしやんと一緒に歌ってあげようか?」ニヤリと笑ってサトルがHIROをからかう。

 「やめろ。それに俺はマエちゃんとにしやんの先輩だぞ。一つ上の。少しは敬え」

 「いつも敬ってますよ、少しだけ」

 HIROとユウジが戯れ合った。


『to be with you』

気が付いたら時は流れて 大人になってた

だけど心までは変わっていないのさ

出会いと別れを繰り返し

人はどこに向かっているのだろう


辛いことも良いことも

偶然も変なことも

全部君に会うためだったんだよ


喧嘩して キスもして

ずっと一緒に暮らしていくんだよ

ここが二人の居場所だから


大切なことは君が教えてくれた

少しは大人になれたかな

寂しくはない 二人でいれば


喧嘩して キスもして

繰り返しながら生きていくんだよ

ここが二人の居場所だから



 シゲが二人の結婚の祝福ソングを作った。

 「なんだ、今日は彼女連れてきてくれるのかと思ったのに。会えなくて残念だな」

 「今年の学園祭には来るのか? その時は紹介してくれよ。俺も今日会えるのかと思ってたのに」シゲに続き、NAOも彼女に会えなくてガッカリしていた。

 「すみません。今日はバンドの仕事だと思って。ご挨拶は後日させていただきます」サトルが平謝りしていた。

 「今年もにしやんと二人で歌うのか? 後夜祭で」HIROが気になって質問した。

 「今年も後夜祭だけちょっと出させてもらおうと思ってます。自分でも結婚記念みたいな感じで曲を作って披露しようとしてるんだけど、間に合わなかったら『モンブランとチーズケーキ』を歌わせてもらいますよ」

 「いや、モンブランは歌わなくていいからさ。結婚することJKに報告するのか? だいぶショックだと思うぞ。二人が結婚するって聞いたら」

 「まあ、報告はしますよ。俺らはアイドルじゃないんだから。堂々と言ったっていいでしょ」

 「そうだよな、先生の人生にJKが出てきたらマズイもんな。わかった。じゃあマエちゃん、作曲頑張れ」

 HIROはこれ以上、サトルとユウジに余計なこと言われないように、締めくくった。

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