軽音楽部
「だからさー、JK? だんだんピッチが早くなってるんだよー、わかるー?」
一年生の軽音部員は何故かA組の生徒とE組の生徒しかいない。それぞれのクラスでバンドを組んでいたり、ミックスで組んでいたり。でも、ちゃんとバンドとして真剣に活動していて、人前で披露出来るようなバンドは、A組の生徒で結成した「believer」とE組の生徒で結成した「BLACK Cherry」の二組だけだった。
この日は「BLACK Cherry」のメンバーが、自分たちが演奏している動画を放課後の教室で確認していた。メンバーたちはいつも、顧問の前田先生ではなく、何故か担任の長澤先生に動画を見てもらっている。そして長澤先生は必ず、的確にアドバイスしてくれるのだ。
「恥ずかしくない? 自分で見ててさー。JKは何に焦ってんだよ。誰も見てないんだから慌てないで、よく周りの音聞いてやってみなよ」
「ホントだねー、マジ恥ずかしい。みんな音楽に合わせて揺れながら弾いてるのに、だんだん早くなってる」「よかったー、発表会じゃなくて」
「でも何で先生いつもこんなに刺さること言ってくれるの? バンド経験者?」「っぽいよねー、服装とか喋り方とか」「ロックな感じ?」
「俺? 俺は昔からただロックが好きだっただけだよ。でもさ、サッカーとかギターとか、俺たちの頃は男だったら通る道だったんだよ。今はJKもその道を通ってるのが面白いよな。うちのクラスには熱狂的なJリーグのサポーターがいるし、ワールドカップも盛り上がったよな。そして、目の前のJKたちはバンドやってるし……」
「じゃあJK、また動画撮ったら見せてくれよ。バンドの大会に出たりするのか? その時はオリジナル曲も用意しといた方がいいぞ」
「こんな状態じゃまだ大会なんか出られないよ。出られそうならナガちゃんが合図出してね」「じゃあ、練習してこよう!」「オリジナル曲はマエちゃんに相談しよう」




