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第三十一部 一章 予定との差異

 View ニスタ


 「いやあ、目覚ましい活躍だったようだね。見てないけど面白い結果になった事に変わりない。それを確認できただけ、成果はあったから良しとしよう」


 面白そうにヴェルスター学園理事長のニスタは報告書を見てニコニコしながら、独り言を呟く。


 (しかし、まさか武器の持ち込みをしているのは誤算だったな。武器を封じるだけ封じたら面白…硬派な立ち回りとかを期待していたけど、今回は幸運が味方しちゃったのかな……ま、この埋め合わせはまた後でさせてもらおっと、さーて、そろそろ影武者も呼び戻さないと面倒だなぁ…)


 ニスタは影武者として自分と瓜二つの分身を生み出す事が出来る。彼女はとても異質な魔法を複数所持してその中の一つに「捕食」という魔法がある。


 それは相手を取り込み、身体の一部のように操る事が出来る。しかし、この魔法の本来の能力は取り込んだ対称と使用者の肉体を合成するというものだ。


 それを利用して彼女は自身の若さを保ちつつ成長のピーク時を維持したまま肉体の強靭さを常に上げ続ける。かつてはその能力で魔物の跋扈する大陸で一匹残らず「捕食」した事から北の英雄と呼ばれた。


 しかし、文献ではその北の英雄は戦死したものだと思われている。彼女が捕食した魔物は全て跡形も残らず、まるで消滅したように思われた。援軍として送られた舞台はまるで最初から魔物など存在していないようだと語っており、神隠しのように英雄と魔物は消えた、その後の捜索でも見つからずに戦死したという扱いになっている。


 その実態は取り込んだ魔物の力と寿命を取り込み、失った若さを取り戻し、何食わぬ顔で人間社会で力と知識を買ってもらえるように短い年月でシャリア王国のヴェルスター学園の理事長に上り詰めた。


 最近はその力を持て余して、何かと理由をつけては明らかに度を飛び越えた問題行動を起こす。そのことでシャリア王国のヴェルスター学園内では学園で一番関わってはいけない人物として認識されている。一度関わってしまえば興味がなくなるまで、遊び道具として認識されてしまう。


 だたし、ヴェルスター学園全体で言えば優秀さで言えばトップクラスでシャリア王国のヴェルスター学園の卒業生は多大な功績や成果をあげて、それらの理由を聞くと学園の行事をしたとだけ話して、他のヴェルスター学園の卒業生と比べて遥かに秀でた才能を持つことが出来ると有名となっているが、それらの理由としてはニスタが行った学園を巻き込んだ迷惑行為でそれが彼らの成長へと繋がってしまっただけの事。その迷惑行為が何故か許容されて生徒の急成長として残されているため、文句が言いづらい。


 「さてと…明日から……ね。また、楽しい事が置きそうだなー」


 ニスタは引き出しの中のウクレレを一音鳴らして口角を吊り上げる。



 View change 美奈


 ミノタウロスゾンビを討伐した翌日、俺達4人は昨日の食事のおかげかはたまた大浴場でリフレッシュ出来たのか、あの後風呂上りにレイラのハーブティーを飲んだ後、ぐっすりと眠る事が出来た。


 登校しているときにいつもと違う視線を感じて辺りを見渡すと、こちらを見ている人がいつもよりも多く感じた。その視線はこちらを心配しているようなもので、どうやら噂程度ではあるが俺たちが強力な魔物と戦ったというのが広がりつつあるようだ。


 教室に入ると先についていた人たちが驚愕の声を小さく上げて中でも同じ班に入れられたクラスメイトからいきなり質問攻めにされて、その対応に追われたが、いち早くレイラがその視線に察知して教室から飛び出してどこかへ走り去ってしまった。


 (あぁ…興味が勝ってしまったんだね。気持ちは分からなくもないけれど、もう少し加減と言うか人の気持ちも考えてほしいな)


 自分達も起きたことを正直に話すと噂がすぐに広がって面倒なこと(主にレイラ)になってしまう為、所々をぼかして伝えるが、それでもまだまだ聞き足りないのか、次から次へと質問が飛び交う。


 それは予鈴がなって先生たちが教室に入って止めに入るまで止むことは無かった。その時にはレイラが戻って来て後ろの端っこの席についていた。


 「はい、こちらに注目ー、今日は突然だが転入生が2人このクラスに入る事になった。入って」


 そう言って入ってきた2人を見て知っていたとはいえ、どうしても目が釘付けになってしまう。眠そうでありながら凛とした足取りで、サラリとした髪が軽くなびくとふわりと空気が突き抜ける。


 教壇の前に2人の生徒が自分達と同じ制服を着て目の前に立ち、クラスの中を見渡して軽くお辞儀をして話し出す。


 「は、はじめまして。啓凰(けいおう)(すばる)といいます……!」


 まだ、1人目の自己紹介の途中だと言うのにクラスの中はざわめきが起きていた。


 「唐突だね…」


 「でも、この学校に転入って珍しくないか?しかもこのクラスになんて…」


 「まだ、少ししか経ってないのに転入というのも少し不自然だけど…」


 一度、口を開けばすぐには静けさを取り戻せずに次から次へと伝染するように言葉が続く。


 自分が止めに入ろうとした時にバンッ!と銃声のような音が聞こえてその音に驚いて教室の中が静まり返る。音の方向へ目を向けたらレイラが拳銃を上に向けていた。銃口からは煙が立ち込めているが、天井には弾痕が残っていない。恐らく空砲なのだろう。


 視線を遮断するようにギュッと目をつぶってプルプルと震えながら、そのまま何かを伝えようと口を開くがそれはほとんど声になっておらず、口パクをしてこっちが察するしかないという状況だ。


 「えっと……「続けて」ですか?」


 昴がそう尋ねるとコクコクと頷いてハンカチで顔を隠すがその隙間からは赤くなりつつあった。


 「レイラの言う通りだな言えてないがそれは置いといて、もっと自己紹介しな」


 意思をパスされた先生がそう言って自己紹介の続きをする。しかし、その自己紹介のセリフを記憶に留める事は出来なかった。


 (あぁ………………さいっっっっっっっこうにいい……………………)


 綺麗な半ヴィジュアルな顔に幼さが残りつつも透き通るハスキーヴォイス、同じ制服なのに着方次第でここまで美を滲みださせるのは才能だ。間違いない。俺のセンサーがビンビンに反応している。彼は本物だ。それだけじゃなく、このままでいるだけで完全無欠のかっこかわいさが備わる事になると俺の第六感以降の全ての感覚がビンビンに反応している。


 (って危ない危ない、理事長からのお願いがあるからここでブレーキ踏み込まないと…)


 「け、啓凰(けいおう)(あざみ)です。お兄ちゃんのす、昴共々よろしくお願いします!」


 深々と90度の見事なお辞儀をした薊は緊張からかカチカチに動きがロボットみたいで昴の後をついていく。まるでラジコンか飼い主の後をついていく小型犬みたいだ。


 彼らが名乗った名前はいわゆるデフォルトネームだ。最近のゲームではキャラメイクで髪型や体型などを自分で決められるが、このゲームは最初からキャラのデザインが決められている。自分で設定できるのは名前だけ、しかしゲーマーの中には「自分とはあまりにも似てないから、自分の名前を使いたくない」という人が少なからずいる。


 とはいえ、自分も同じで実物とかけ離れていると自分を美化している気分になって陰で自意識過剰に思われると不安になってからゲームを買ったりしたらパソコンか取扱説明書を読んでその名前を付けたりする。


 (だけど、主人公は一人っ子だったはず、今までのシリーズでも男と女どちらかを選んだらもう一方はもう出なかったはず、それなのにこの世界では2人とも出てしかも兄妹という設定。やっぱりこの世界は何かが歪んでいる。とはいえ、行動に何か不自然があるわけじゃないか。もしかしたら、同じ転生者じゃないかって思ったけど、その線は今の所見えないか……)


 ピンポイントな考えであれば彼らが役者か高度な技術を持っていれば怪しまれないようにこちらに目を向けることは出来るだろう。とはいえ転生者がそんなに多いとも思えないし、俺の他に転生者がいない可能性がある以上、考えても無駄なのかもしれない。


 (どちらにせよこっちから接触して関係を構築しておいて損はないかな)


 「まあ、席はたくさんあるからその辺に適当に座ってくれ。ってこれじゃなんかご近所さんを招いたような言い方だな。いや、合っているか?」


 「先生、2人は教科書を持っていますか?ないなら貸しますが」


 「大丈夫だ。2人とも既に教科書は持っている。それじゃ、早速勉強を始めるぞ。今日の1時間目は算数だな。それじゃ、教科書の6ページ目を開いてノートも使うからそれも開いて置いたら楽かもね」


 今日の授業が始まるが正直言ってとてもつまらない。小学生がする授業と言うのは分かるがあまりにも簡単すぎて、練習問題を移してはすぐに暗算で解けるものばかり、4時間目と5時間目の魔法学や魔物学の授業が待ち遠しく感じる。


 スラスラとペンをタブレット走らせている単純な作業、前の席では額に指を置いたり手を振って指の疲れを振り払うような動作をしている生徒が何人かいる。


 練習問題を解いたらその答えを先生の方にデータを送信する。こういう答え合わせはAIにさせておけよとは思うが、そこは触れないでおこう。まだまだアナログの時代は終わっていない。病院とか市役所とかは直筆が一般的だから。


 一足早く問題を解いたら、この待ち時間をどのようにして過ごすのか、というのはどの世界でも同じようだ。個人的には仮眠を取ったりするが、先生はそれが熟睡に感じて「寝るな」って注意するけれど、それじゃ、何をしろってツッコミたくなる。


 まぁ、ここが魔法のある世界でよかった。自分の中にある魔力に集中してその操作の精密性を高める訓練をする。少し疲れるが時間を有効活用するにはこれがいい。


 送信して1分程経ったら回答が戻ってくる。もちろん全問正解だ。流石にこの基礎知識は間違える事は無い。


 (でも、前世の時のような筆跡は少し、曖昧な感じがするんだよな)


 1の数字でも斜め下から中央の方にちょいと伸ばして下に持っていくか、そのまま中央から下に持っていくか数字の表現とか正しい、間違いがあるかは別として、筆跡は前世とは違っている。


 この身体が以前からそのような書き方だったから身体が覚えているのか、文字に丸みがあるような書き方をしてしまう。活字を描こうとしてもカーブが若干の緩やかになって擬音を付けるとするなら「シャッ」ではなく「スッ」となってしまう。


 そんな、事を考えても時間はすぐには経たないもので時間を確認すると答えが帰ってきてから3分しか経ってない。別のページを見たりするが正直なところ、初歩的な事で頭の体操的な問題もすぐに解けた。


 (考えてみれば、俺は学力は平均以上だと思う。自分で言うのもなんだけど、受けようと思えばいい大学にでも行けたが、実家を継いだらそれで安定した収入がもらえると思って医学一筋で生きてきた。でも、ここでは何をすればいいのかわからない。魔法で稼げるのは何なのか、考えてみるがあまり実用性がある職としてはそれほどないと思う)


 前世では大道芸や手品のようなものでも大したものであればそれでお金がもらえる。それが一般的でお金を出すほどではないのがこの世界だ。人それぞれではあるが、魔法を使えるのが普通だと思われるならわざわざお金を出すなんて事はしないし、できないだろう。


 考えて無かった。道が決まっていた頃とは違う事に気付くとこんなにも迷う事なのかと実感した。もし、アイシャやレイラならどんな職業が似合うだろう。アイシャは道場とかジムのトレーナーが似合うだろう。あるいは力自慢として格闘技の選手としても活躍できそう。


 レイラはまず、精神をどうにかしなくちゃいけないが、もし、それが治せたら万能的でどの職でもやっていけそうだ。もし、人見知りが治らなくても事務やあまり人と関わりない職業でもやっていけそうだ。


 リラは説明不要、考えるまでもなく女王陛下になるだろう。そうでなくとも女官として国を支える重要なポジションとして暮らすだろう。


 俺はどうだ?攻撃が主な魔法と複合魔法が出来ると言って、冒険者になるのか?体力が極端に少ないからクエストクリアの度に筋肉痛でダウンしそうだからやっぱりこれは無しかな。だとすると魔法省で働くことになるのか?でも、魔法省で魔法を使うイメージがない。


 前世では役に立たないと思っていた職業体験を色々やらなくちゃいけないのか、医学の道を再び歩むのも悪くないと思う。今はまだまだ若いとはいえ精神的には20歳、20を越えると時間が経つのが速く感じると先生が言っていたが、それが身体から起因する事なのか精神から起因するのか分からないが、進路はあらかじめ予定していた方が良さそうだ。


 しかし、今やれるのは制限されている以上、時間が経つのを待つだけかと思ったら、制服の内ポケットにあるメモ帳の事を思い出した。これは俺がこの世界に転生したときに色んな事をまとめていたやつだ。一応、ゲーム開始の時点の時からを想定していたが、予想外の事が起きすぎて見返す事もなければ新しいことを書くこともなく、いつの間にか何となく持ち歩いていた事になっていた。


 そのメモ帳には休み時間だけにはなるがやれることはあった。あの兄妹の観察の合間にはなるが、それをやってみようと思う。メモ帳にこれから新しくやる事と優先順位をつけて再び考え事を続ける。

次回5月中旬予定

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