45話 人間界に行けるそうです
「その……なんだ……誰しも秘密くらいあるしな、そこまで気にすることでもないさ」
「君はコレがどういう状況だか分かってないからそんな事が言えるんだ」
分かってないと言われてもな……俺が誰かに喋らなければいい話じゃないのか?
「分かってるって誰にも言わないし」
「そういうことじゃないんだって‼」
「じゃあどういう事なんだよ?」
「歴代、魔王は男がつとめてきた、しかし前任の魔王である私の父は婿養子として魔王になり、母は亡くなった……そのため血族は私一人になってしまい、父には婿養子を取れと言われたんだけど、私はそれが嫌だった」
なるほどそれは色々と難しい問題だな、でもなんで婿養子を取るのが嫌だったんだ?
「何でなんだ?」
「母の遺言だ、母は言った、私は体が弱くてひっそりと暮らしてきたけど貴女は強く堂々と生きなさいと……」
「良い母親だな」
「もちろんさ、でも私が魔王になるにあたって父は条件を出してきた、女であることを隠し通せと」
ん?なんだかよく分からないけど、嫌な予感がしてきた……
「バレたら?」
「女は許す、しかし男なら婿養子に迎え結婚しろ……と」
それで俺にバレてしまったわけだ……
「じゃあ俺はお前と結婚しなければならないのか?」
「え……ああ、そうなるけど……何でそんなに平然としてられるんの?結婚だよ?」
「いや……別に今さら一人や二人増えてもさほど問題ではないかな~と思いまして……」
「適当なヤツだな……」
「適当じゃないぞ、どうせ結婚するなら、可愛い子が良いし、初めて女の姿で会ったときも一目惚れしそうだったし」
「そ……そう、ならいいけど」
「どっちが素なんだ?」
さっきから若干口調が混雑してるし……俺としてはどちらもいけるけど。
「自分でも分からなくなっちゃった……元々はもっと女の子らしかった気がするけど……男として魔王を演じている内にどちらが本当なのか……たまに受付嬢やっていたのは……心の何処かにしまってしまった、本当の自分を忘れないためにだし」
「そうか……」
やはり色々と大変だったんだろうな
「じゃあ俺達の間ではそういう気遣いなしということで」
「え……」
「俺の前では好きなようにしろってことだよ」
「もう夫面ってこと?」
「え、いやそういう訳では……それに……」
「分かってる、急に結婚と言われて無理な話だよね……だから取り敢えず保留という事で」
保留て……そんなんでいいのか……
「いいのか?」
「正直、約束だから守らないといけないんだけど、私も色々と落ち着いたらの方がいいかなって……」
「そうだな……」
俺も色々とやらなければいけないこともあるしな……
「それに君がここに来た理由は例の件についてだよね?」
「そうだった……でもお前は体調は大丈夫なのか?凄い熱だった気がするけど……」
「あ……まあ誰かさんのせいで大丈夫みたい」
「え……」
そう簡単に治るもんか?
「でも、シャワーを浴びてきてもいいかな?」
「どうぞ、どうぞ」
「すぐに戻ってくるからさ、ここで待っていてよ、話はそのあとという事で」
「了解」
その後十分ほどで魔王は戻ってきたが、シャワーの音で落ち着かなかったのは言うまでもない。
「ごめん待たせた?」
「え、いやそんなに待たなかったよ」
「ん?どうしたの?」
お風呂上がりの女の子って色気半端ないですよね……
「いや、何でもないそれより魔王話のほうを……」
「魔王って呼び方なんか変な感じしてきたから、君はマオって呼んで良いよ、それが本当の名前」
「分かった……」
対して変わらないとか言ったら怒るだろうな……
「例の件についてだけど」
「ああ」
「君がここに来たばかりに起きた小さな女の子の事件の事を覚えてる?」
「ああ、あのギルドの連中が人間界を出入りしていた?」
「それだ」
懐かしいな、もう十年近くたったかな……エミリアはもう高校生くらいにはなっているはずだ。
「その時の魔方陣を使おうと思ってる」
「え……でもそれは壊したんじゃ……」
「城の中にあるのはね」
「それってどういう」
「あのとき、こっちに戻ってくるには向こう魔方陣はそのままにしなくちゃいけなかったからね」
「なるほど」
だからこっちで繋ぎ直せば行けるってことか。
「だけど条件がある」
「条件?」
「片道切符しかない」
「え……」
「行ったら同じようには戻っては来られない……」
「それって……」
片道切符……死ぬって訳じゃないけど、こっちに戻ってくるには色々とめんどくさそうだな……
「本来転移の魔方陣というのは術者が二人必要で同時に行う、だから魔方陣は場所によって模様も違う、だから再現するのに時間が欲しいですかかった」
「再現ってまさか、お前……そのせいで」
「いや、それのせいって訳じゃないし、貯まっていた資料の整理も終わったからもう大丈夫だ」
「そうか」
「魔方陣の方は再現はできた……でも一度使ったら壊れるだろうし、今回のように再現も厳しいものになる、何よりも時間がかかってしまうと思う、そして魔法陣が今の状態を留めておけるのも後一ヶ月ほどしかない」
「なるほど」
それで一度きりってわけね、時間もない……
「だから良く考えてほしい、今向こうに行っているリリスと会えれば戻ってくることは簡単だか、会えるとも限らないしな」
「分かった、明日までには答えを出すよ」
「そうしてくれ」
人間界に行く件についてはレイラやルナとも話さなければいけないしな。
そろそろ人間界編が投稿できる……