第40話:小さな女神に限界があった場合
いつのまにか、週間ユニークユーザ様が1500を超えていました。とても緊張しています。
評価や感想、ありがとうございます。ブックマークも、ありがとうございます。
頑張ります。
今回は、新メンバー歓迎と、フィギュア萌え、です。
やられた、と思った。
滝シャワーから戻った、二人の女の子。
完全に雰囲気がちがう。
以前も、こういうので困ったことが何度もあった。女子生徒と、ばったり休日に、私服姿で出会うと、髪型から服装から、何もかもちがうのに、先生とか言われても、誰だかよく分からん、という感じだ。祭りの夜間巡視とかのとき、まさにそういう感じ。浴衣で和装とか、誰だか分からん。
リイムとエイムは、美しい少女だと、思ってはいた。
だから、せまってこられたとき、あせるくらいドキドキしてしまった。
しかし、これほどとは、思っていなかった。
水を浴びて、汚れを落として。
髪を洗って、梳かして。
髪を編んで、結んで、まとめて。
本物のお姫様のように。
雑多な感じの、毛糸の服から。
純白の「荒目布」の貫頭衣に着替えているのも、やられた、と思うところ。
双子のように、そっくりな従姉妹。
並んで、驚きの美しさが、二倍。
アイラも美人だけれど、血筋的な、族長の血筋、みたいなところはなくて。
クマラもかわいいんだけれど、そういう愛らしさとはちがうもので。
以前、読んだことがある、古代中国を舞台にした、直木賞の作品。性表現がたくさんあるので、学級文庫には加えられなかったけれど、ラストシーンで、主人公とその付き人がどちらも美しく描かれていたのを思い出した。
なんで、そんな小説のイメージを思い出したのか・・・。
今、あのときのように、二人に迫られたとしたら、拒む自信がない。
情けない話だが、人を見た目で決めてしまっている自分を恥じたい。
それでも、欲望に身を任せたくなるような、ぐっとくる、清楚さと気品。それをかき乱したいと思う自分自身の、内なる荒々しさとの葛藤。
後ろにいるクマラが、満足そうに笑っているのを見て。
この子は、誰かを輝かせていくことで、自分も輝こうとする子なんだな、と。
クマラのおかげでおれは自分を取り戻した。
「オオバさま、これ以上はない、と思える、最高のもてなしを、ありがとうございます」
リイムには言えそうにないあいさつを、エイムが代わって言う。
「・・・ありがとうございます」
リイムは短く一言で。
でも、その短さに、本心だと分かる、何かがあった。
「さま付け、禁止」
「・・・そう言われましても、みなさまの前で、庇護下の氏族の者がオオバさまを呼び捨てる訳にはいきません」
やれやれ。
まだ分かっていない。
「クマラ、いいか?」
「はい」
「よその子に、着せてあげるために、この服を作ったんじゃないよな?」
「うん、そう。新しく来てくれた、村人になる人たちのために作ったもの」
「だってさ。よそ者みたいなあいさつしてると、その服ひんむいて、大森林に中身の方を捨ててくるけど、それでもさま付けするか、エイム?」
「・・・もう、言ってる意味がよくわかりません。わたしたちは、この布で買われてここに来ました。それなのに・・・」
「確かに、売買とか、物々交換の形だったかもしれないけれど、本当は誰かに村に来てほしかっただけだからな。遠慮しないで、楽にしてほしい」
エイムは、口を閉じて、じっとおれを見ている。
よく見ると、リイムは泣いている。
しゃべるのをエイムに任せているのは、堅苦しく話すためだけではないようだ。
「なんで泣くんだ?」
「だ、だって、すっごく、優しくしてくれて・・・。きれいな服は着せてくれるし、髪はきれいに結んでくれるし・・・。ううー・・・妹みたいな年下の子なのに、お姉さんみたいに優しくて・・・」
「クマラ、おまえさ、何したの?」
クマラは首をかしげただけで、何も言わなかった。
「・・・知らないとこ、来て、ほんとは、怖かったけど・・・。こんなに親切にしてくれるなんて、思ってなかった、から・・・」
ん、そうか。
明るくふるまってたけれど、不安がいっぱいだったんだな。
とにかく、大森林に来ても、おれに守ってもらえるように、しっかりアピールして、存在を示して、女の部分も使って、必死で生き抜こうとしてたんだな。
こんな、優しくしてもらえるとは、思ってもいなかった、びっくりした、感動したって、ことか。
・・・明日の朝から、地獄の訓練もあるけれど、大丈夫かな。
まあ、それは、いいとしよう。
とりあえず、場の空気を変えようと、ジッドを手招きして呼ぶ。
ジッドも、呼ばれた理由は想像がついているらしい。自然におれのところまでやってくる。
「紹介するよ、ジッドだ。大草原の出身だから、いろいろ助けてもらったらいい」
「ジッドだ。よろしく」
ジッドはにっこり笑う。
エイムが、がばっと立ち上がる。
リイムが泣き止む。
二人の時間が、止まったかのように、動かなくなる。
こいつら、フリーズしやがった。
もう、ほうっておこう。
セントラエムがクマラを呼んだ。
クマラは、あんまり驚いていないようだ。
「オーバの肩の上の居心地はどうですか、女神さま」
「手の平よりは安定しています。高さも、ちょうどいいですね」
「それで、極目布のことなんですが・・・」
二人は主に布と服の話。
女神とその信者なのに、事務的で、商業的な感じになるのは、クマラがアコンの村では、まるでおれの秘書みたいなポジションとか、農業大臣みたいなポジションにいるからだろうか。
・・・どうして、みんな、女神が小さいのに気にならないんだろうか。
アイラとノイハ以外は、セントラエムが体長十五センチってところに何もひっかかりはなかったらしい。
なんでだ?
普通、そこが気になるよな?
あとで聞いてみようと思う。
あ、エイムが先に復活したらしい。
リイムはまだみたいだ。
「あ、あの、ジッド、と名乗られましたか?」
「ああ。おれはジッドだ」
「大草原の出身ですよね?」
「そうだ」
「氏族は・・・」
「・・・エレカン氏族のジッド?」
復活したリイムがエイムの会話に割って入って、そう言った。
「ああ、そうだ。かつてはそう呼ばれた。大草原も、氏族の名も、もう捨てたが、な」
「・・・大草原の天才剣士?」
「・・・そうやって、言われていたこともあったが、世の中にはもっとすごいのがたくさんいる」
「・・・十人を一瞬で倒した?」
「一瞬・・・ではないけれど、人数もはっきりとは覚えていないな。とにかく、逃げのびるのに必死だったから、かかってきた奴は全部倒したが?」
こうして、集中して、言語を意識してみると、さっきアイラに言われたことが分かった。
今、ジッドは草原遊牧民族語でしゃべっている。
ただ、聞き流しているだけだと、確かにどの言語を受け止めているのか、判断できない。
これは、盲点だった。
話している意味は、分かる。しかし、どの言語かは、意識していないと判別できない。スキルとして身につけていることの弊害なのだろうか。頭の中では、全てが日本語として機能している?
「天才剣士ジッドが、ここにいたなんて・・・」
「オオバさま、知ってて、黙っていたんですね?」
エイムがさま付きなので、何も答えない。
「・・・すまないが、ナルカン氏族の二人には、天才剣士って言うのはやめてもらいたいな。ここでは、おれと互角に戦う者や、おれより強い者もいる。おれはもう、自分が天才だなどと恥ずかしくて思えんのだ。そもそも、周りが勝手に言い出したことだしな」
「ジッドと互角か、ジッドより強い? オオバさまですか?」
エイムが食い付いた。
「・・・オオバが嫌がってるから、「さま」を付けるのもやめるんだ。オオバは、確かにおれよりも強い。オオバだけじゃない。アイラとは勝ったり負けたりだし、最近はクマラに一本取られる。それに、ジルにもおれはかなわんからな」
「アイラさま、クマラさまに・・・あの小さなジル? 本当ですか?」
「すぐに分かるさ。それに、そういうことにも慣れる。ここはそういう村だ。それに、戦い方によっては、ノイハもおれより強いからな」
「ノイハさんまで?」
ノイハがジッドに持ち上げられている。
食いしん坊の友情だろうか。
確かに、三本の矢を同時に射るスキルを手にしてから、ノイハは自信にあふれている気はする。おれに挑んできたくらいだし・・・。
ああ、そうだ。
ノイハとセイハを呼んで紹介しとこう。
「ノイハ! セイハ!」
肉に夢中だったノイハと、ヨルとサーラの三人で話しこんでいたセイハがおれを振り返り、立ち上がってやってきた。
「どうした、オーバ」
「なんだなんだ、いい肉でもあんの?」
ノイハはもうちょっと、いいところを見せてほしいかな。
セイハは大丈夫そうだ。
「この二人は、大草原のナルカン氏族から連れてきた、リイムとエイムだ」
おれは、南方諸部族語を意識して、ノイハとセイハに、リイムとエイムを紹介する。
それからリイムたちを向き直る。
意識するのは草原遊牧民族語だ。
「リイム、エイム、この二人はノイハとセイハだ。ノイハは弓術が得意で、狩りの名人だ。セイハは土器づくりが得意で、うちの村の器は全部セイハが作ってくれている」
四人が向き合う。
ノイハとセイハが、息をのむ。
クマラがそれを見て微笑む。
「リイム、です」
「エイム、です」
「あ、ああ。ノイハだ。これから、よろしく」
「セイハだ。クマラの兄だ。何か必要な器があれば、言ってくれ」
・・・。
それ以上の会話は続かない。
言語の壁がある。
南方諸部族語と草原遊牧民族語は、どっちかというと近い言語だから、それなりに通じるところもあるみたいだけれど・・・。
「ジッド、どうやって大森林の言葉を覚えた?」
「・・・ん、いや、そのうち覚えてたな、そういえば。特に何かをしたということはないかな」
そんなもんか。
時間はかかりそうだけれど・・・。
「オーバに、教えてもらえば、いい」
「そうそう」
ジルとウルが、おれにかけよって、膝の上にのった。
「リイムたちが?」
「ちがう」
ジルが、首を振る。
「みんなが、オーバから、女神と話すときの言葉、教えてもらえばいい」
・・・そこか。
ジルとウルには、少しだけ教えていたのだけれど。
日本語文化圏にしてしまおう、ということか。
ナルカン氏族の子たちが、南方諸部族語に慣れるよりも、はるかに時間がかかることだけれど。
それも、悪くない。
今後の、学習と訓練の計画を練っておこう。
いろいろあって、修業、開始。
二人での対戦の型をはじめは見ているだけだったナルカン氏族の男の子たちも、しばらくすると引っ張り出されて一緒にやっていた。まあ、それでいいか。
クマラはリイムとエイムを呼んで、ケーナと一緒に教えている。
大草原に行く前とちがって、大人組も参加している。
いい傾向だが・・・。
ジッドのレベルがすでに高いからかもしれないけれど、アイラやクマラのように、大人組はレベルが上がりそうにないんだよな。
スキルにも、レベルにも、成長期ってものがあるんじゃないだろうか。
それでも、やっておいて、損はない。
何か、危機が迫ったときに、後悔しないためにも。
スキル獲得とレベル上げだけが目的ではないのだから。
フィギュアサイズのセントラエムは、アイラのふとももに腰かけて、ふくらんできているお腹に耳を寄せている。アイラも、女神のそんなようすに嬉しそうだ。
実体化できるスキルは、十分の一の分身で実体化すると、だいたい十日が限度らしい。
大草原に出かけるとき、十日以上かかる場合は、実体化せずに、分身だけしてもらって、村とおれとに分かれてついてもらう方がいいだろう。
なぜか、ノイハのレベルが上がっているようだったので、確認してみると、『毒耐性』スキルがあった。
話を聞くと、毒蛇に噛まれたということだった。それで、セントラエムが神術を使って毒を消してくれたそうだ。
姿を見せずに、村人の危機に現われて、光に包んで守る。
かっこいいセントラエムが、そこにいた。
・・・おれん中では、ドジ女神の印象が強過ぎるんだけれど。
それとは別に、思いついたのは、耐性関連のスキルについて。
これは、レベル上げがしやすいのではないか、と。
うちの村は、修業で『苦痛耐性』スキルを身につけた者がいるし、今回の『毒耐性』スキルだって、セントラエムが神術で治療してくれるのだから、大きな問題にならない。
それどころか、耐性はあった方が生存確率を高めるはずだ。
・・・サディスティックではあるが、検討の余地がある。
しかし、毒蛇かあ・・・。
噛まれて、スキルが身に付かなかったら、トラウマものだよな。
それでも、やるべきだし、やる価値は大きいのだと、言える。
それと、虹池の馬たちのところで、乗馬スキルを磨きたい。
馬が使えると、『高速長駆』がなくても、かなり速く移動できるようになる。
いつかは、大森林を抜ける道をつくって・・・。
村を大きくしていく夢はふくらむ。
まあ、今から何年もかかる話だけれど。
立合いが始まったら、始めての少年少女は、後ろで見学。
・・・というか、リイムとエイムはジッドを食い入るように見ている。
相手は・・・クマラか。
剣を相手に、無手でかまえるクマラ。
力の抜けた、いい姿勢だ。
剣先の動きを見切り、ぎりぎりで避けて、応戦する。
クマラの拳をジッドも余裕で躱す。
体を入れ替えて、再び向き合う。
クマラの足運びは落ち着いている。ジルは強いけれど、すぐに跳び蹴りを使いたがる。身長差がある相手が多いせいだけれど、それでも、ローキック中心で組み立てるような戦いも覚えてほしい。その点、クマラはばっちりだ。いつの間にこんなにいい雰囲気で戦えるようになったのだろうか。
ジッドと何度か、互いにかわして、かわして、立ち位置を変えていく。
ジッドの剣をかわす、ということ自体が、リイムやエイムにしてみれば、すごいことなのだろうと思う。
この二人には、ジッドの剣筋なんて、見えていないだろう。
クマラが踏み込み・・・のふりで一度止まって、ジッドが応じた剣を振ってしまう。
振り下ろされた剣の奥に飛び込み、ジッドのふところに入るクマラ。
ジッドも跳ぶように下がるが、剣をかまえ直せない。
しかし、左右の連打も、回し蹴りも、ジッドをとらえきれない。
最後、クマラは、ジッドの木剣に右腕をしたたかに打ち込まれて、負けを認めた。
これは、折れた。
おれは立ち上がろうとするが、アイラに制され、えっ、とアイラを見つめる。
アイラはセントラエムを右手に抱いて立ち上がると、クマラに歩み寄り、神聖魔法を使う。光が、アイラとクマラを包む。
・・・あれ?
アイラは、骨折をどうにかできたんだったっけ?
おれの心配に関係なく、クマラの腕は完治していた。
・・・スキルレベルが上がったのか?
クマラの戦いといい、アイラの神聖魔法といい、うちのお后さま方は、成長著しいようだ。ま、クマラはまだ婚約者なんだけれど。
ちょっと見ないうちに、驚くような成長がある。
この村の可能性に、胸を張りたい。
リイムとエイムは、声もない。
確かに、ジッドは強い。
しかし、クマラがそれに負けていないことも、分かる。
驚きだろう。
アイラが神聖魔法を使ったことも、だ。
ナルカン氏族での大草原でのくらしでは目にしなかったものが、ここにはある。
まあ、おれたちからしてみれば、ナルカン氏族のくらしがそうなんだろうけれど。
おれたちがナルカン氏族のところで生きていくのではなく、ナルカン氏族を出たこの子たちがアコンの村で生きていくのだ。
驚きを積み重ねて、成長してほしい。
そんなことを考えていると、ジッドに呼ばれた。
「オーバ、久しぶりに、頼む」
お、立合いのお誘いだ。
おれはすっと立ち上がった。
隣では、クマラがジルと向き合っている。
アイラが少しだけ、うらやましそうに見ていた。
リイムとエイムは、やはりジッドを食い入るように見ている。
ジッドは木剣、おれは無手。
エイムが、あれ? という顔をしていた。
おれの無手を見るのは始めてだったかもしれない。
ジッドが音もなく動き、木剣が振り下ろされる。
次の瞬間、木剣は宙を舞い、おれはジッドの左耳を引っ張って、上半身を下げさせていた。
「痛い、痛い、痛い。まいった、負けた」
ジッドの言葉に、手を離す。
木剣が、からん、と地面に落ちた。
リイムがぽかんと口を開けていた。
おれとジッドの横では、ジルにあしらわれたクマラが、後ろから胸をもまれて、きゃっ、というかわいい悲鳴を上げていた。
・・・別にうらやましくはない、ぞ。
ちなみに、おれがクマラをあしらうときに、そういうことをしたことはない。
ないったら、ない。アイラにもしていない。
絶対にしない。クマラやアイラに嫌われたくはないからな。
ジルだから許されている、というだけだ。
エイムの視線が、ジッドではなく、おれの方を見ていたことは、少し気になった。
ほんの少し、だけれど。
翌朝から、ナルカン氏族組も、同じように行動していく。
朝の女神への祈り。残念ながら、今朝はもう、セントラエムのフィギュアサイズはスキル解除で消えていた。少し、さみしい気がした。
腕を前からあげて背伸びをすることで始まるあの体操。ジルの動きが美しい。
拳法の型。パンチアンドキック。ナルカン氏族の少年たちが楽しそうにやっている。
ランニングと水やり。リイムが、頑張っていた。エイム・・・しっかり、な。
ナルカン氏族組は慣れていないため、ランニング3往復のところを2往復で終えた。リイムだけが3往復、頑張った。
それから、クマラの指示に従って、ネアコンイモ関係の農作業。ちょっと、いろいろな考えがあるので、ネアコンイモは増産体制に入る。種芋を確認したら、クマラが大丈夫だと言うので、迷わず実施する。しばらくは重点作物だ。
さらに、ジルが『神楽舞』スキルで発見した、小川の東にある竹林へ移動する。これまでの竹林はもう少しで全滅させそうだったので、発見できたことに感謝したい。それに、ここの竹林はかなりの密林なので、しばらくは竹には困らないだろう。
しかし、すごいな、『神楽舞』スキル。以前、セントラエムのアドバイスで稲を発見したのも、セントラエムがこのスキルで得た神託からだった。
ナルカン氏族から受け取って連れてきた羊は、木に結んで放牧。いや、放牧とは言えないか。でも、木の周りの草をもぐもぐと黙って食べ続けている。世話がいらないようで、楽だ。
冬に向けて、アコンの木の中に居住空間を開発中。今のところ、西階のバンブーデッキに面する3本のアコンの木には、もう穴は開いた。中に、竹の床が張れたら、冬の夜は過ごしやすくなるはず。暗闇での作業はおれとノイハで担当した。
河原での食事準備と、先に滝シャワー。本当は、修業の後にしたいのだけれど、夕方だと、ちょっと冷たいと感じるので、シャワーはこの時間に。
学習面は、十日でひとつのローテーションを組む。一日目、南方諸部族語。二日目、文字。三日目、草原遊牧民族語。四日目、計算。五日目、日本語。六日目、文字。七日目、南方諸部族語。八日目、計算。九日目、草原遊牧民族語。十日目、文字。
すでに文字や計算は、個人差があるので、上位者が教える側になればいい。言語関係も同じで、大森林の者が南方諸部族語を、ナルカン氏族の者が草原遊牧民族語を教えればいい。日本語は、おれが教えるけれど、ジルやウル、それにセントラエムにも手伝ってもらえるよう、工夫をする。そうでないと、おれが遠出できないからだ。
戦闘面は三日でひとつのローテーションを組む。そもそも無手、すなわち拳法は毎日の必須としている。そこに、一日目は剣術、二日目は棒術、三日目は弓術を行う。立合いは、もちろん行うが、ナルカン氏族の新メンバーたちは、来月から。それ以外のメンバーは、神聖魔法が使えるアイラ、ジル、おれが見守る中、全力で戦う。レベルが高いほど、即死の危険は低いが、レベルの低い者ほど、よく見ておかないと危ない。
強さには理由があるものですね、とエイムが独り言のように言った。




