3かぐや姫はどんな気分で自分の好きな人に無理難題を押し付けたのだろう
趣のあるというよりは古い木の引き戸が年季を感じさせる、小料理屋のような叔父の店に薔薇の花束はあまりにも似合わなかった。
女将さんに「ロマンチックなプロポーズね」と言われて家に帰って99本のバラの花言葉を、グーグル先生に教わった時は「一本落としたのかな?」なんてくすりとした、自分にビンタをしてやりたくなった。
10年ほど前私は笑って生きる事に決めたが、それでもやっぱり諦めるべきものはあった。
それが結婚であったり子供であったり、もう沢山ある。諦めずに好きだと言ってくれた彼の気持ちは嬉しかったが、少し憎らしくもなった。
何故なら彼の言葉は私の病気を理解しているとは口で言うものの、[健康]な彼の言葉なのだ。そこで私は意地悪な気持ちも込めて、
「こういう事を何度もされるとお店に迷惑です。2ヶ月に一度だけ貴方とデートをします。その時に、また私を口説いて下さい。もちろんその間に他に好きな人が出来たら私の事は気にしないで下さい。私が死んでも終わりです。良いですか?あっ!お店には来ても良いですけど、その際のアプローチは禁止ですよ。」
こんな失礼極まりない条件を別段美人でもない私は、将来有望な彼に言い放った。呆れるか怒るかと思いきや彼は2ヶ月後の都合のいい日やどこに行きたいかを、聞き始めウキウキとしているように見えた。
私はお店での過剰なアプローチ禁止、そして連絡先は教えない。私が喜びそうなものや、事を考えて下さいと言った。
私はかぐや姫とは違うけど、諦めて欲しいんだとは気づけた。だからこその無理難題を突き付けた。彼の事が何となく好きなら結婚していたかも知れない。しかしすでに何となくよりは好きでこれからもっと好きになるビジョンも見えた。だから彼に離婚歴を付けたり、彼の記憶に必要以上に残る事を拒んだのだ。
結果的に2ヶ月に一度のデートは5回で終わった。私は色々と後悔した。




