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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
205/344

-Chapter03-

「ぎにゃぁっ!?」

 少し独特な声を上げて、一人の少年は倒れる。とりあえず自転車をどかして、俺は倒れている少年に声を掛けようとする。

「おい、大丈夫か……!?」

 ふと、誰かから睨まれたような気がして、俺はその視線の方へ目をやる。そこには、空色の髪色をした少女が、微妙に殺意のこもった目で俺を見ていた。

「い、いやすまん! 大丈夫……きっと生きてる! 俺だって彼を轢こうとして轢いた訳じゃないんだ! ただ、たまたま不幸が大量に重なって……」

 俺はそう言いながら、壊れた自転車を見せる。

「……ふえ? こ、これ、どうやったらこうなるのかな……」

 少女は俺の自転車をまじまじと見つめ、疑問の声を上げた。

「――まぁ、さすがにこれじゃわざとぶつかった訳じゃなさそうだよね……」

 少女はそう言うと、俺から少し距離を取って言う。

「そろそろ朔君が起きると思うから、声を掛けてあげてね!」

 ――いや、なぜ中の良さそうな彼女ではなくほぼ他人の俺が声を掛けるのか。とりあえず気を失っている少年に向けて、

「い、生きてるかー?」

 と声を掛けてみる。まだ彼は気を失っているように見えるが……。

「ま、まさか急にブレーキが効かなくなるなんて……不思議なこともあるんだね」

 微妙にわざとらしい口調で、杣は言う。何がわざとなのかは分からないが。

「朔君ー、先行っちゃうよ……死んでる……」

 怜は戻って来たかと思うと、まるでテンプレを述べるかのように言った。何だか俺が彼を自転車で轢いたことまで含めて何かの茶番のような気がしてきた。

「お兄ちゃんどうしたの……、え!? お、お兄ちゃん!?」

 唯一普通に驚き心配してくれたのは、先ほど存在感が希薄だった少女だった。

「だ、大丈夫……なんとか……」

 彼はその少女に肩を貸してもらって立ち上がる。とりあえず俺は彼に何度も謝ることにする。

「え、ハンドルまで折れてたんだ? そこまでいくともうある種の奇跡みたいなところがあるよね」

 再びわざとらしげに杣は言う。もしかして杣が今回の事故を起こしたんじゃないのかと疑い始めてしまう。どうしてそんなことをしたのか、どうやってそんなことをしたのかまるで分からないが。

「わーい! 朔君が生きてたー!」

 少女は朔と呼ばれた少年に抱き着く。

「悪かったな。俺、迅って言うんだけどさ。……その、お詫びとかいろいろしなくちゃいけないと思うから、えっと……今から、暇か?」

 とりあえず何かお詫びをしなくてはと思い、俺は彼に食事をおごることを提案した。彼は少し戸惑いながらも、俺の提案を受け入れてくれた。

「私、優奈って言います。今日はお昼ご飯をおごってくれて、本当にありがとうございます」

 道中、俺たちは自己紹介をする。朔の話から聞くと彼女は小学生らしいのだが、彼女の立ち振る舞いはすごくしっかりしていて、一瞬俺よりも年齢が上なのではないかと思ってしまった。……まぁ身長差はあるからそうではないとすぐに分かったのだが。

「えぇと、迅、さん……」

 朔が俺をさんづけで呼ぼうとしたので、俺は答えておく。

「あぁ、俺のことは呼び捨てでもいいぜ。あんまりそういう風にかしこまって言われるのは好きじゃないんだ」

 こう言うと、朔の横でずっとくっついている少女が、

「はいはーい! じゃあ迅! どこで昼食を食べるの!? 高級レストラン!?」

 質問をしてきた。――俺ってそんなにお金を持っているように見えるのか?

「怜……さすがにそれは僕が引くよ……」

 朔は怜と呼ばれた少女につっこみを入れた。

「まぁ、今日行くのは――ファミレスでいいかな」

 たまたま今日であった刀祢という少年がファミレスに行こうとしていたので、俺はそこを提案してみる。俺の町には一つしかファミレスがない。そこに行くことで杣がどうして彼の行く先を聞いたのか分かるかもしれないと思ってのことだったのだが――。

「えー!? ファミレスー!? あんな安いものしかないところで一体何を頼めというんですか――!?」

 怜はすごく不満そうにそんなことを言った。正直、そんなことを言われると微妙におごる気が失せる。もちろん俺が轢いてしまったのは朔なので、彼にはおごらなくてはならないのだが。

「ファミレス――この町にあったかなぁ?」

 朔はどうやらファミレスについてよく知らないらしい。

「この町のファミレスは、ピンからキリまでいろいろな値段のものがあるよ」

 杣が朔にこの町のファミレスについて説明をしている内に、俺は道筋を確認するために、周囲を眺めた。

「――ん?」

 ふと、建物と建物の間に奇妙な暗闇を見つけ、俺はそこに目をこらした。その瞬間、俺は何か得体のしれないものと目があった気がして、慌てて視線を逸らす。

「迅ー! おごるんなら早く来てよー!」

 おごられることしか頭にないらしい怜の言葉で我に返った俺は、溜息を吐いてから彼女らの元へ歩き始めた。

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