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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
204/344

-Chapter02-

「え? あ、はい、そうですけど……」

 刀祢と呼ばれた少年は、戸惑いながらも答える。彼は杣の知り合いという訳ではないらしい。ならなぜ杣は彼に声をかけたのだろう?

「ごめんね、急に呼び止めて。少し聞きたいことがあったから」

 杣は刀祢と話を始めた。聞き耳を立てていると、彼女はどうやら刀祢がこれからどこに行くかを聞いているらしい。そんなことを聞いて一体何になるのかよく分からないが。……どうやら彼は病院でお見舞いをした後、病院を出て商店街に向かい昼食を取るらしい。杣はその昼食をどこで取るかを聞く。そこまで詳しく知って、杣は何をする気なのだろうか?

「あの、すみません、僕はそろそろ……」

 急いでいるのか、刀祢は足踏みをしながら話を中断した。杣は特に引き留めはせず、彼は病院の階段を上って行った。

「杣、俺たちも病院で用事を済まさないか?」

 杣がここに来たということは、彼女も刀祢という少年のように、誰かを見舞うために来たのだろう。

「――いいえ、私はもうこれで帰るつもりだけど」

 杣が予想外のことを言ったので、俺は驚いて少し妙な声を上げてしまった。

「もう帰るって……病院に用事があるんじゃないのか? それとも、彼にどこに行くかを聞くのがその用事だったり?」

 後者はいくらなんでもあり得ないだろうとは思ったが。彼がこの時間帯にここに来ることなど、知り合いですらない俺たちがどうやって知ることができるというのだろうか。

「……まぁ、そうだね。すこし病院を見て回るくらいはいいかもしれない」

 杣は少しだけ考えるような仕草をすると、そう言って病院の中を無造作に歩き始めた。俺はそれに着いていこうとしたが、角を五、六回程曲がった時に杣を見失ってしまう。まるで杣に撒かれたみたいで、俺は杣に嫌われてしまったのではないかと落ち込む。今までこんなことなかったんだけどなぁ……むしろ杣はよく迷子になり、それを俺が探していたような……。

 俺が夏休み前の記憶に思いを馳せ、病院の待合室で待機していると、妙な二人組が病院の中に入ってくる。一人は特徴的な髪色――空の色で髪を染めたような色――の少女、もう一人は少女の後ろで待機している控えめそうな少年。

「おじゃましまーす!」

 少女の方はずかずかと病院の中に入ってくるのに対し、少年は深く溜息を吐いてなかなか病院の中に入ろうとしなかった。ふと、病院での用事を終えたらしい刀祢という少年が、もう一人の少年と鉢合わせする。二人は似た者同士らしい。珍妙なやり取りの後、少年は少女と合流する。二人のやり取りをぼうっと眺めていると、二人は随分仲睦まじくやり取りを交わしていた。杣はあまり話が好きそうな人ではないが、もう少し色々な話をして盛り上がりたい。俺が杣の好きそうな話題について考えていると、また特徴的な人が病院に入ってきた。今度は顔をフードで隠している少女のようだ。おぼつかない足取りで病院内を歩く。転びそうだなと思っていると、案の定彼女は転んでしまった。放っておくのは性に合わないので、そっと近づいて起き上がるのを助けると、

「あ、ありがとう、ございます……」

 途切れ途切れながらも、お礼を返してくれた。彼女は転んだところを軽く払い、駆け足で病院のトイレの方に走って行った。

 フードを被った少女はトイレの方に走って行ったきり全く戻ってこなかった。代わり、という訳ではないが、杣が病院の階段を下ってきた。

「何してたんだ?」

 俺が杣に聞くと、

「少し、ね。それより、そろそろ帰ろうと思うんだけど」

 杣に言われ、俺はポケットに入れていた携帯電話で時刻を確認する。そろそろ昼か。俺は特に病院に用事があるわけじゃないから、別にいつ帰ってもいいのだが。

「分かった。じゃ、自転車置き場に行くか」

 俺と杣は自転車置き場まで行き、行く時と同じように自転車にまたがる。駐車場にまで出てきたところで、俺は見覚えのある二人組を見かけた。――よく見るともう一人いる。二人の印象が強すぎて、少し存在感が希薄だったようだ。

「――あれ?」

 とりあえず歩行者優先だとブレーキをかけてみると、そのブレーキが全く動作しないことに気付く。それどころか、むしろ加速しているように見える。ブレーキをかけて加速する自転車なんて、あり得ない。

「くそっ、とりあえず衝突だけは避け――!?」

 俺が右に避けようとハンドルを傾けた瞬間、ポキッ、と本当にハンドルが金属で出来ているのか疑わしくなるような音を立てて、ハンドルが折れた。

「ちょ、こんなことあり得るのか!?」

 俺は慌てて後ろを振り向く。人間、パニックになると何をするか分からないものだ。杣は俺のやり取りをすごく冷静な目で見ていた。――なんでこの状況で冷静でいられるんだ?

「危ないっ!」

 遅すぎたかもしれない警告とともに、俺は三人の内一人を轢いてしまった。

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