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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
114/344

-Episode03-

「思ってたよりも気付くのが遅かったね、朔君」

 怜は僕が疑わしい視線を送るとあっさりと自分がやったと認め、まるで降伏するかのように両手を上げた。

「怜、どういうトリックで氷が僕に飛んできたの?」

 彼女がどうして僕に氷塊を飛ばしてきたかはさておき、僕はこっちの方が知りたかった。僕の目の前で氷が消えるという仕組みが、僕は気になって仕方がない。

「え? ……魔法だけど?」

 怜はきょとんとした顔をしながら、弥奈と同じような妄言を言う。

「いや、だからね? 魔法なんてあるわけないじゃないか」

 僕が怜に説明を施そうとした瞬間、怜の目の前に、水球が現れる。

「えっ!?」

 突然の出来事に僕は驚き、その水球を見つめる。

「ほら、私って『水』の魔法が使えるでしょ? それをちょっと応用すれば、氷とか水蒸気だって作れるんだよ?」

 いや、怜が「水」の魔法が使えるなんて知らないし、そもそも魔法なんてあるわけないし。しかしこうやって見てしまうと、信じる信じないに関わらず、魔法と呼ばれるものは存在しているのだと否応なしにあると認めなくてはならなかった。

「まぁ……いいや。でも僕、魔法のことなんてこれっぽっちも知らないんだよね」

 さりげなく魔法について教えてもらおうと、ちらと怜の方を見て言ってみる。

「朔君、意図がかなり見え見えなんだけど。そんな朔君も好きだから教えちゃうけどね!」

 怜に完全に僕の意図がばれていることが分かり、僕は赤面する。そんな僕を怜は非常に楽しそうに見ていた。

 その後、病院に着くまで、僕は魔法に関する知識を実践込みで教えてもらった。実践というよりは僕が実験台の実験に近かったけど。そのせいで病院に着く予定の時間が大分遅れてしまったし。

「……っていうか、僕は何の魔法が使えるんだろうなぁ」

 僕は病院が見えてくる頃に、ぼそっとそんなことを呟いた。

「何の魔法が使えるかは、大体物心つく頃には分かってると思うけどなぁ。まぁ朔君はついさっき魔法のことを知ったことだし、あと五年くらい経てば自分が何の魔法を使えるか分かるんじゃないかな?」

 怜は僕の数歩先を遊ぶようにステップを踏みながらそんなことを言った。五年、かぁ。随分長い年月が必要だなぁ。僕がどんな魔法を使えるのか妄想していると、知らない間に病院の入り口の前まで来ていた。

「おじゃましまーす!」

 まるで友人の家に入るようなスタンスで病院の中に入っていく怜。マナーとか守る気がないのだろうか。僕が溜め息を吐いたとき、僕の方に誰かが向かってくるのが見えた。見た感じ、小柄な男性だな。彼は走っているようだ。僕は邪魔にならないようにと、ひょいと右によけてみる。すると、彼も僕と同じことを考えていたようで、彼は左によけたみたいだ。結果、僕たちはぶつかりそうになって一歩後ろに下がる。僕は慌ててよけようと左にずれるが、彼も今度は右にずれてまた僕たちは一歩後ろに下がる。まるで鏡のようなやり取りが何度も続いてから、僕は止まれば彼の方が動いてくれることにようやく気付き、僕はその場に棒立ちで静止する。そしてそのまま、僕と彼はその場に立ち止まって――。

「いや動いてよ!」

 思わず僕は叫んでいた。まさか立ち止まって相手の出方を待つ思考まで重なるとは思わなかった。

「ひいっ!? すいません! すいません!」

 僕のツッコミに、彼はかなり怯えながら何度も謝っていた。そんなに謝られてしまうと、こっちが戸惑ってしまう。

「あ、えーと……別に謝らなくてもいいよ?」

 そう言いながら、僕は同年代っぽい小柄な男性の姿を観察する。若草色の髪に、僕でさえ彼が気弱そうだと思わせるほどの気弱さを持っていそうな風貌。

「うぅ……すいません」

 謝らなくてもいいって言ったのに、彼はまだ謝り続けていた。

「えっと、お先に、どうぞ」

 僕はゆっくりと道を開ける。彼は何度も僕に頭を下げ、謝罪の言葉を口にしながら病院の外へ出て行った。

「朔君! 遅い!」

 待ちきれなくなったのか、怜が病院の中から僕の方へ向かってきた。ちなみに優奈は病院のロビーで涼んでいる。病院って、思ったよりエアコンがきいているんだなぁ。

「で、朔君ってどうして病院に来たの?」

 大方知らないだろうとは思っていたが、こんなタイミングで聞かれるとは思っていなかった。ただ、黙っている必要があることでもないので、僕は母の見舞いに来たということを、母の寝ている病室、302号室へ向かいながら話した。

「へぇー……どんな病気か分からないけど、虹魔法使いがいれば治るのかな」

 怜はさっき説明したばかりの用語を交えて話す。

「なんでもできる魔法使いだっけ?」

 僕は確認を込めて怜に聞いてみる。彼女はまるでクイズの出題者のような声で、

「正解!」

 と言った。母の問題は少なくとも軽い話題ではないのに、そこを無理やり軽い話に持っていこうとする怜に、僕は半分呆れていた。

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