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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
109/344

-Chapter52-

 突然の爆音に困惑していたのは、俺たちだけではなかった。屋台の準備をしている者、早めに祭りに来ている者、皆がこの騒音に驚き、戸惑っていた。

「まずいな、このままだと……」

 俺は周囲の反応を見て顔をしかめる。かなり危険な状態だ。誰か一人でも不安に耐え切れずに大声を出してしまったら、途端にこの場所はパニックになる。爆発音の原因が何かはまだ分からないが、それがかつての風を使う少年のような人を傷つけることを躊躇わないような人間だとしたら……?

 そこまで思考が進んだところで、不意に小さな爆発音が鳴る。また、洞窟で爆発が起きたのか、と思ったのだが――。振り向いた瞬間、光が、爆ぜる。

「花、火……?」

 夏の風物詩とも言える、花火だった。次々と花火が打ち上げられては、綺麗な光を残して去っていく。その光景を眺めているうちに、周囲の人々のざわめきは止んで、次第に人々は花火を眺めたり、元の作業に戻ったりしていた。――何故だ?

「なぁ、おかしくないか……?」

 俺は疑問を弥奈とゴル先輩、そして杣に語りかける。洞窟でなった爆発音と、花火の爆発音は、明らかに違い過ぎていた。俺も小さい爆発の方は洞窟で発生したものだと一度勘違いしたが、二回目以降はそうではないと判断できた。――それなのに何故、ほとんどの人は何事もなかったかのように元の作業に戻っているんだ? 普通なら誰もが気付ける程の音の違いだったのに。その、筈なのに。

「おかしい、ですか……?」

 俺の問いに、弥奈は首を傾げていた。まるで俺の感じている違和感を全く感じていないかのように。そして、

「確かに、花火というのは面白おかしいものだな! 某もこれは素晴らしいと思うぞ!」

 ゴル先輩も、音の違いを理解できていなかった。まるで俺だけが気付けたかのように。下手すれば、俺だけが勘違いしているかのように。

「いえ、そうじゃなくて、最初の音と――」

 俺がそう言いかけた時、杣が俺の袖を掴んだ。どうしたのか、と俺が言いかけた時、彼女は俺の耳元で囁いた。

「――このままだと、まずい」

 彼女の普段とは全く違う、まるで別のものが憑りついたかのような声に、俺は身震いし、何も言えなくなった。

「君の方から見て右の屋台に、自転車が置いてあるの。君はそれを使って出来るだけ遠くへ逃げて」

 急にそんなことを言われ、俺はわけが分からなくなる。

「な、どうして」

 俺がそう囁き返すと、彼女は一呼吸おいて、

「怜が、舞に襲われてる。……多分、彼女は死ぬ」

 そう、言った。状況が突飛すぎて、開いた口が塞がらないまま、杣の方に顔を向ける。

「怜は、多分――人質を取られた。そんなことを言ってる。人質は朔君で間違いない。それで、今彼は自宅にいる」

 杣は話し続ける。彼女がこれらの情報を得たのは、おそらく彼女の影の魔法によるものなのだろうが、どうしてこんな状況になっているんだ? 俺たちが閉じ込められている間に何があったんだ?

「舞と怜の戦闘はどんどん激化しているの。二人の会話もだんだんエスカレートしてる。ここもじき危なくなる。だから早く逃げ――」

 俺は彼女が言い終わる前に、右の方にある自転車に駆け出していた。俺はそれにまたがると、杣に声を掛ける。

「――朔を連れてくる! もしかしたらあいつなら、この状況を止められるかもしれない!」

 その言葉には、根拠なんてほとんどなかった。しかし、妙な自信はあった。彼なら、なんとかできるかもしれない。細い一本の糸のような、希望が彼にはあるような気がした。俺は自転車にまたがると、一気に漕ぎ出す。

「待って、そっちは――」

 杣の制止も聞かず、俺は神社の、森へ向かって自転車を漕いで行く。この町の神社は、俺たちの住んでいる住宅街よりも標高の高い位置にある。つまり、ここからなら、俺たちの町のどこへ行くにも、下り一直線で進むことが出来るのだ。

「いっけぇえぇええ!!!」

 俺は叫びながら、木々の間を通り抜けて進んでいく。魔力で身体能力を上げ、寸前で木を回避し、なるべくスピードを維持しながら、駆け下りる。ある程度の高さまで達したところで、俺は勢いよく地面を蹴り上げた。――瞬間、自転車の車体が浮き上がる。跳んだのだ。魔法を纏った状態で放った蹴りは、自転車を神社のある位置よりも上空に自転車を飛ばした。――朔の家は一度行った。自分の今までの人生を過ごしてきた町だ、どこに何があるかぐらいは、把握してる――。

 俺は家の屋根の上に自転車を着地させる。そしてすぐに屋根を蹴って跳ぶ。何度もそれを繰り返して、朔のいる家に最短で向かう――! 俺は携帯電話を取り出し、前朔の家に行ったとき、メモ紙に書いてあった朔の家の番号を、記憶を頼りに押していく。すべて押し切った後、俺は一つの不安がよぎる。もし、朔が既に家を出ていたとしたら……? すれ違いだけは避けなければならない。そう思った直後、電話口の向こうから、

「もしもし……?」

 朔の声が、聞こえた。

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