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第7話 閑話 ダンジョン(鋼鉄の剣)

【冒険者side】


 ダンジョン。それは冒険者の生活の糧。

 これほど便利なものはない。


 なぜなら、一階ごとに出る魔物はレベル通りに強くなるし、魔法の属性は階ごとに決まっている。


 さらに、魔物が入ってこないセーフゾーンまで各階には存在している。


 魔物を倒すと、レベルに応じて現金やアイテム、あるいは食料になる加工肉が落ち、死骸は光の粒になって消え去る。


 冒険者はここで、魔物を狩り、レベルを上げて、コインを集め、アイテムを入手し、ギルドに売る。


 なぜそんなに冒険者に都合がよいのか。

 そんなことは気にもせずに、今日も冒険者はダンジョンに潜る。


 だから、すぐに地図ができ、攻略できるはずなのだが……


 なぜか、十数年~数十年の間、定期的に、ダンジョンの内部が変化するのだ。

 時期はそれぞれだが、それまでの地図が意味をなさなくなる。


 ここ、クティの町はずれにあるダンジョンも、二週間前に内部変化を起こしたばかりだ。地図が無い状態では情報が金になる。新しいマップのための位置情報は、階層が深くなるほど高く売れる。


 だから成長に行き詰った冒険者がチャンスを求めて集まっていた。



 朝、ルツィナの店でお弁当を買いこんだ俺たち鋼鉄の剣のメンバーは、四名のパーティ。


 剣士  ボルク 鋼鉄の剣と鎧を纏った大柄な男性 24歳 明るい好青年 リーダー

 賢者  バゥイ 細身の筋肉質の男性 杖と盾を併用 24歳 理知的

 弓使い ヴィラ ショートヘアの男勝りな女性 22歳 勝気な性格

 魔法使いシルル メガネが必需品 女性 魔導書とロッドを使用 22歳 内向的


 レベルはみんな42。ずっと一緒に戦っているからな。

 ダンジョンは9階ごとに一つの単位ととらえられている。


 1~9階にいたらレベルはどんなに頑張っても10レベルまでしか上がらない。

 10階からは、レベル10以上でなければ立ち入ることができない。

 20階からは、レベル20以上でなければ立ち入ることができない。


 そして各9階、19 階と、最後に9がつく階のダンジョンボスを倒すと、クリア特典なのか、階段を下りた、次の階層のスタート地点にあるまワープゾーンを使うことができる。


 だが、年に一度のダンジョン変化が起こると、また一からのスタート。


 俺たちは40階の入り口、ワープゾーンまでの地図を作る依頼と、レベルを上げるためこのダンジョンに来たんだ。



 ギルドで買った地図を見ながら、最短距離で10階のワープゾーンまで到達した。いくらか修正箇所があるな。まだ完全な地図になっていない。


 9回のラスボスは、油断さえしなければ恐れることはない。防御力が高い敵のため時間はかかるが、無事に倒すことができた。


「あ~。やっと10階ね。最短でも三時間はかかるのね」


 ヴィラが小型のクロスボウを背中に背負いなおしながら、疲れたと言いたげにシルルに同意を求めた。


「……ボクは、平気」


 マジックポイント(MP)を消費しないよう、後衛で最低限の仕事しかしていないシルル。9階のボス戦までは俺たちだけでやるのが効率的だからだ。


「ああ、ここが10階のワープゾーンですね。一度外へ戻って食事休憩でもしましょう。このワープゾーンが正しく利用できるか確認したいですし」


 バゥイは慎重に辺りを調べながら、戻ることを提案している。


「そういえば、お弁当買ったのよね。早く食べに戻りましょう」


 俺も弁当に興味がある。「そうしようぜ」と頷き、俺たちはワープを起動させた。



「なにこれ美味しい! ここのお弁当大当たりじゃない、ねえシルル」

「……さっぱりした白身のお肉、濃厚なニンニクの香り……体の中を温める」


 女子達が楽しそうにしているな。


「はて、この竹筒の中身はなんでしょう。ぷるりとした冷たい感触。とても美味しい。スープの煮凝りでしょうか? 喉の渇きをいやし、とても滋養があります。どのように固めたのでしょう? う~む。実に興味深い。そうは思いませんか、ボルク」


 バゥイよ、美味いものは美味いでよくねーか? 賢者だからかやたらと考えながら食っているな。


 俺はふと思いついて、ふたを開けずに竹筒を振ってみた。


「なにをしているのですか、ボルク!」


 俺は無視をしながら、ふたを開けた。


「ん? 見てみなバゥイ。スープになっている。しかも温かい」


 俺はそのままごくごくと飲んでみた。


「美味い! 極上のスープだ」

「待って! まだあるよね。あたしも試したい」


 ヴィラが新しい竹筒をぶんどるように手にすると、思いっきり振っては口にした。


「本当ね! 固形の時とは違う深い味わいを喉の奥に感じるわ。それに温かいせいか香りも強く広がるの。飲んでみな、シルル」


「わかった。……おいしい。」


「なんですと。わたくしにも一口飲ませて頂きたい」


 しかたねーな。俺は残っていたスープを竹筒ごと渡した。


「これは。素晴らしい! もし水をこのように固められたらそれはそれで運搬の革命を起こせますね。しかし、スープだからできるのか? 温度はどこまで上げられる? うむ。ぜひ調理法が知りたいですね」


 この弁当すげえな。パンは平凡なものだがおかずは最高じゃねえか。保存の魔法もある。もう一つのラクーンの弁当も気になるな。


 すっかり満足した俺たちは、これからどうするかを話し合った。


「弁当のおかげで、気力の回復ができた。もう少し進んでもいいんじゃねーか」


「そうね。一桁階層までが初見最短ルートで三時間かかったから、20階層クリアにはどれだけかかるか分からないわね」


「そうですね。地図も22階までしか出来ていないようですし、地図がどれくらいの精度でできているか確認の意味も込めてもう2階分進んでみましょう。帰りは10階のワープゾーンまで戻らなければいけませんので時間制限をかけて。二時間進んだら、どんな場所であれ10階に戻る、ということなら安心ではありませんか?」


「いいね。各階のボスは、一回倒した相手には出ることがないし。早く戻って明日に備えましょ」


「そうですね。もし、何かあってもお弁当もありますし」


 やる気だな。じゃあ、無理のないように続けるか。

 俺は、「じゃあ、行き帰り四時間の午後の部スタートしよう」と宣言した。


 ま、何かあっても今最新の探索は22階。弁当があればセーフゾーンで一晩過ごしてもなんとかなるさ。


 明日も弁当、買いに行くか。


 いい弁当屋があってこれからのダンジョン探索に楽しみが広がったな、と話しながら、俺たちは10階のワープゾーンまで戻った。


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