良い旅を
「ハァッ…もう…!廊下長すぎ……!」
息を切らしながら少年がぼやく。子供にしてはかなり体力がある少年でも音を上げるほど、組織の拠点は広かった。最初は駆け足だったが、疲れて今は歩いてしまっている。
パッシとは既に分かれていた。故に今、少年は一人だ。
『ありがとう、ぼくの方はもう大丈夫だ!お礼としてこの組織が貯め込んでいた金銭は全てきみたちにあげよう!!本当にありがとう!!ぼくはもう自由だ。前から旅をしたいと思っていた。だから、さようなら!!後は、きみたち自身のことを!!』
そう言われた少年は、バケモノを必死に追いかけていた。
バケモノの姿はとうに見えなくなっている。しかし、あちこちにある破壊痕がバケモノの通った道を示していた。
そうして、少年は大穴が空いた部屋を見付けた。遠慮なく立ち入る前に、中から声が聞こえてきた。
「チョコチップクッキーうま~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
(この呑気な声は……!)
沸き上がる苛立ちに従って『聖水』を振りかぶる。
「人が追い掛けてきてやったのに何寛いでるんだバーーーーーーーーカ!!!!!」
「アッッッッツ!!!!!!」
いつも通りバケモノが『聖水』を浴びて床でのたうち回っている。
いつもと違うのは、バケモノの向かいに座り、カフェオレを飲む男がいることだ。
「僕もバカじゃないから察するけどさ…アンタが『博士』?」
「君がコレを管理していたか。感謝しよう。私としても中々の出来栄えだったのでね。手放すには惜しいと思っていたのだよ」
少年の問いには答えず、あくまでマイペースに話す。
だが、その内容で肯定したようなものだ。バケモノの創造者、悪魔を造り続ける狂人──『博士』だ。
「悪魔の製造なんて僕の敵も敵だけど…悪魔憑きってわけじゃないし、僕の領分からは外れてるんだよ。僕は非力だから、相手が人間だと手出しできないのが憎らしいね」
「君が先ほど見せた投擲力も素晴らしいと思うが?人には向き不向きというものがあるのだよ、少年」
「狂人に褒められたって嬉しくないよ」
「君がそれを言うのか?」
「ハァ?」
心底意味が分からないと訝しげに博士を見る。
「悪魔とは畏れられるべきモノだ。姿を見たら泣き喚くべきだ。声を聞いたら絶望するべきだ。だと言うのに君は、発狂も崇拝もしていない。あまつさえ、コレと旅までしている」
「……」
「コレから聞いた。君は、初対面で躊躇いなく『聖水』を投げつけたそうだな。私でも形を整えることは叶わなかったコレを見て、おぞましいと忌避するわけでもなく、囲んで叩くわけでもなく、一人で、怒りのみを抱えた純粋な八つ当たりで、コレに立ち向かった」
「……」
「おかしいのだよ、少年。狂っている私が断言しよう。君は狂っている」
「……」
「……その上で、一つ言いたい」
博士が改めて少年に向き直る。
「私も君たちの旅に同行しても?」
「ハ???」
博士の話を黙って聞いていた少年は、何言ってんだコイツ、という目で博士を見つめた。
「何て????」
「君たちの旅に同行したい、と言った。聞けば、君たちが出会ったとき、暴走していたコレが君の声一つで止まったのだろう?何と興味深い。セーフティは菓子のみのはずだが…菓子を話題に出さずとも止められるとは、エクソシストの家系故か?考察を繰り返そうと、実践に勝るものなし。その光景を間近で見るべく、君たちと共に旅がしたい。何か問題でも?」
「問題しかないよ??そもそも僕、コイツ殺したいんだけど。知ってるんでしょ?」
「それは好きにしたまえ。私の作品はそう簡単に壊れるほど柔ではないさ。君はコレの命を狙いながら旅を続けてくれ。私はそれに付いていこう」
「俺、お菓子の国行きたい!!」
「かの国は私も興味がある。是非とも行くとしよう」
「僕の意見も聞けよ!!!」
「おや、菓子は嫌いかね?」
「……果物いっぱいのフルーツケーキが好き」
「決まりだな。かの国はとろけるほど甘い果物の産地としても有名だ」
「ケーキ!ケーキ!」
「あーもう!絶対アンタらぶっ飛ばして僕だけ美味しくケーキ食べてやるからな!!」
この後めちゃくちゃ三人でお菓子食べた。お菓子エンドです
これにて「バケモノと少年」完結!
正直まだ続けたい気持ちもありますが、ここで終わらせないと永遠に続く気がするのでキリ良くスパッと終わらせていただきました
吐き出せてない設定とか、何か思い付いたらTwitter(@chick_59_pp)の方で流すと思うので、良かったら見てやってください
最後まで読んでくださりありがとうございました!




