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亡国

「これは……どうしようか」


「お菓子買い足せねーじゃん」


瓦礫の山となった、かつて国があった場所に二人は来ていた。


バケモノの相も変わらず曖昧な案内に従い、言う方向へ歩みを進めていた。


行く先々の町や村で聞き込みをし、地図を手に入れ、バケモノに心当たりがあるかを聞き、ないと知ればまた別の場所へ赴く。


そんなことを繰り返した行き当たりばったりな旅である。食料などの消耗品の購入のため、地図に載っていた国に寄ろうとしたらこの有り様だった。


「道間違えたか?」


「だからって、こんな更地に辿り着くこと──」


「──オイ、何かいるぞ」


「ハ?」


バケモノが耳を澄ます。何かが聞こえた。悪魔の唸り声でも、動物の鳴き声でもない。


この声は、人だ。


「~♪」


(これは……歌?)


バケモノは音の方を目掛けて跳び上がり、人間の近くに着地する。


「オワァ!?!何だ!?!」


「お前、何者だ?」


「いや、こっちのセリフだわ!!!オレはただの吟遊詩人だよ!!え、命乞いとかした方が良い??」


おどけた様子で喚くのは中年の男。茶化しているようだが、並外れた身体能力を見せつけられて確かな命の危機を感じている。額には脂汗が浮かんでいた。


「脅すなバカ、ツレがごめんね」


追い付いた少年が場を取りなす。ついでにバケモノの足を踏むが、当然のように痛がることすらしなかった。


「あ、あぁ、いや、大丈夫だ。むしろ、みっともないとこ見せてすまん」


「でも、あんたは何でこんなところに?」


「オレは仕事関係でな。お前さんらは?」


「僕たちは地図に従ってここに来たんだけど…」


「そりゃ旧版を掴まされたな。ちゃんとした店で買わねぇとそうなる。旅じゃ命取りになるから気を付けた方が良い」


「なるほどね…助言ありがとう、次から気を付けることにするよ」


「若ぇのにしっかりしてんなぁ……オレがガキだった頃なんて大人の助言は皆ウゼェと思ってたのによぉ…」


「理に(かな)った教えは聞き入れるべきだと思ってるだけだよ」


「悟ってんなぁ……」


「それにしても気になったんだけど、仕事関係って何?」


吟遊詩人と滅んだ国に何の関係があるのか分からなかった少年は疑問をぶつけた。


「少し前で各地に怪物が現れた話は知ってるか?」


「怪物…?普通にそこらにいるでしょ?」


「いや、そうじゃない。同一の存在が突然各地で暴れ回ったって話だ。本当に前触れもなく手当たり次第に行く場所行く場所を破壊していったことから、ある国が造った生物兵器とも、生まれたての怪物とも言われてる。そしてこの国も、その怪物に一夜にして滅ぼされたって噂だぜ」


「ふーん」


「へー」


「信じてねぇな!?信じられねぇのも無理はねぇけど、もう少し聞いてくれよ!!!…あっ!そうだ!オレが作ったその怪物の曲があるから、良かったら聞いてってくれよ!」


「正確な地図くれるなら良いよ」


「そんくらいなら写しがあるから良いぜ!」


男は鞄から地図を手渡しつつ、楽器を取り出した。瓦礫に腰掛けた二人は雰囲気的に何となく拍手をしてみた。


「~♪~♪」


前奏が始まり、男が歌い出す。


「昔々ではない話。語られた噂話。とある怪物のお話。これは、本当にあった話。


平和な国に怪物一匹。訪れた災禍、降り注ぐ雷火。


その怪物は恐ろしかった。その怪物はおかしかった。


獣であって、獣でない。自然であって、自然でない。


手は血に塗れていた。脚は火を纏った。尾は鞭のようにしなった」


(ん?)


情景を思い浮かべながら聞いていた少年は、どこか既視感を覚えた。


「その怪物は恐ろしかった。その怪物はおかしかった。


助けて、助けて、人々は許しを乞う。されど、怪物は怒っていた。


許せなかった?何を?誰を?


聞いても怪物は答えない。


壊した、壊した、壊して、壊して。


後に残った瓦礫の山。ぽつり佇む、異形の怪物。


これは、哀しき、寂しき、怪物の話……」


全て聞き終わり、内容を反芻する。


これが、全て本当なら、この国を破壊したのは……


(──アンタのせいじゃん!!!!)


パチパチと拍手するバケモノを横目に、少年は心の中で叫んだ。


切るところが分からなかったので長め

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