店主の回答(後編)
円安でFIRE希望者達のアーリーリタイアが遠のいた気がしますね
常々働かずにFIREしたいと考えているヨシムネにとって、店主の発言は信じられない物では有った。
(『父さん』と『母さん』は忙しい事についてどう思っているんだろう…)
(目の前のメイドはそんな事お構いなしって感じなのは分かるけど…)
「ん?どうしたんですか?ヨシムネ様?食べないなら少し貰ってもいいですか?」
デカい乳を揺らしながらキャロラインは身を乗り出し、お代わりに預かろうしていた。
「…一切れなら良いよ」
「やった!さっすがヨシムネ様!」
キャロラインは目にも止まらぬ速さで、カツを一切れ分フォークで刺すとそのまま食らいついた。
「ひゃひがとうごひゃいます!」
彼女はカツを頬張りながら感謝の言葉を口にした。
「キャロラインに聞きたい事があるんだけど…」
「ひゃんでひゅか(なんですか)?」
「キャロラインはメイドの仕事を一生続ける気はあるの?」
「ぶふっ!?」
キャロラインの口からカツの衣が吹き飛んできた。
「うわっ!」
「す、すいません。お坊ちゃま…」
キャロラインは持っていたハンカチでヨシムネの顔を拭う。
「大丈夫だよ。キャロ。それより質問の答えが聞きたいんだ」
「……そうですね」
「私は仕事は何でも良いんです」
「!?」
「あー…別にメイドの仕事が嫌いという訳じゃないんです。寧ろ気に入ってるんですよ」
「…なんて言えば良いですかね…」
キャロラインはモジモジしている。
「無理には言わなくて良いよ」
「いえ。聞かれたからにはお答えします。ヨシムネ様」
「私は…私はヨシムネ様のお側に居れれば、どんな仕事でもどんな形でも構わないんです」
「私はそれだけで幸せですから」
キャロラインは屈託の無い笑みをヨシムネに向けた。
「!!」
(…ここまで言ってくれた、彼女の思いに対してどう答えれば良いんだろうか?)
(……肚は決まった!)
「ありがとう。キャロライン。君の幸せは僕の側にいる限り、このアリサカ商会第8代会長(予定)である僕が担保する」
「あっ、えっ、ありがとうございます…」
キャロラインは下を向いて赤くなっている。
彼女は食べる事を忘れたかのように赤くなりながら、フォークを回している。
「食べ終わったら、夕飯のおかずでも買って帰ろう、キャロ。君の仕事を少しでも知っておきたんだ」
「…!ええ。お任せください。今度はゆっくりと市場に行きましょう」
「そうだね。まだ時間はあるんだ。幸せな今を楽しもうよ」
「ええ。幸せは楽しまないと損でしたね」
二人は笑顔でオークのカツを口に運んだ。




