帰ろうか、そして(前編)
ウィンターフィールド親子が去っても、キャロラインは俯いたままだった。
ヨシムネはキャロラインの服の袖を引っ張る。
「…これは僕が聞いてはいけない事?」
「…いえ。ですが、ヨシムネ様の耳に入れて良い類のお話ではございません」
「どうか、ご容赦を…」
彼女はヨシムネに対して、深く頭を下げた。
ヨシムネは彼女との間に初めて壁を感じた。
「…わかったよ。無理には聞かない。けど、抱えきれなくなったら何時でも打ち明けて欲しい」
「…ありがとうございます、ご主人様」
キャロラインは僅かに微笑み、ヨシムネに礼を言った。
「先に戻ってて良いよ。父さんと母さんには伝えて置くから」
「ありがとうございます…!」
ヨシムネはケンゾウとエゼルカを探しに行った。
一方ケンゾウは有力者達との挨拶に追われ、疲労困憊していた。
「こりゃ仕事よりキツイ。だから来たく無かったんだ」
「ここまで来て文句言わないの。後もう少しだから頑張って、アナタ」
「ああ…!」
ケンゾウは水を飲み干し、乾いた喉を潤した。
その時、窓の外からヨシムネが手を振っている事にエゼルカが気付いた。
エゼルカは窓まで早足で近づき、窓を開けた。
「どうしたの?ヨシムネ」
「色々あって。キャロラインに先に屋敷へ帰って貰ったんだ」
(母さんなら察してくれるハズ)
「…!そう、分かったわ。このパーティーが終わって、屋敷に帰った後でキャロラインと貴方に事情を聴くわ」
「…偉いわ。流石私達の息子よ!」
エゼルカは満面の笑みで、ヨシムネにグッドポーズを出した。
「…あの女、私を敵に回したわよ」
エゼルカは怒りを込めて呟いた。
(母さんの勘と推察が鋭すぎる…)
「それでヨシムネはどうする?中に入って何か食べる?」
「…とてもそんな気にならないよ、母さん」
「…それもそうね。なら魔導馬車の中で待ってて頂戴」
「わかった!」
ヨシムネは手を振りながら、その場を去って行った。
「本当に良く出来た子だな…」
ケンゾウがエゼルカの肩を軽く叩く。
「ええ。出来過ぎるぐらいよ、あの年齢にしては…」
「でも逆にそれが心配よ」
「そうか…」
「私達も程々にして戻りましょ。キャロラインが心配…」
「そうだな。でもヨシムネが居る限り大丈夫だ」
「ええ…」
2人は心配そうにヨシムネの後ろ姿を見送った。
そして、パーティーは終盤を迎え、アリサカ夫妻はヨシムネが居る魔導馬車へと戻って来た。
「お帰り!母さん!父さん!」
ケンゾウはヨシムネを見るなり、思い切り抱き上げた。
「わっ!?」
「良くぞ従者を守った!!お前は男だ!!」
エゼルカも頷いた。
「さぁ、早く帰ろう!キャロラインが待っている!」
「うん!」
家族3人を乗せた馬車はアリサカ邸へと戻って行った。
家に戻った一家はヨシムネの部屋で、キャロラインとヨシムネから事情を聞く事にした。
そして、ヨシムネから一連の出来事をキャロラインが頷く形で話は進んだ。
「やはり、か…」
ソファーに腰かけたケンゾウは頭を掻いて言った。
「マトモじゃないわね。ウィンターフィールド女史は」
エゼルカは憤懣を露わにした。
「父さんと母さんはキャロラインの兵士時代の事、知っているの?」
「多少はな…けど、それ以上の何かがあった」
キャロラインがビクッとする。
「大丈夫だ。君の過去を詮索しよう等とは思っていない」
「だから、安心してくれ。君の事は家の皆全員で守ると決めた」
「な?ヨシムネ?」
「はい!父さん!」
「申し訳…ございません…私が不甲斐ないばかりに…!」
キャロラインの目から大粒の涙が流れだした。
「良いんだ、キャロライン。君もアリサカ家の一員なんだから」
ヨシムネは持っていたハンカチで、彼女の涙を拭ってやった。
「さ!そうと決まれば飲み直しよ!今つまみを作らせてるわ!」
エゼルカが手をパンッと叩く。
「あの~もしかして…酒って…」
ケンゾウが恐る恐る彼女に尋ねた。
「地下倉庫に仕舞ってある秘蔵の酒ね。アレ出す事にしたから」
「ちょっ…!」
「何か??」
「イエ、ナンデモアリマセン」
「良し!今日は飲むわよ~!!」
エゼルカは楽しそうにケンゾウの背中を叩いた。
飲みてぇ…




