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第二十八話

 シルビアと対面したラルバ男爵は目を丸くして、ただその場で立ち竦む。

 約百年間、ずっと再会を待ち望んでいた人が突然目の前に現れてフリーズしちゃったみたい。

 当然よね、仕方ないわ。 

 でも、その様子に反してシルビアは、キョロキョロと辺りの様子を(うかが)ってる。

 ラルバ男爵と一緒に居た頃は少年だったみたいだし、もしかして気が付いてないのかしら?

 


 「これは……夢か?

  何故、彼女がここにいる?」

 「感動の再会ね。

  説明すると長くなるんだけど、私が彼女を解放したってところかしら」



 「そうか……

  シルビア、私はずっとこの時を待ち望んでいた。

  まずは……お帰りと言っておこう」

 「ただいま?

  君は……誰だ?」



 「私、いや僕だ。

  忘れたのかい? シルビア」

 「あたしは君を知らない」

 「再会するのは約百年ぶりなんでしょ?

  少年だったラルバ男爵も、成長して見た目も変わってるのよ。

  ラルバ男爵はずっとあなたと会える事を待ち望んでいたんだし、そんな言い方ってないんじゃない?」



 「アイラちゃん、本当にあたしはこの人の事を知らない。

  ただ、心当たりはある。

  どうしてラルバと名乗っている?

  自分の名前を言って見ろ。

  あたしがつけてやった名だ」

 「名前……!?

  なまえ……思い出せない……何故なんだ?

  わからないんだ、教えてくれ、シルビア。

  私の本当の名前は……」



 「与えられた名を忘れる眷属などいない。

  君は僕の知らない人だ」

 「そんな……馬鹿な……」

 


 百年も前だから名前を忘れちゃったって事?

 なんだか、腑に落ちないわね。

 ラルバ男爵はすっかり意気消沈って感じだし、このままじゃ流石に可哀想よね。



 「百年も前の事なのよ?

  名前だって忘れちゃうかもしれないじゃない。

  これから二人の絆をもう一度深め合うって事でいいんじゃないかしら?

  そのうち名前も思い出すかもしれないし、シルビアはその名前を憶えているのなら教えてあげればいいじゃない」

 「アイラちゃん、そんな単純な事じゃないの。

  ラルバ男爵と言ったね、君の本体は何処にいる?」



 「私の……本体?」

 「自覚無し……か。

  なら、君なら心当たりくらいはあるんじゃないのかな?

  月人種(カマルテフル)の君なら」

 


 カマルなんとかって何かしら?

 シルビアの視線がネムの方へ向けられているって事は、ネムの事を指しているのよね?

 ネムも急に話を振られて固まっているみたいだったからシルビアに「カマルなんとかって何かしら?」と聞いて見ると、ネムの方が口を開いてくれた。


 

 「アイラ様、月人種(カマルテフル)とは、私の種族の名です。

  シルビア様、確かに私にはもしやと思う人物に心当たりがあります……

  しかし、旦那様とはまるで結びつきません」

 「そうなの?

  まるで結びつかないと言うのならハズレだと思うけど、一応その人物に合わせてもらおうかな?

  居場所は分かる?」



 「はい、ですが……危険です。

  戦闘になる可能性が高いですね」

 「もしその人物があたしの知る人物だったのなら、あたしも戦闘するつもりだから大丈夫。

  あたし一人じゃ勝てない可能性の方が高いけどね。

  でも、あたしの責任だから、あたしがなんとかするつもり」

 「どういう事?

  私にも分かる様に説明してくれないかしら?

  戦闘になるっていうならあたしも手伝うわ」



 「んー……そうだね。

  アイラちゃんを連れて行くつもりは無いけど、知っておいた方がいいかもしれないね」



 ◇



 シルビアの言った事をまとめると、まず眷属となった少年はシルビアの眷属でありながらシルビアの力を越えてしまった。

 その結果不純物であるラルバ男爵と本体で分離し、眷属と言う(かせ)から解き放たれた。

 


 ここまでは別になんら問題ない。

 ただ、シルビアの力を越えたと言う事は、ほぼ確実に人の生き血を吸っていると言う意味に繋がる。



 シルビアは純粋なヴァンパイアではあるものの、ロアナの記憶から月の精霊によって生み出された。

 ロアナの転生前の記憶を生まれながらに持っていた為、シルビア自身は人からではなく、魔獣や動物から吸血していた。

 そう言った理由で、本来のヴァンパイアとしての能力よりもシルビアは劣るらしい。



 この世界唯一のヴァンパイアだったシルビアは、眷属を作り、その眷属が血の覚醒をさせてしまった事への責任を感じているみたい。



 それと、月の精霊がシルビアと同様に、ヴァンパイア以外に二つの種族を生み出している。

 一つはネムの種族である月人種(カマルテフル)

 外見は普通の人間と同様で、子供を作る事も出来る。

 月人種(カマルテフル)の能力は超人的身体能力を持ち、特に視覚、聴覚、嗅覚が飛びぬけている上に、人間の持つ五感以外の感覚でも周囲の状況を察知したり出来る。

 ただ、長寿で能力が高い為、繁殖能力が低く、過去に人間に狩りつくされた為、現存している数は少ない。

 本能的に人間と共存する事を植え付けられている為、復讐心などは無い。



 もう一つの種族は、人狼(ワーウルフ)

 満月の夜に狼人間になる種族だけど、こっちは絶滅してしまっているみたい。

 狼人間の時は物凄く強いみたいだけど、満月の夜以外は普通の人間よりも劣るらしく、正体がばれたり、普通に事故にあってそのまま死んでしまったりして絶滅してしまったらしい。



 「ありがとう。

  よく理解出来たわ。

  それで、シルビア一人で倒しに行くつもりなのかしら?」

 「流石にそれだと勝算は無いと思う。

  だから、ラルバ男爵と君、確か名前はネムだったかな?

  その二人を連れて行けばなんとかなると考えているんだけど」

 「シルビア、私はあなたの為に戦う。

  そして、名を取り戻し、再びあなたの眷属となって共に暮らそう」

 「わかりました、私も参戦致しましょう」



 三人共戦うつもりね。

 でも、どうなのかしら?

 ラルバ男爵の本体なんだから、倒すとまずいんじゃないかしら?

 それに、人の血を吸っているからって悪い人とは限らないわけだし、話し合いから始められればって思うんだけど……



 どちらにしても、私は見届けるべきだと判断する。

 


 「私も着いて行くわ!

  魔法であなた達の補助も出来るし、勝算は高い方がいいでしょ?

  自分の身は自分で守るつもりだし、ダリアと、アモンドにも護衛してもらう。

  構わないかしら?」

 「アイラちゃんがそうしたいのならそれで構わないよ。

  正直、補助系の魔法が使えるのは心強い。

  でも、危険だと感じたらすぐに撤退してね。

  たぶん、戦いになればあたし達も余裕なんてなくなっちゃうから」



 「ええ、心得ているわ。

  それじゃあ、決まりね」

 「うん、それじゃあ準備を整えて、日が昇ってから討伐しに行こう。

  ヴァンパイアは日が昇っているうちは弱体化する。

  あたしは弱体化自体は止められないけど、対策法を知っているし、少しは有利に戦えると思う」



 日焼け止めクリームを塗るとかかしら?

 映画でそんなシーンがあった様な気がするわ。



 それにしても、この辺りで子供が失踪する事件って……

 多分そうなのよね。

 ラルバ男爵の本体が子供達を(さら)ってたってわけね。

 


 明日それを解決しに行く。

 とても良い事だわ。

 でも、なんとなくだけど嫌な感じ……



 妙に浮足立っていると言うか、胸騒ぎがする感じ。

 でもきっと大丈夫。

 小さな不安を抱きつつも、私は明日の為の準備をダリアとアモンドと共に始めた。

お願い。


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