第九話
「アイラ様、先生方がお見えになりました」
「うん! ありがと!」
ダリアに頼んでいた剣の稽古をつけてくれる先生が来てくれたわ!
どんな人なのかしら?
海外の剣の達人って、ハンサムな貴公子とか、映画に出て来るスパルタの戦士みたいなイメージ!
魅力的な人に教えて貰ったら稽古も捗るし、楽しみね!
まずは会ってお話をすると言う事で、応接室へと足を運ぶ。
ダリアにドアをノックして開けて貰い、中へ入るとそこには魅力的な……あら?
カインがいる事にも驚いたけど、剣の先生って女の人なのね。
美人さんで確かに魅力的ではあるんだけど……期待していた人物像とは違うわね。
まあ、男性と女性で骨格とか筋肉のつきかたは違うだろうし、当然といえば当然ね。
「お初にお目に掛かります、アイラ様。 バイシタル王国の剣であるガラティア家当主のシャルール・ガラティアと申します。 剣の稽古をつけるのは私では無く隣の」
「はっ! 剣聖シャルール・ガラティア様より、剣術指南のお役目を仰せつかりましたダリシア・リズティーと申します! よろしくお願いします、アイラ様!」
「うん! こちらこそ、宜しくね!」
「アイラ様、こちらのガラティア閣下は辺境伯の爵位を代々受け継がれている方で、バイシタル王国で最も有名な剣士でもある。 そして王国騎士団ディスクローディア隊隊長のリズティーだ。 彼女は剣術だけでなく軍師としての才能も持ち合わせていて、バイシタル王国の第二の剣とも評される程の才能を持っている人だよ」
「あら、凄い人達なのね! 本当にそんな人達に教えて貰っていいの?」
「問題ありません! バーンアストライド公爵の頼みとあらば、喜んで引き受けましょう!」
「私は愛弟子であるダリシアがどういった指導を行うのかを見に来ただけですので、本日限りになりますが、宜しくお願い致します。 早速ですが、少し体を調べさせて頂いても宜しいですか?」
「体を? いいわよ」
シャルールが私の体を隈なくチェックする。
腕をプニプニしたり、目をじっと見たりしてるけど……これでどんな事がわかるのかしら?
「アイラ様は魔法の方が向いているかと思われますが、剣術の稽古で宜しいのですか?」
「私魔法が使えるの!? 魔法も使ってみたい!」
「私もダリシアも魔法は得意では無いので、魔法を使いたいのであれば別の方に頼んだ方が良いと思われます」
「そうなのね。 それじゃあ剣の稽古をお願いするわ! いざって言う時に身体が動かなきゃ魔法が使えても意味がないと思うし」
「とても良いお心構えです。 それでは、表に出て稽古をつけましょう。 宜しいですか?」
「いいわよ!」
「アイラ様頑張って! 僕も応援しながら眺めているよ」
屋敷の外に出ると本物のレイピアを持たされてゾッとした。
こんなので切ったり突いたりするの?
凄く怖いんだけど……それにこれ、かなり重いわ。
軽く振って見たけど、これを剣道の要領で振るのはナンセンスだわ。
だって重心が持ち手の上にある柄の部分にある感じがするし……初心者には扱いずらい武器ね。
剣道か……懐かしい。
なんとなく男の子が好きだとは思っていたけど、確信したのが全国大会の決勝戦だったわね。
初めて剣道で負けて、悔しいって思いより、もっとこの人の事が知りたいと思ったのがきっかけだった。
結局振られちゃったけど、今思うとあれもいい思い出……
そんな事より、今は目の前の事に集中しなきゃ。
持っているレイピアは竹刀より長く、重心が持ち手に近いところにある。
切っ先を相手の急所に刺す、鋭利に尖っていて切れ味が鋭いから相手の肌を撫でるだけでも効果はあるわね。
フェンシングみたいなイメージで戦うのが理想かしら?
いや、横の動きも取り入れた方が良さそう……
「アイラ様! このダリシアを殺すつもりで思い切り攻撃して来て下さい! アイラ様がどの様なスタイルが得意なのかを見定めて行きます!」
「わかったわ! それじゃあ本気で当てに行くわね!」
息を整えて集中する……片手で持つと腕が振るえる程重いし、それだけで筋肉に負担が掛かってしまう。
切っ先が僅かに掠る程度の間合いまでは、剣を引き、胸の辺りで立てて持っていた方が良い。
間合いに入った。
手首に力を入れると重心がブレる……ゆっくりと寝かせる様に相手に切っ先を向けて、集中する。
殆ど剣を動かさずに、横に重心を傾けただけで、ダリシアもそれに合わせて重心が移動したのを感じる。
相当な実力の持ち主だと言う事が分かるわ。
不慣れな剣だし、防衛に徹しているダリシアには全く隙が無い。
それなら、隙を作ればいいだけの事よ!
思い切り踏み込んで目を狙って剣を突き出す!
躱されるのは想定内!
そして、私から見て左に躱す事は想定通り!
少しずるいけど、反撃をしてこない事も織り込み済みで、背を向けて左へクルリと回りながら踏み込み、立てていた剣を掻い潜って足を狙って振り上げる!
更にそのまま大上段の構えから渾身の一撃を叩き込む!
痛ったあああい!
剣を振る前にダリシアが思い切り私の剣を弾き飛ばしちゃったから指がもげそうになったわ!
ていうかこれ……指の骨が折れているわね……
あんまり痛いからその場で蹲ってると、カインが透明な液体をかけて治してくれた。
相変わらず不思議な薬ね。
これがポーションって奴なのかしら?
「リズティー、君は子供相手に本気で剣を振るうのか!」
「も……申し訳ございません!」
「いや、ダリシアの判断は正しい。 あそこで剣を弾いて無ければ斬られていた。 特に最後の一撃は魔力の込められた危険な一撃。 私ですら寒気を覚えたのだから、ダリシアが加減できなかったのも仕方の無い事だ。 許せ」
「アイラ様は初めて剣を握ったのですよ?」
「体を調べた時に剣を握った事はおろか、武器を持ったことすらない事は分かっている。 そんな子供の剣が達人の域に達しているとは驚きだ」
「それ程の才能をアイラ様が?」
「センスは相当良いだろう、だが、明らかに才能と言う話しでは説明が付かないレベルの駆け引きがあった。 そもそもダリシアと対峙した瞬間から別人の様に見えた。 アイラ様は武器を持ったことが無いにも関わらず、明らかに実践を経験している者の気配を感じた。 どういう事なのか説明して頂けますか?」
あら、やらかしちゃったかしら?
剣道をやっていたから本気でって言われて火がついちゃったのよね。
転生した事は言えないし、とりあえず誤魔化みようかしら。
「レイピアを持った時に、刀身が長く、鋭い刃は身を撫でるだけでも効果があると思ったわ! それで使い方を考えたの! 戦い方をシミュレートして、ダリシアとの実力差を考えた上で反撃が来ないと想定したら、あの攻撃になっただけよ? 最後の一撃は必ず当ててやろうって思ってたから力が入っちゃっただけで、魔力がどうのこうのって言うのは覚えがないわ」
「私の目は節穴ではありません。 アイラ様にはもう一度打ち合って貰います。 今度は私が相手を致しましょう。 先程と同じように本気でかかってきて下さい」
えぇ……なんか大変な事になっちゃたかしら?
かといって加減なんてしても、簡単に見抜かれちゃうと思うし、本気でぶつかるしか無いわね!
それなら……
「カイン、竹刀はあるかしら?」
「しない……とは、何のことでしょうか?」
「それなら木刀でもいいわ」
「ぼくとう?」
そうね、刀が無いんだから木刀や竹刀って言っても伝わるわけないわよね。
カインにこんなのが良いと分かりやすく伝えて、いい感じの木剣を持ってきてくれた。
うん、竹刀に使い勝手が似ていて悪く無い感じ。
少し軽くて脆そうな所が心配だけど、これでいいわ。
シャルールと向かい合い、間合いを計る。
剣先を動かしながら隙を窺うけどやっぱり隙なんて見せてくれないわね。
先程と同じく私は隙を作る為にシャルールの懐へと飛びこんだ!
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