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62 垣間見える闇大将軍の力量




 キーン……  キーン……


  キーン……  キーン……




『それ』が現れた時、最初に聖戦連合軍の将兵の最初の反応は

戸惑いだった。


突如その上空に出現した太陽の光を反射し輝く巨大なピラミッド。

だがそれが紫色の魔力弾を放ちあのガープ侵略基地のメインタワー

を粉砕した時、疑問は歓喜に変わる。それが自分達を援護してくれる

超魔法文明の兵器だと理解したからだ。


光るピラミッドは天空から更に攻撃を加えあの絶望的に強大な火力で

連合軍を阻止していたガープ基地の堡塁を1つ、いとも簡単に消滅させ

て見せる。


そのまま超兵器はガープ侵略基地から怪物軍団を率いて出現した

ガープの大ボスと思われる凄まじい大怪物との対決へと進むのだった。



「精強なる連合軍よ!!ガープの首領は我等が超兵器ニル・ピラムスが

引き受けた!!その隙に城壁の砕けしガープ基地を攻め滅ぼされよ!!」



緑玉の賢人パオロが叫びそれに呼応するように連合軍が攻撃を決断する。



ゼノス聖堂騎士団が魔力障壁を展開したまま前進を開始する。ガープ基地側

の城門を守る正面の防御火力は左側堡塁の側面射撃だけとなり防御体制を整え

れば突破可能と思われたのだ。


大アルガン帝国軍も硬化の魔法粉塵を振り撒き重装甲に大盾で身を固めた

重装歩兵を先頭に進みガープ基地に迫った。


ポラ連邦軍は頭の無い陸亀のような四足の小ゴーレム『ターク』を使っていた。

タークの背中上には幅1.8メートルで縦2メートルの盾が取り付けられてる。


盾は頑丈な合板製で表には2センチ厚の鋼鉄板が取り付けられており表側には

防御の魔法を短時間発動する魔法陣、裏側にはステーレン総統の肖像画と党の

スローガンを書いたポスターが貼られていた。


タークの後部には足場があり機動戦を行う時は兵士達が乗り込み一緒に突撃する

タークデサントなる戦法を使う事もあるが防御前進である今作戦ではタークを

ずらりと並べ動く防壁として先頭部隊を防護しゆっくり進んでいる。


主攻撃軸が攻撃開始したのに合わせ副攻撃軸のロガー獣人族連合軍とクレギオン

公国軍が前進を始めた。だが傭兵部隊は様子見のように動きが無い。


主攻撃軸に参加している高レベル戦士団は前進し戦いに参加していたが組織的な

防御は成されず各個人が己の技量だけで対応している状況だった。



モコモコの毛玉が稲妻のような動きで左側堡塁から雨あられと撃ち出される

機関銃弾を回避していた。


クル!!  クル!!  クル!!  クル!! 

ダダン!! ダダン!! ダダン!! ダダダダン!!


「何と凄まじい射撃なのだ?!回避だけで手一杯ではないか?なるほど

これは以前に戦っていたガープ軍とは別物だな。あれは偽者だという説

は誠かも知れぬ…」


チワワの仔犬そっくりのコボル族の剣豪チュクワはその手応えに

真実の一端に気が付き始めていた。だが銃弾を回避出来る反応速度

を持つコボル族の彼以外はそれに気が付く事も出来ないまま次々と

倒れて行く。火力が落ちたといっても適切な防御手段を講じられぬ

個人の武勇では近代火力戦に抗するのは困難であった。



彼等の希望は連合軍主力が破壊された堡塁の突破口から

攻め入るか超兵器がガープ軍の親玉を仕留める事だけ。


死に物狂いで戦いながら彼等は固唾を呑んで見守っていた。






空中に静止する輝くピラミッドの頂上付近から集束した魔力の

奔流が連続して地上に向け撃ち込まれる。


並みの魔道砲より強力な攻撃。狙われたのはガープ基地城門前に

出現したガープ大幹部の闇大将軍とガープ戦闘部隊。


襲い来るピラミッドから放たれた攻撃、光エネルギーで形成された

魔力の槍のようなそれらを闇大将軍は亜空間制御器官を使った科学

防御でいとも簡単に振り払う。




「ガープの首魁が現れたか。どうやら最初から我ら、いや勇者ゼファーを

狙った罠であったか?ククッ、だが逆に奴を仕留める好機となったがな。」




宙に浮くピラミッド、究極兵器ニル・ピラムスの制御室で黄玉の賢人シスは

口端を吊り上げ敵意と悪意を剥き出しにする。



 キーン……  キーン……


  キーン……  キーン……



謎の駆動音をたてながらも回転を停止させ威圧するニル・ピラムス。

その嵐の前の静けさを軽く受け流しながら闇大将軍はカノンタートルに

基地内部の防衛に付くよう指令する。


「俺の予測じゃお客さんが基地中枢部へ不意打ちして来るタイミングはここだ。

カノンタートル、第二小隊と共に中央の迎撃配置に付いてくれ。」


「了解しました。将軍の武運を祈ってまっせ。」


そう言って城門の中に姿を消すカノンタートルと第二小隊の戦闘員。



一方のニル・ピラムスでは…


「フム、この一連の戦役でのエネルギー消費を50%未満で抑える予定だが

ガープの首魁をここで滅するならばあと10%は使っても良かろう。ガープ

本拠地と他の幹部を滅ぼすのにラーテが持つ『クアック・メテオロア』を

主軸に使う方針でやれば行ける筈だ。」


細かくエネルギー消費を計算しながらシスは『完全破砕』の発射体制を

取るべく機能を操作し、ニル・ピラムスの角に再び紫色の光点が灯った。



完全破砕


物質操作系の魔法の究極呪文である『破砕』。全ての物体を最小単位まで

細かく粉々に粉砕して分解、対象を徹底的に消滅させる魔法である。


科学技術が未発達な為に用語は存在しなかったが原子や分子の単位で

分解してしまうという死神教授の必殺技『分子結合崩壊』と同様の効果

を持つ魔法といえる。


恐ろしい事にこれはどれほど高い魔力を持つ強力な存在だろうと構わず

消滅させてしまう力がある。それこそ魔力の微小な石コロと同じように。


つまり魔力ある強大な存在から魔力皆無のガープまで等しく消滅させる

呪文。欠点としては魔法陣を展開する必要があり、やたらと長い詠唱を

間違えず唱えねばならぬ高等呪文である事だった。


だが究極兵器ニル・ピラムスは『破砕』を高エネルギーの魔力弾、つまり

飛び道具として自由自在に行使する『完全破砕』を主武装の1つにしていた。


恐ろしい武器だが魔力弾である以上、魔力障壁や対抗魔法で打ち消す事を

試みる事は可能なのだが対抗魔法の場合は対象の魔力エネルギーの倍の力

を消費せねばならぬ。現実問題として個人で対抗などする物ではなく逃げるか

もう1台のニル・ピラムスを用意して対抗するしかない。


あるいは大魔王クィラ並みの超魔力を保持しているか…




「これで終わりだ!!死ぬがいい!!」



黄玉の賢人シスが絶叫しニル・ピラムスから紫色の魔力弾が放たれた!!


大魔王でも無い限り防ぎ得ない完全破砕の魔力弾が不敵に笑う闇大将軍に

向かって直進して行く。それはとても回避出来る速度ではなかった……







一方、ガープ基地上空に数十騎の飛翔する影。



オリハルコン級冒険者パーティー『君臨者』と彼等に指揮された

高位冒険者達、約66名が飛行能力を持つ者を除いて50頭のよく

訓練を受けたペガサスに乗り集結していた。


君臨者のリーダーであるエルドが最高級の魔石が填め込まれたタリスマンを

掲げ存分に魔力の供給を受けながら魔力障壁を展開した。


魔力障壁には幾つもの種類があり魔法攻撃を遮蔽するタイプや火炎ブレスや

電撃などエネルギー攻撃を防ぐ物などがある。彼が展開したのはガープの攻

撃手段を考慮しての物理防御の障壁だった。


「いざ行かん!!大いなる富と名声を我らの手に!!」


太陽を背に急降下でガープ基地に奇襲をかける冒険者達。狙うは基部を残して

いたガープ基地メインタワー跡だ。幾つか発生した火災なども消え中枢機能は

未だに残存している事は確実だった。



ちなみに高価なタリスマンやペガサスなど気前良く用意してくれたのは

ゼノス神聖教会であり作戦成功時には全て貰える事になっている。



ダダダダッ


メインタワー内部に着地するや武器を構えペガサス達を引き返らせる

冒険者達。呼べばペガサスはすぐに来る。ここに残して死なれては困る。

生き残らせれば財産だ。


露天天井となったメインタワーの広大なロビーで冒険者達が体制を

整えるのと入り口のゲートが開きカノンタートルが指揮する防衛部隊

が突入して来るのと同時だった。


「正面戦闘が始まったタイミングで少数精鋭での本陣奇襲。教科書通り

の襲撃でんな。こんな形で君臨者の方と再会とは少し残念ですわ。」


「ふむ、不意を突くのは失敗でしたかな?」


「空中艦や魔法がある世界で攻城戦や。上空からの攻撃はあって当たり前

ですやろ?まあタワー最上部の対空兵器が消えてしもうたんで迎撃第一段

階はすっ飛ばしての出動は計算外やけどな。」


対峙する両者の距離は50m未満。すかさずエルドが対エネルギー障壁に

障壁を張り直し他パーティーの魔術師が対物理の障壁を展開する。


そこにカノンタートルが最も効果的と思われる先制攻撃を行った。


「冒険者の皆さん。ここで降参してくれたら身の安全と約束されてる

報酬の3倍の金額を即金で支払いまっせ。ノーリスクでの大儲けや。

どうですやろ?悪い話やないと思いますが?」



一瞬の沈黙。だが…


「残念ですが我々は冒険者なのでね。少々のリスクを乗り越えて大きな

獲物を獲得します。貴方達を滅ぼした後、ガープの財を自由に略奪して

良い事になってましてね。3倍の報酬?我々はそれ以上のガープの全財

産を頂戴した上でゼノス教会から報酬を頂くので悪しからず。」


「……残念ですなぁ。…ワレら話し聞く気ぃ無いんやったら消えてくれるか?」


言葉を切ると同時に背部のビーム砲身を冒険者部隊に向けるとカノンタートルは

問答無用で熱線攻撃を叩き付ける!温厚な性格の彼だが堂々と殺戮と略奪を宣言

するような相手に容赦するほど甘くは無い。


ジュビュアアア!!!……


一点に絞って反陽子を内包するプロトンビームを撃ち出す砲から反陽子を

除いた高プラズマを生体レンズで拡散し熱線ビームのシャワーにして正面

へと放つカノンタートルの汎用攻撃。ゾンビ殲滅戦でも使った攻撃であり

プロトンビームと比べれば威力は小さいといえるが決して舐められるモノ

ではない。


シャワーのように無数に撃ち出される細い熱線は瞬間温度が数万度に

達する破滅的な高温なのである。実際、同行している戦闘員のバトル

スーツは輻射熱に対応する物となっており周囲が熱に強いメインタワー

内部でなければ火災が発生していただろう。



エネルギー対応の魔力障壁で熱線攻撃を受け止めているエルドの

頬に冷や汗が流れた。カノンタートルの攻撃の熱量が障壁に与える

負荷が予想以上だったのだ。彼はこの中で最も強力な魔術師であり

その障壁の性能もピカ一だ。彼はタリスマンからの魔力補給を継続

しながら障壁を更に強化し、


「ここが踏ん張り所です!!あれほどの攻撃、エネルギーが持つはずが

ありません。奴の攻撃が途切れるまで耐えチャンスが来たら一気に距離を

詰め決着を着けますよ!!」


エルドは味方と自分を鼓舞するように叫ぶのだった。







攻城戦とは同時多発的に戦闘が展開して行くものだ。

その中でこの戦いのキャスティングボードを握る戦闘に

ある驚くべき進展があった。



「……馬鹿な…そんな馬鹿なぁぁ!!!」


黄玉の賢人シスは信じられないものを目撃し、呻き声から

絶叫へと声を枯らして叫ぶ。


ニル・ピラムスから放たれた完全破砕の魔力弾はそれを遥かに凌駕する

超強力なエネルギー渦動が出現して紫色の魔力弾を包み込み一瞬で握り

潰し消滅させてしまったのだ。



「どれほど特殊で強力な作用でもそれを成すエネルギーがこの空間に

存在し向かって来るのなら俺は迎撃可能なんでな。それじゃ今度は俺が

仕掛けさせてもらう番だぜ。防げる物なら防いでみな。」


不敵な構えで闇大将軍は言い放つとニル・ピラムスを仕留める攻撃手段

を思案する。未知の相手だが最初にカノンタートルとの戦闘をきちんと

観察してあった闇大将軍には腹案がある。


(外からの攻撃はやり辛い。となるとアレ・・だな。周囲の影響を

考え出力は最小に絞っておくか…)


闇大将軍は必要も無いのに両手と背中の触椀を広げ大仰なポーズを取る。

技を使う事を行為で示し連合軍兵士の士気を挫く効果を目論んでの事だ。


よりによってバイクに乗って戦う某特撮ヒーローの決めポーズを取ると

究極兵器ニル・ピラムスに照準を合わせる。


生体レーダーと連動した空間認識照準を目視できる範囲ならば闇大将軍は

確実に捉える事が可能であり、ポーズを決め終わると同時にニル・ピラムスの

存在する座標に将軍の破壊技『グラビティ・ショッカー』を使用した。




指定した座標(ニル・ピラムス内部)に直径1ミクロンで質量が

ユーラシア大陸と同等の重さを持つ擬似ブラックホールが発生。



次の瞬間にブラックホールを強制蒸発させ限定された周囲の空間に

破滅的な威力の特殊な重力震が炸裂した!!



ブラックホール蒸発の膨大なエネルギーが上乗せされた瞬間的な重力変動

による重力震は限定範囲内の空間や次元まで引き裂く威力を発揮。いかな

究極兵器ニル・ピラムスといえど内側にここまでの破壊振動を加えられては

成す術は無かった。



ガッシャアアアアァァァァァァァンンンンン!!!



まるで特大のシャンデリアが砕けるような音を響かせ究極兵器ニル・ピラムスは

崩壊した。砕けた破片は太陽光を乱反射し7色に輝いて幻想的な美しさを見せる。


黄玉の賢人シスは何も言う事も出来ず消滅した。その肉体も魂魄石も。


中心から直径30メートルの限定空間を重力震で素粒子に分解され

その周囲に純粋な衝撃波が破壊を伝播したのだ。シスが居たのは

その中心付近だったのである。




「…威力を弱くし過ぎたかな?破片やゴミが残っちまったなぁ。」



構えを解いて気楽な事を言う闇大将軍。彼を安堵させていたのは

聖戦連合の将兵が後退を始めた事であった。



彼等の希望が文字通り打ち砕かれ光る破片となって降り注ぐ事態に

ゼノス聖堂騎士団すら士気が挫け各軍が引き下がり始めたのだ。


(これで一般兵を虐殺する事態を回避出来そうだ…)


安堵する闇大将軍と対照的にこの事態に危機感を持つ者が

連合軍の傍らに出現した。



「連合軍将兵よ!!いまだ希望は潰えておらぬ!!まだ超魔法文明の

兵器は残っているのだ!まだ負けた訳ではない。戦いを放棄してはならん!」


赤玉の賢人ラーテは手に持った水晶の錫杖のような物を掲げ叫ぶが連合軍の

退却を押し留められない。シスとの連絡も途絶し余裕を失っている今、彼は

傍らに立つ緑玉の賢人パオロと頷きあう。


「やむお得ぬ。『勇気の真価』を発動するぞ。下人共が攻勢に転じたら

『クアック・メテオロア』を使い敵防衛施設を粉砕する!」



ラーテは指をパチンと鳴らす。それだけで空中に赤色の魔法陣が描き出された。

既に術式は込められており古代魔法言語のワード1つでラーテの行使しようと

している魔術は発動する。彼は特に悩む事も無く即座に魔法を発動した。


「$$☆#☆$$%」


発動と同時に赤い魔法陣は薄く大きく蜃気楼のように広がり全てを包むほど

拡散して消えた。



そして…



聖戦連合軍に絶叫を伴う大混乱が発生し、戦いの趨勢は誰も予測し得なかった

異常事態へと突入してゆく事となる。敵味方を問わず全ての者を震撼させて。





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