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クロスオーバー作書籍化御礼SS セイラとレオンの新婚旅行

isのずっと先のお話

ヒロインはゲームの開始を回避したい 本日発売です!よろしくお願いします♪

挿絵(By みてみん)

「獣人の国?」

「そう、俺も行ったのは一回きりだが__まぁ、見た目で忌避されがちだが元々人より目が良かったり力持ちだったりするわけだから、生産性は高い。適切に扱えればの話だが__」

“獣人を”ではない、“獣人の能力を“だ。

「国民が全員、獣人なんですの?」

「いや、まぁ殆どが獣人かそのハーフだけど鎖国してるわけじゃないから人間もいる。殆どが出入りの商人や旅行者で、定住してるのは僅かだが」

「忌避されることもあるのに、旅行者が多いんですか?」

「ああ。バフォート王国というのだけど、国全体が名所といわれるくらい風光明媚な景色が多いので旅行先としては好まれる。まぁもう一つは…_いやなんでもない」

じっと真っ直ぐな瞳で自分を見上げるセイラに対しごにょごにょと言葉を濁したレオンをユリウスは呆れたようにジトッと睨み、「……この変態が」と誰にも聞こえないほど小さな声で吐き捨てた。


「まあようこそお越し下さいました、レオンハルト殿下、並びにセイラ妃殿下」

バフォートの王妃だという女性に手放しの歓迎を受け、隣に並ぶ国王もにこにこと人当たり良く微笑んでいる。この国の王族も獣人だそうだが、どちらも耳や尻尾は見当たらない。

「じゃあ済まないがセイラ、私は国王陛下と少し話があるから先に部屋に行っててくれるかい?」

余所行きの声で話すレオンに内心で苦笑しながら

「わかりました」

と答え踵を返し、部屋へと向かうが

先導する女官が

「こちらを通って行かれると庭園が見渡せます。花が見頃なんですよ、少し遠回りになりますが……」

「良いかしらユリウス?」

「ええ。城内ですし問題ないでしょう」

そうして案内された庭園は本当に見事で、私は思わず声をあげた。

「まぁ……!」

花も素晴らしいが光の差し込み具合がまた見事でまさに光の庭園といえた。

私の感嘆に にっこりと頷いた女官は

「よろしければお茶の用意をさせましょうか?」

「まぁ、よろしいのですか?」

「もちろんでございます」

と近くに控えていたメイドに合図したちまち庭園がお茶会の場に変わった。

「まだ陽は高うございます、ごゆっくりお過ごしくださいませ」

「ありがとう」

女官が下がると

「ユリウス、貴方もどう?」

「私は任務中ですので」

「お酒を勧めてるわけじゃないわよ?」

「わかってますがレオン殿下がいらした時俺が同席してたらどうなります?」

「特にどうもしないと思うけど……」

「それ、セイラ様に対してだけですからね?」

ユリウスがぼやくのと共に

ザッ…!と茂みをかき分ける音が響き、次いで年は十歳前後だろうか?茶色い瞳と髪とーー、犬耳の少年が目の前に踊り出て来た。

「「っ?!」」

瞬時に戦闘態勢に入っていたユリウスと私が驚愕した瞳をつき合わせていると、

「……誰だお前」

当の子供の方から言葉を発してきた。

「お前こそ誰だ?人にものを尋ねる時はまず自分から名乗れって教わらなかったか?」

「僕の家でどうしようが勝手だろう?!」

少年は耳をぴこぴこさせながら怒鳴る。

「いいや?自分の家なら尚更だ、招いた客人にまともな挨拶一つ出来ない子供ならすっこんでいろ」

「な……!」

少年の尻尾が逆立つ。

こんな状況でなんだが、うん触りたい。

耳の形からして犬っぽい。

自分の家って事は王子様、てことはここの王族一家って犬の獣人?もしくは狼?


「お姉ちゃんがレジュールのお姫様?」

え?

「レジュールから王子様とお姫様が来るって父さまと母さまが言ってた、お姉ちゃんが、そう?」

まぁ、確かにレオンは王子であるしその妃である自分もお姫様だと言えなくもないが。

「……えぇ、そうよ」

「そっか、外国から来た偉い人って大体僕の尻尾見るとイヤそうな顔するけどお姉ちゃんはしないんだね。僕、まだ上手く尻尾を隠せないから姿見せないようにしてるんだ」

「「……!……」」

ユリウスと私は顔を見合わせる。

「それはその大人の方が礼儀知らずだわ、気にすることなくてよ?そうだわ、良かったら一緒にお茶はいかが?今頂くところなの」

「え……いいの?」

尻尾の感じからして戸惑ってはいても嫌がってはいないようなので、

「お菓子もあるわ」

もうひと押しすると、

「うんっ!」

尻尾がぶんぶんと振り切れた。




その夜部屋に戻ってきたレオンにその話をすると、

「そうか、難しい年頃と聞くが仲良くなれてよかった__流石セイラだな」

「?流石…?」

何が?

「……いいや、相変わらずだな君は」

苦笑したレオンはそのままセイラを抱きしめて夜を過ごした。


翌朝、国王夫妻と共にした朝食の席で思わぬ闖入者があった。

「父上!母上!お願いがあります!」

「まぁ……」

「サティアス!客人の前だぞ!弁えなさい!「そのお客様のことでお願いがあるのです!」……何?」

「レジェンディアからいらしたお姫さまを、僕のお妃にして下さい!」

__はい?

その場の全員の注目を浴びて、私は固まった。


「あー…うむ。場所を移そう」

国王陛下の懸命な判断により、別室に移動して状況整理が行われた。

「何故そんなことを思ったのかね?」

という国王の問いに

「このお姫様は今までのお客人と違って僕の耳や尻尾に嫌そうな顔をしません。それに、あの…、」

「何だ?はっきり言いなさい」

「か、可愛い、と言っていただきました!ですから、その……」

尻尾が所在なさげに揺れている。

うぅ、触りたい……!指先がわきわきしてしまいそうなのを堪えていると、

「セイラ?」

レオンの窘める声が入り途端に正気に返る。

「も、申し訳ありません……!」

ヤバい、バレてる?!

「謝らなくて良いが。サティアス王子、残念だけれどこのお姫様を君の妃にするのは無理だ」

「何故ですか?彼女とならきっと良い番いになれます!」

つ、番い……いやそっか獣人だもんね。

「彼女は私の番いだからだ」

す、と声も姿勢も落としたレオンにビク!とサティアスの目と尻尾が反応する。レオン様、子供が怖がってます!急にマジにならないで?!

「え……?」

泣きそうな子供の瞳が私に移る。

「私達の説明が不味かったわね」

「うむ。どうやらそのようだ」

「レジェンディアから来たこの王子様とお姫様はねサティアス、兄妹じゃないのよ」

国王夫妻の宥める声に、レオンが

「そう、このお姫様はレジェンディア王太子である私の妃だからだよ」

と割って入った。

「えっ?でもお姉ちゃん、年いくつ?」

「十五ですが……」

「王太子殿下は?」

「二十歳だ、似合いだろう?」

「僕は九才だよ!お姉ちゃんが二十歳になる頃には成人してる!」

「だから何だっ?!」

ここに来てレオンがキレた。

「残念ながらお前が十四になる頃には子供の一人や二人や三人出来ている、諦めろ」

「…………」

場を沈黙が支配した。




「子供の一人や二人や三人って……!子供の前でなんてこと言うんですかっ?!」

戻った部屋で顔を真っ赤にしたセイラが詰め寄ると、

「本当のことだろう、私達は夫婦だし、ただ単に君がまだ学生だから出来ないようにしてるだけでやることはやっているのだから」

「それ以上は言わないで下さいっ!」

耳を塞いでセイラが叫ぶ。

部屋にはユリウスも、お城のメイドさん達だっているのだ、これ以上セクハラ発言はやめてほしい。

「第一、番い云々の言葉が出てくる辺り彼はもう子供ではないよセイラ」

「〜〜とにかくっ!レオン様は外交に専念して下さいっ!私はユリウスに付いてもらって町をみてまわりますのでっ!」


翌日、とんでもない発言をかましたレオンにそう言い置いて私は町に来ていた。

「あ リズにお土産買ってかなきゃ」

どんなものがいいかな?

キョロキョロと視線を移す私にユリウスは苦笑し、

「まるで初めて巣の外へ出た猫のようですね__先程のレオン様はしょげた犬みたいでしたが」

「レオン様はあまり犬っぽくはないと思うけど……?」

「まあ獰猛な大型犬ではありますが」

しょげた獰猛な大型犬ってなんだ、と突っ込みそうになったが次に目に入ったものに視線が釘付けになる。

「ユリウス、あれは……?」

すれ違う旅行者たちが猫耳を付けている……いや猫だけではない、犬耳もあればうさぎもあるしよくよく見れば小さなリスのようなものを付けている人もいる。中には尻尾まで付けて陽気にはしゃいでる人も。

「今日、お祭りか何かなの……?」

「いえ、これはここの観光産業のひとつなんですよ。異国で違う自分になって過ごしてみようという……周りも皆獣人なので奇異な目で見られることもないですしね」

「なるほど……」

日本でも某テーマパーク内やハロウィン中のイベント会場以外であの格好で町歩きは厳しいし、この世界でしかも貴族なら余計難しいだろう。

「滞在中のみの貸し出しもありますがお土産として購入も可能だそうですよ、覗いてみますか?」

「そうね、面白そう」

覗いて入った店で試しに茶トラの耳を付けて姿見の前に立ってみる。

しっくりこなかったので黒猫に変えてみるが、なんか髪の色と同化し過ぎて変化にかけるような……?

「う〜ん…これ、どうなのかしらユリウス?私に猫は似合わないかしら?」

猫が一番無難な気がしたのだが、他の動物に変えてみるべきか……

「お客様、お嬢様のような黒髪の方にはこちらは如何でしょうか?」

店員が差し出してきたのは同じく黒猫だったが先程の全面が黒いのと違い、耳の内側だけ真っ白な毛で覆われているものだ。

「わ 可愛い!」

勧められるまま付けてみるとさっきより耳が目立って良い感じになる。

「どうかしらユリウス?」

「大変良くお似合いですが……、殿下の前ではやらない方がいいかと」

「レオン様はこういうのは嫌いかしら?」

「いえ、そうではなく」

ユリウスは言葉に詰まった。

ユリウスは知っている、レオンがこの国にセイラを連れてきたのはコレが目的でもある事を。セイラ妃殿下は猫目がちなので良く似合う…、というか小柄で色白で更に体型に見合わず胸が大き…、いやとにかくそこへ持って15才で人妻であるものだからそのアンバランスな色気たるや凄まじい。

来る前にレオンが

「セイラならやはり黒…、いや白でも良いか?あの黒髪には逆に映えるーーがしかしそうすると尻尾がーーいや尻尾なら兎の方が…白ウサギもアリか?いやウサギはちょっと刺激が強すぎる、俺以外に見せるのはナシだからやるなら夜着で…」

とかブツブツ悩んでいたのを知っているユリウスは

「セイラ妃殿下の御身の安全のためここだけで楽しむ事をお勧めします」

とだけ言った。

「………」

そのユリウスの態度になんとなく、あくまでなんとなく、その意味を察したセイラは賢明にも明言と購入を避け、本日数時間のみの貸し出しで楽しむことにした。




因みに、


その夜さりげなく部屋で猫耳を勧めてくるレオンに

「付けませんよ?」

と断固拒否を決め込んだセイラは知らない。

白猫と黒猫どころか茶トラの猫耳と尻尾、果ては白ウサギや茶のロップイヤータイプまで誂え買い求めたレオンがそれをセイラに付けさせるタイミングと口実を虎視眈々と狙っている事も、レオンが自分の誕生日だの他国から下賜されただの と理由をつけて、やがて付けさせられる日が来る事も。














この先、書いたらたぶんR18(なので書かない)。

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