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10話 ポンコツ始動‼‼

※ライナス視点続きです!

ブワァッと激しい熱風がきて俺は我に返った。

「ヒェェェ‼ラ、ライナス殿‼これは……大丈夫なのか⁉」


一応王族なのでビビる殿下を背中に隠し、焼け野原を見るとそこでは親父が更に焼け野原を広げている。


いや、単純に姫さんが逃げ回っているせいで瑞々しかった芝生が被害を受けている。


姫さんはいつの間にかオスカー小隊長にも勝ち、今度は親父とやり合っていた。



元々マーティン家は貴族だったらしい。


そのおかげもありこうして他者を圧倒するほどの魔力があるのだが、2代前の当主が騎士になれず、騎士の家系なのに爵位だけを持ち貴族を名乗ることは出来ないとして勝手に爵位を返上したせいで現在は平民となっている。


それでも、親父は家系の中でも稀にみるほどに魔力が多い。

「いやぁ、今日はいつにもまして熱いですよ!殿下大丈夫ですか?」


「ぼ、僕より彼女は大丈夫なのか?」

「あぁ!大丈夫ですよ!何たって弟子ですから‼」



親父を中心として燃え盛る炎の周辺を姫さんは走りまわり、途中急に方向転換をすると炎の中に突っ込んだ。


「のわぁ‼ちょっあれ‼どうみても燃えるだろ‼」

「大丈夫ですってあそこなら」


炎の中に突っ込んだ姫さんは何事も無かったかのように、親父の元に駆け、剣を振りぬく。


親父は炎の量は出せるが火力と操作性がイマイチなのだ。

だから火力の弱いところを見つければ、炎の中に突っ込むことも出来る。

理屈では出来るが、実際に出来る者は少ないが……。



炎の中心で2人は斬り合う。

姫さんが幾度となく斬りかかるがそれを親父は力で打ち伏せる。


「なんか、彼女動きが鈍くないか?」

「あー疲れもありますけど、あの中って何か息苦しくて動きにくいんですよね。慣れてる親父は良いけど、凄ぇ体が重く感じるんです」


そうこうしているとキィンと軽い音が響き、姫さんの剣が弾き飛ばされた。

それでも親父は炎の檻を解かずに、姫さんに向かって斬りかかる。


姫さんは小型のナイフを取り出して、すんでのところでいなすが、力が強すぎるのか流しきれていない。

二度目の打ち合いでナイフも弾き飛ばされるが、すぐさま親父の懐に飛び込み顎を蹴り上げようとした……が、紙一重で避けられ代わりに腹を蹴られて炎の外まで吹っ飛ばされた。


何度もバウンドし、地面に転がった姫さんに親父はさらに上に弾いていた姫さんのナイフを掴み、投げつけ走り出す。


姫さんがナイフを避けるために横に跳ぶと読んでいた親父は、横から斬りつけにかかり、首に剣を寸止めした。



「あー――もうちょっとで勝てましたのに‼‼‼降参でしてよ‼」


「どこがもうちょっとだ!炎の中に入ってからの動きが悪すぎる‼もっと早く!私に力ではなく速さで勝負するなら倍は早くないと駄目だと言っているだろ‼‼」


「うぅ……はい、分かりましたわ」


親父が姫さんの手を取り、軽く立たせる。


「彼女が負けたということは次は騎士団長と誰かが戦うのか?」

「いえ、時間も遅いですしそろそろお開きです」

「……そうか……」


「?親父が送るんで帰りの心配はしなくてもいいですよ?」


「あ、いやそうじゃなくて……」


殿下はしばらく赤い顔で姫さんを見つめた後、親父に付き添ってトボトボこちらに歩いて来る姫さんに走り寄った。



「あ、の……セイラン嬢……その……」

「あぁ殿下!強さとは何たるか、分かりまして?」


姫さん、自分が殿下を呼んだこと忘れてたな。

今思い出した様に彼女は手を叩いて殿下の声に反応した。


殿下はそんな様子に気づいていないのか重く頷き、姫さんの手を握って跪いた。

その顔は今やちょっと赤いどころではなく、完全に茹で上がっている。


……あれ、これちょっと姫さんの良いところ見せすぎたか??



姫さんも突然手を握って跪かれ、赤くなって挙動不審になっている。

「で、殿下⁉」


「……その、今話さなければならないことでは無いんだが、この熱が冷めてしまわない内に……と、思って……」


「???殿下?何のことか分かりませんわ?」


親父も俺も他の騎士団員も注目している中、殿下は軽く息を吐きその紫色の瞳をギラリと強く輝かせた。


「セイラン・アーヴィン公爵令嬢、僕は……今日戦う貴方に見惚れていました。

剣を振るい、己よりも大きい男達をあしらうその姿は、僕が今まで見てきた数少ない記憶の中で何よりも美しかった。


僕は、そんな貴方の婚約者でよかったと心底思った。一目惚れに近い様な恋をした女性が将来妻になるなんて嬉しい……だからここに誓う。


貴方の隣に立って遜色無い男に僕はなる!例えどんなに歳月がかかっても必ず貴方に追いついて見せる‼誰よりも愛すると誓います‼‼」



殿下純情かよー――――‼‼‼‼‼‼

聞いてるこっちが恥ずかしくなるわ‼


親父もパックリ口を開けて、他の団員もニヤニヤしながら見ている。

姫さんに至っては目を見開いて放心している。


良かったなぁ、俺の心はチクチク痛ぇけど姫さん、婚約者に愛されたかったんだもんなぁ。






……でも、これはちょっとまずいな。


俺は姫さんに幸せになってほしい。

ただ『あの方』に出会う前に殿下とくっつき過ぎるのは無しだ。



調整しておくか……。


「いやぁ、良かったな姫さん‼‼殿下もポンコツ卒業の決意が決まって‼ってまぁ現実的な話をすると、殿下はまずダンスと剣術人並みには出来る様になんねぇとな!」


「あ、あぁ……」

殿下は立ち上がり、コクリと頷いた。


よしよし頷いたな?


「まずは、人並みに!それが出来るまでは婚約者っつっても名ばかりみたいなもんだろ?陛下が決めたモンだし!あーでも姫さんの隣に立つのに相応しいっつったら人並み以上に、だけどな」


だから実力が諸々つくまでは手は出すなよ?


この純情殿下がそんなに手が早いとは思わねぇけど、あまりに良い雰囲気出されて『あの方』の入る隙が無くなるのは困るからな。


「分かっている。これからセイラン嬢に見合う様に、剣も学問もダンスも頑張る!」


グッと拳を握りしめて殿下は決意した。



「あの……殿下…………ありがとう、ございますわ……」


姫さんには珍しく、蚊の鳴く様な声で赤面しながらお礼を言った。


その様子を見て殿下はまた顔を赤くしている。

(やっぱり可愛いな……)


こっそり魔法を使うと殿下の頭の中は、姫さん可愛い一色だった。

ヤベェ‼駄目‼殿下それ以上姫さんを好きになるのは無しだ‼


俺は手をパンパンと叩いて撤収を促す。

「はい!終~了~‼殿下、いつまでも深夜に女性の屋敷に居るもんじゃないですよ‼」

「あ!そ、そうだな。じゃあ、セイラン嬢、また……来てくれるか?」


姫さんは静かにコクリと頷いた。

「さー姫さんも帰るぞー!公爵が心配するからなー‼」


「ライナス‼男の嫉妬は醜いぞ‼‼」

「うるせぇ!そんなんじゃねぇ‼」



オスカーが肩を組んでくるが俺は軽い動きでそれを遮った。

オスカーとは年齢が近いせいでどうしてもコイツの方が先輩なのは分かっているが、ぞんざいに扱ってしまう。


姫さんを屋敷の方へと押し出し、殿下を出口へと誘導する。

護衛は親父の役目ではあるが、今の殿下はさっさと帰す方が良い。


「あっ!そうだオスカー小隊長‼」

「ん?」


殿下はそれとなく親父に任せて俺はオスカーの所に戻った。


「聖女ってどんな奴ですか?まだ学園に行くんですかね?」


オスカーの小隊から聖女の護衛が出ることは決まっている。

既に顔合わせも済んでいるだろうと思い、俺は声をかけた。


「どんな……金色の髪にピンク色の瞳をした可愛い子だったな、本人の希望だから学園に行くけど、何かあったか??」


俺はオスカーから見えないように親指と中指をこすり合わせ、魔法を使った。


へぇ、確かに結構可愛い顔してるな、姫さんには負けるけど。

護衛は2人。

しかもこいつらか……。


腕自体は悪くは無いが、気が利かないし周囲の気配を読み取るのも苦手な2人だった。


きっとあのクソ王子が若い騎士を常時つけるのは嫌がって、この年配で妻子の居る2人にしたのだろう。



「いえ、殿下がやる気になったなら学園にも通い始めるだろうし、その時に接触したら姫さん嫌がりそうだなって思っただけなんで、なんとなく聞いただけです」


「あー、また婚約者を取られねえかってことか‼もう流石に無いだろ!あっちも婚約しているし、カイゼル殿下はアレ、亡霊ちゃんにべた惚れって感じだったからなぁ!」


「あーそうですね、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいに……」


「まーそんな気ぃ落とすなよ!失恋の話はまた今度聞いてやるからさ‼」


オスカーはポンポンと背中を叩いて来る。

俺はその手を強く振り払った。

「だからそんなんじゃ無ぇええ!もう帰ります‼ありがとうございました‼」


「おう、気を付けて帰れよー」











公爵家を出て俺はしばらく歩いた。

行きついた先は、昔は服を売っていたらしい潰れかけの古い建物。

中に入ると、埃臭い香りと共に人影があった。


「お待たせしましたー」

「遅い!何をしていた‼」


人影の男は分かりやすく怒ったが俺はそれを軽く両手を振って宥めた。


「そんなピリピリしないでくださいよー。聖女の情報をちゃんと仕入れてきたんで良いでしょう?」


男はピクリと動きを止めた。


「聖女は伝承通り瞳もピンクですし、王子の病を治したとき周囲にも人間が居て王子の顔色が変わっていくのを見ています。まず間違いなく本物でしょう。んで、本人の希望でこれからも学園に通うらしいです。護衛は2人」


「……そうか、よくやった」


「それよか『あの方』こっちに来ないんですか?そんなに気になるならご自分で確認した方がいいだろうに、来る来る言ってて全然来ないじゃないですか」


「うるさいぞ‼『あの方』は貴様と違ってお忙しいんだ‼」


男はこちらをじろりと睨んでくる。

バレない様に俺は魔法を使った。


(本当にこいつの言っていることは正しいのか⁉あの方は面白がっているが……)



まぁ、そうだろうな。

俺だって逆の立場だったら絶対に信用しないね。



騎士団長の息子が 〝国の情報を他国に売っている〟 なんてありえないし。




…………姫さんはこのこと知ったらどう思うんだろうなぁ。



俺は姫さんに二度目に会った時、決意した。

必ず、このお姫様を助ける。


そのためなら俺は汚れてもいい。

俺を選んでくれなくてもいい、俺は俺の命も、プライドも、人生も、母国でさえも全て利用して姫さんをそこから救い出す。


そんな生き方がカッコいいと思うから。

真っ当じゃなくても良い生き方を君が示してくれたから。


だから幸せになってよ、俺のお姫様。


面白い!続きが気になる!と思っていただけたらやる気につながるためブックマークや評価をお願いします‼<(_ _)>

既にしていただいた方、ありがとうございます‼

とても嬉しいです‼


次回10時頃に更新します。


ライナス裏切ってたのかよ‼‼と、思っていただけたら嬉しいです!

ちなみに、この世界に騎士爵は存在しません。

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