episode11 東:森林エリア 東方面
ラクとダリアはバリケードを越え、【ハンターウルフ】の討伐に向かった。
しかしやみくもに探しても見つかるはずもなく、探し始めて30分経過した。
以前【ビーズフィッシュ】を釣った湖、ラクとダリアが襲われた場所、ダリアがこの森で最初にそ襲われたという場所、いそうな場所はすべて探した。
だが一匹どころか、痕跡すら見つからなかった。
そして今は東のバリケードの近くにいた。
二人は一度近くにあった倒木に座って休憩することにした。
「なかなか見つかりませんね。」
「ほんとうよ。いったいどこにいるのかしら。」
二人は照り付ける太陽のせいで汗をかき、暑さを感じていた。
ラクはもともと動きやすい服装なので、身軽なのだが、ダリアは服は涼しそうでもフードを被っているため、熱気がフード内にこもり、とても暑そうだった。
「ねぇダリア。熱いならフードをとったら?」
フード内で汗をかき、髪がしっとりと濡れているダリアを見て心配したラクは言った。
「いえ、そうしたいのはやまやまなのですが・・・・・」
ダリアは何かそうできない理由があるようで、フードをとらずに暑さを我慢していた。
「でも無理はよくないよ。せめて水分をとらないと。」
そういうと、ラクはあらかじめポーション作成で使うために用意しておいた水が入った瓶をインベントリから取り出すと、ダリアに手渡した。
「ありがとうございます。では、いただきます。」
ダリアはラクから瓶を受け取ると、ポンッという音を立てて栓を抜き、顔を上げて中に入っていた水を一気に飲んだ。
だがここで、ダリアが予想していなかった事態が起こった。
それは、突然強風が二人を襲い、いままで取るのを拒んでいたフードが風でまくれて頭部全体があらわになってしまったのだ。
「んぐっ!?ゲホッゲホッ・・・・」
「・・・・え?・・・」
ダリアは突然頭部があらわになったことに驚いてせき込み、ラクは突然あらわになったダリアの頭部についていたものを見て驚いていた。
せきこんだ後、ダリアはもう一度瓶に口を付け、中に残っていた水をすべて飲んで落ち着いた。
「ふぅ・・・・ってラク。あの・・・・これは・・・・・」
「・・・・・耳・・・だよね?」
ダリアは顔を赤くし、両手を耳に当てて隠そうとしていた。
ダリアはどうしていいかわからずパニックになっていた。
「えっと・・・これはですね・・・・。そ、そう、飾りです!ですから・・・・」
なぜか必死にごまかそうとするダリアの肩をポンとたたき、
「ダリア、一度落ち着こう。ね?」
「うう・・・・・はい。」
ごまかすのを諦めたダリアは、両手鵜をだらんと下げ、深く深呼吸をした。
それからダリアが平常心に戻るまで数分の時間を要した。
ダリアが落ち着き、ようやくちゃんと話せる状態になった。
「落ち着いた?」
「はい。ありがとうございます。」
「・・・・聞いてもいい?」
「はい。見られてしまったからにはすべてお答えします。」
ダリアはもう耳を抑えるのをやめ、手は股の上でかさえていた。
ラクは改めてダリアの耳を見た。
そこには人間の先の丸い耳ではなく、細長く、先端のとがっている三角形に近い耳がそこにあった。
動揺していた時やその前の平常時は耳はぴんっと立っていたが、いまは気持ちが沈んでいるのか、耳は垂れ下がっていた。
ラクはじーっと見つめ、顎に手を当てて何かを考えた後、いくつか質問をした。
「それは耳だよね?飾りではない本物の。」
「はい。正真正銘私の耳です。」
「どうして隠していたの?」
その質問を聞いたダリアの耳は一度ピクッっと動き、また手で耳を覆い隠した。
そして顔を赤らめて目線を下に向けていた。
「だって・・・・・から。」
あまりに小さい声で言ったのでラクはうまく聞き取ることができなかった。
「ごめん。もう一度言ってくれる?」
「う・・・・だって恥ずかしいから。」
「恥ずかしい?どうして?」
「だって同族からは恥ずかしくなるほどこの耳のことを褒められるので・・・・・だんだんとこの耳を見られること自体がはずかしくなってしまったんです。」
ダリアをここまで追い詰めた同族の方々はどんだけほめた!?
そこまで褒める理由ってあるの!?
っとラクは心の中で思ったのだった。
「その同族の人たちがどんな思いでダリアの耳を褒めたのかはわからないよ。けどあなた自身は自分の耳のこと、どう思ってるの?」
「え、わ、私自身ですか?」
ダリアは意外そうな顔でラクを見つめた。
そして考えをまとめると、まっすぐにラクを見つめた。
「私はとてもこの耳が好きです。たしかにこの耳のせいで苦労したことも多いです。ですが、この耳のおかげで幸せな気持ちになったこともありました。この耳は私に幸せをくれた。なのでこれは私の自慢の耳です。」
笑顔で言ったダリアはそのあと、ラクに聞いた。
「ラクは私の耳、どう思いますか?」
「えっと、私の考えも含めて言っていい?」
「はい。構いませんよ。」
「なら・・・・。私はその耳は素敵だと思うよ。同族の人たちが褒めるのも納得できる。だけど、大切なのは自分がどう思っているかだと思う。大切なのはいかにその耳を生かして振舞うか。自信があるなら堂々と振舞えばいい。そうすれば見える世界が変わると思うよ。」
ラクは現実で自分がこれまで部活で感じたことと重ねて言った。
しかしそれが正しい答えかはわからない。
だがこれが今のラクが言えるすべてだった。
ダリアはその意見を聞き口を開けてぽかんとしていた。
まさかそこまで考えていたとは。と言いたそうだった。
「・・・・そ、そうなんですか。いや、そうですよね。」
そういうと、ダリアは立ち上がり、座っているラクの前に歩いていった。
「ラク。助言ありがとうございます。とても参考になりました。これからは堂々と振舞えるように努力していきます。」
そういってダリアはラクに右手も差し伸べた。
「改めて、ラク。これからよろしくおねがいします!」
ラクは笑い、その手を掴んで立ち上がった。
「こっちこそ。よろしくねダリア。」
こうしてプレイヤーのラク、NPCのダリアのプレイヤー側から見たら異例ともいえる関係はより強固になったのだった。
「それはさておき、ラク。これからどうします?」
話は唐突に現状のことになった。
わりと感動?のシーンではあったがこれが【ハンターウルフ】の討伐のクエスト中であることを忘れてはならない。
いまだ痕跡すら見つかっていないのだ。
「うーん。どうしようか・・・・・」
ラクは眉間にしわを寄せ、右手を顎に当てて考えていると、ふとあることを思いついた。
「ねぇダリア。」
「はい。なんでしょう。」
「あのハンターウルフの毛って灰色だったよね?」
「そうだと思いますが・・・・・」
「あと気温が低い方向ってわかる?ここ熱いし。」
「どういうことですか?」
「ちょっと本で読んだことあってね。灰色のやつが寒い地域に生息しているらしいから、もしかしたらっと思って。」
実際に現実で北の寒い地域に生息する灰色の狼がいる。
もしそれを参考に【ハンターウルフ】が設定されたのなら、バリケードで出ることのできない東の森林の寒い方向にいるはずなのだ。
ちなみに森林の東が熱いのは、その先にある第二の街とその一帯が、熱帯地域であるため、その影響から東側が熱いのである。
「あの、あまりこのあたりのことは詳しくはないのですが・・・私が来た南は比較的寒い地域でした。そ
れと先ほどの湖の先の北側も比較的寒い地域でしたよ。」
「なら北か南にいると思う。」
「ではどちらに行きますか?」
「どっちでもいいけど・・・・前目撃した北に行く?」
「わかりました。では北に行きましょうか。」
こうして行く方向を決めた二人は、北に向かって歩き出した。
そして、ダリアはフードを被ることなく、歩いて行ったのだった。
ダリアがずっとフードを被って隠していたのはなんと細長い耳!
つまり彼女は・・・・・・
いよいよ残り数パートで第二章が終了します。
それではまた次回!




