episode9 「手合わせ」
手合わせをすることになったラクとダリアは、すでに剣を構え、お互いに相手の様子をうかがっていた。
二人はじりじりとすり足で距離を縮めていく。
最初に動いたのはダリアだった。
一直線にラクに向かって走っていくと、短剣を横に振り、腹部を切ろうとしてきた。
しかし、ラクは後ろに跳んで回避すると、一気に前に出て短剣を突き出した。
狙うは肩。
だが、ダリアはなぎ払った態勢から一歩前に出てラクの懐に潜り込んだ。
「っ!しまった!」
まず腹部に拳を入れ、しゃがんで足を払い、ラクを転倒させ、体の上に座ると剣を逆手に持ち、頭部めがけて振り下ろした。
ラクはとっさに短剣を前に出し、振り下ろされる剣を受け止めた。
ガキィン
短剣同士がぶつかり、甲高い音をだした。
ラクはその状態から剣先を地面のほうに向け、ダリアの剣の軌道をずらした。
軌道をずらされた剣はラクの頬をかすり、地面に突き刺さった。
ラクは自由になった短剣をダリアの胸部めがけて突き出した。
しかし、ダリアはとっさに短剣を地面から引き抜き、後ろに跳んでそれを回避した。
「ラク様はこれで全力ですか?」
「そんなわけないでしょ。一応秘策はあるんですよ!」
ラクはしゃべり終わると同時にダリアに向かって走り出した。
それに対してダリアはさらに後ろに跳び、距離をとった。
なおも走ってくるラクの剣を受け流すために剣を前に構えた。
しかし両者の剣はそこでぶつからなかった。
ラクはダリアの前まで来たとき、瞬時に【身体強化:スピード】を発動し、ダリアの左を抜けて背後にまわったのだ。
そして右足を軸にして体をダリアのほうに向けた。
そして・・・・
「一式:颯!」
ラクはスキルを発動した。
弧を描くような下から上に振り上げられる一撃、今のラクの使える唯一の技だった。
しかしその一撃は、振り向いたダリアのローブ肩のあたりをわずかに切り裂いただけだった。
再び後ろに跳んで距離をとったダリアは切り裂かれた部分を確認し、胸元にあるローブのボタンに手を当てた。
「まさかラク様があれほど速く動けるとは。私も本気でやらなければ勝てそうにありませんね。」
そういうと、ダリアはボタンを外し、ローブを脱いだ。
かぶっていたフードもとったのだが、その下にもう一つ服についているフードがあり、それがダリアの頭を覆っていた。
「では、いきますよ。」
ダリアはそういうと、ラクに向かって跳んで一気に距離を詰めた。
そして、その勢いのまま突き、その突きがラクの右肩に直撃した。
「っぐ!」
突き刺さった短剣を引き抜き、ラクの肩を足場にしてダリアは跳ぶと、近くの木の枝の上に着地した。
「いったぁ。さっきと全然動きが違うし・・・・・けど!」
ラクは再び身体強化を、今度はアタックとスピードの両方を使った。
そして地面に着地したダリアに向かって突っ込み、短剣を横に一振りした。
しかし、それを短剣を両手で持って受け止めたダリアは一振り、続いてラクが受け止め、一振り、その一連の繰り返しが6,7回続いた。
次の一振りの時、ダリアはラクの攻撃をよけ、剣ではなく、後ろ回し蹴りでラクの右腕をブーツのかかとで蹴りつけた。
その威力はブーツに覆われた細い脚から到底出そうにないほど重く、強く、ラクを湖の中に蹴り飛ばすほどの威力だった。
バシャァァン!
水しぶきをたてて着水したラクはどうにか反対岸まで泳ぐと、這い上がって肺に入った水を出そうとした。
「げほっげほっげほ。」
水を飲んだせいで息苦しく、右腕は蹴られたせいでじんじんと痛む。
体はびしょびしょで少し肌寒かった。
地面に四つん這いの態勢で苦しんでいると、ダリアが反対岸から走ってきた。
「すみません。ついやりすぎてしまいました。大丈夫ですか?」
一体あの足のどこにそんな力があるのか。
しかし、今はそんなことを考える余裕はなかった。
「大丈夫・・・・・。それより・・・・つづけよう。」
「しかしラク様はもうボロボロではないですか!もうあきらめてはどうですか?」
「あきらめる?」
「はい。もうお互いの実力は確認できたと思います。いまは早く小屋に戻ってけがの手当てをした方が・・・・」
心配し、担いで運ぼうとするダリアの腕を払い、ラクは後ろに跳んで距離を置いた。
「まだ試合は終わっていませんよ。」
「しかし・・・」
「私ってあきらめるって行為が、言葉が嫌いなんです。すべてを出し切ったわけでもないのに目の前の戦いから逃げようとする。それが嫌いなんです。だから・・・・」
ラクはメニューから装備画面を開き、その中の武器項目を選択、短剣の横にある空きスロットに両手剣をセットした。
しかし両手剣は目の前に現れなかった。
だが、ラクはその状態のままウィンドウを閉じると、短剣を構えた。
「ここからは第二ラウンドですよ。さっき言ってた秘策もおみせしましょう。」
「本当によろしいのですか?」
「はい。負けるならすべてを出し切ってからでないと納得できないので。」
「・・・・・わかりました。では再開しましょう。」
ダリアはラクの希望を叶えるように、再び短剣を引き抜き、構えた。
身体強化、アタックとスピードを発動したラクはダリアがどう動くかを見ていた。
直進して切ってくるか、それとも足技か、それとも別の方法で攻撃してくるのか、何をしてきても対処できるように腰を低くしてダリアの行動を待った。
するとダリアは、直進してきて、短剣を横に一振り、今度は上から下に振り下ろし、さいごに回し蹴りをしてきた。
最初と次の短剣を使った攻撃は剣でどうにか受け流し、回し蹴りは態勢を低くして何とかかわした。
そしてラクは素早く立ち上がると、ダリアの腹部を一閃。
服が裂け、白い肌があらわになった。
一撃を受けたダリアはわずかに顔をしかめると、短剣を逆手に持ってラクを切り付けた。
しかし、ラクの頬をかすめただけで、そこまで深刻なダメージにはならなかった。
「まだまだぁ!」
それからどのくらい続いたかはわからない。
実力ではダリアが上だが、ラクがバスケで培ったカウンターなどの対人行動がラクとダリアの差を埋めていた。
「ハァハァ・・・・そ、そろそろ・・・ハァ・・・・決着を・・・決着をつけませんか?」
距離をとったダリアがそのような提案をした。
「わかりました。・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・ではそろそろ使いましょうか。」
すでに両者の呼吸は乱れており、体力の限界が近かった。
そして最後の攻防が始まった。
最初に仕掛けたのはダリアだった。
呼吸は乱れているが短剣で狙ってくる場所は正確、肩や腹部、首などを正確に攻撃してきた。
それをラクは短剣で受け止め、体をひねってかわし、そこからカウンター攻撃を仕掛けていった。
一撃は軽いが、連続で攻撃を命中させていくラクの攻撃は、最初と比べても疲れがたまって遅くなってきていた。
しかし、それももう関係なかった。
ダリアの横切りをかわしたラクは、短剣を持っていない方の手を振り上げた。
「・・・シフト!」
ラクがそう叫んだ瞬間、振り上げた手の中に、突然先ほど登録した両手剣が現れた。
そして、少したってから右手にあった短剣が光の粒子になって消えた。
「え!?」
ラクはそのまま、両手剣を重さに任せて振り下ろした。
突然のことに動揺していたダリアだが、とっさに両手剣の攻撃をかわし、ラクの腹部を一閃した。
腹部に致命的な一撃を受けたラクはその場に倒れ、ついに決着がついた。
今回は激しいラクとダリアの攻防戦でした。
フードのしたのまたフード。
どれだけ頭を隠したいのか・・・・・
ラクが最後に使ったあれは何なのか?
また謎が増えましたね。
ではまた次回!




