魔法を使う者
眠っている間夢を見た。それは何年も前の夢、今は全然覚えてない記憶の夢。この夢は最近になって頻繁に見るようになった。
「え~ん!母上~どこ~~?え~ん!」
ガサッ・・・
葉が揺れる音がして怯えた少女が後ろに振り向くと少女より2~3上の年齢に見える男の子が心配そうに見ていた。
「大丈夫?君はどうしてこんなところにいるの?迷子になってしまったの?お家に帰れないの?」
そう質問され少女は何も言わず男の子に寄り添うように抱きつきまた泣き出した。
「・・・め様。ひ・・・様。姫様!目をお覚ましください。」
マリアは侍女に起されたマリアが珍しく寝起きでボーッとしていると侍女が小さく微笑みながら言った。
「姫様もしや、またあの夢を見たのですか?」
(そう、あの夢はよく見る夢だった。ずっとずっと小さい時の夢、相手の男の子の髪も声も顔も何も覚えてないけど何があったのかだけ覚えている夢。そして・・・私の初恋の夢。)
「えぇ。」
マリアは小さく答えるとベッドから起き上がりドレスに着替えず乗馬用の服を着た
「姫様?馬にお乗りになってどちらか行くのですか?」
侍女が聞くと
「町に降りるわ。すぐ戻るわね。」
そう言い部屋を後にした。
そして、今に至る。
「ロール泣かないで。それに泣いてしまってはロシュ様に失礼でしょう?会った事もない方なのに・・・。」
「何を言うのです!姫様!魔王の御子息ですよ!?外見なんか既に決まっているようなものではありませんか!きっと頭には尖った角があり牙を見せた口に獣のような爪の・・・それはそれはおぞましい姿なのでしょう!」
ロールは侍女なので儀式の時部屋にはいなかったので知らないのだろう。
王子の姿は見なかったが、魔王の姿はどこからどう見ても人間にしか見えなかったのだ。
黒く腰まで垂らされた美しい髪に血のように真っ赤な瞳身長は2mといったところぐらいだろうか。もしあの魔王が町を歩いたならきっと村娘達は釘づけになることだろう。
ロールが言うような角も牙も爪も魔王には存在しなかったのだ。
そう考えていると背後から声がした
「マリア」
後ろを振り向くと、そこにはユリアス兄上が心配そうに私を見つめていた。
「マリア。今すぐ城を出よう。」
「え?」
「城を出てずっと南に行こう。魔王に見つからぬ場所に。」
兄上が言いたい事はわかった、だけど・・・。
「申し訳ありません、兄上。その言葉に従う事はできません。」
マリアは頭を下げた。
「・・・っ!何故だ!何故お前が魔王の元へ行かなければならぬ!お前は戦争には関係ないではないか!」
「兄上落ちつきください。侍女達が困っています。」
マリアの背後にいる侍女達は興奮気味のユリアスにあたふたしていた。それでもユリアスの興奮は止まらない。
「マリア、約束を覚えているか?」
「約束?」
「まだお前が5歳の頃、お前はどこに行ってしまったのか迷子になったことがあるな。その時私や母上、父上は兵に任せず自らの足でお前を探し突如森から泣きながら姿を現したお前を先に見つけ抱きとめたのが私だったな。その時にした約束だ。」
兄上が言っているのは私が毎回見る夢のあとにあったものだ、あの名前もわからない少年に連れられ森の外近くまで行くと少年は「ここをまっすぐ行けば人がいるよ」そう言い後ろを振り返り走って消えてしまったのだ。
「えぇ、覚えております。『必ず守る』でしたよね?」
「あぁ、私は約束した、お前を何があっても守ると。だから今回もお前を魔界になど連れて行かせん!」
兄上のその優しいところは大好きだった、約束をかわしてからは兄上はずっと私と一緒にいてくれた。怖い夢を見て泣きながら兄上の部屋に行くと理由も聞かず横にずれ頭を撫でながら眠ってくれたり、乗馬の練習の時も私を抱きしめるようにして後ろにまたがり直接指導してくれた。だが、今回は仕方のないことだ。
「兄上、私を守りたいとおっしゃるのでしたら国を、国をお守りください。私はこの国と父上、母上、兄上のために魔界に嫁ぐのです。それならば兄上は私が涙を流しながら手放した者達を兄上がお守りください。」




