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純粋無垢を護らねば!〜リン×ラン×キッチンカー日常〜  作者: おりみみ


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10/21

第10話 銭湯を護らねば!後編(リン視点)

「え? お姉ちゃんの返しがウケてる……? あの人大丈夫ですか、病院行った方がいいですよ」


「ふふっ病院ッ……大晦日だからやってるかしらッ……病院のベットでお腹を休憩……ふふふっ」


 ああ、大晦日でこんな笑えたのは初めてよ。

 来年はきっといいスタートになるわ。告白ちゃんドン引きさせちゃってごめんね、お風呂でこんなお腹抱えて笑う人なんて居ないわよね……ふふふッ……!


 温泉の湯をバザッとして立ち上がる乙女姉ちゃんは、謎決めポーズをしながら叫び散らかすわ。


「ハハッー! ボクの納豆テキーラなオーラをバリカンイカの塩辛なんてキミはツインテールッ!」


 もうやめてッ!

 お腹壊れちゃうッ!


「なになになの、納豆とテキーラとオーロラソースなの? 宇宙人用にそのメニューを作ってみるなの!」


 考えてずとも分かる程にヤバそうなメニューね。

 確かに宇宙人なら喜ぶかもだけど……え、宇宙人ってこの人のこと?


「ああ耐えるんだ鰈崎マコ、昨日と今日で情報量に打ち勝つ術を身につけたんです! 今、ここで寒さに耐え切る為に身につけて来たんですきっと!」


 暖かいお風呂でガクブル震えているマコちゃんの肩を借りないと、笑いすぎてお風呂に沈んで窒息しちゃうわ!


 マコちゃんお助け~。


「ひぁッリンさん抱きつかないでくださいッ! だ、大丈夫ですかリンさん? 笑いすぎて息出来てます?」


「お姉さんに抱きつくなんてズ……しょうがない、私が代わりにお姉さんに抱きついてあげる!」


 私に続いて乙女ちゃんもひっつき虫よ!

 妹ちゃんもお腹がよじれる程笑いそうなのかしら、笑い声聞こえなかったけど……あ、きっと声が出ない程笑っていたのね。


「ちょッ二人で体重掛けたらッ沈むッ沈んじゃいます! 大晦日にこんな寒い思いをしながらお風呂で窒息死なんて絶対嫌です!」


 私の腹筋付いてるかしら、あ、ちゃんと腹筋の存在を確認出来たわ。

 ふぅ……でもこれ以上食らったら腹筋の残基が無いわ!


 そんな私にトドメを刺すように、姉ちゃんはハキハキと言うわ。


「キミ達タニシ争奪戦、ボクも鎌倉させて!」


「宇宙人までお風呂で暴れるななの、タニシはお風呂で生きれないなの……あ、溺れたタニシを助けてるなの? ワタシも手伝うなの~」


 こんな場所にタニシなんていないわ!


 あ、もうダメ、腹筋、腹筋がッ……あ、腕に力が入ってッ……!


「待って、これ以上は本当に、ごっごぼぼぼぼぼ───」




 ◇◇◇




「───ケホッはぁ……はぁ、は、あれリンさん?」


「ふぅー……危ないところだったわ。ごめんなさいマコちゃん、私昨日も今日も色々……」


 昨日は熱があったとは言えど、取り乱したり意味も無く見つめたりしちゃったし、今日こそはと思って銭湯に来たのに……


「リンさんそんな申し訳なさそうな顔しないでくださいよ。それに、リンさんがお腹抱えて笑ってるところが新鮮で面白かったですよ」


「……そうかしら」


 自分の心配よりも、私を励ますことを優先するマコちゃん……無自覚な優しいところ、とても素敵ね。


「あああもうッお姉さんから離れてよぉ! 次は私が人工呼吸する番よ!」


 私の肩を掴んで引き離そうと必死な乙女妹ちゃん。


 乙女ちゃんもマコちゃんがそんなに心配だったなんて、とてもいい子なのね。

 ただ強く引っ張ると、滑って転んじゃうかもだし危ないわよ。


「ええ!? もも、もももしかしてもしかしちゃったんですか!?」


「うるさいなの、もしかしちゃたなの」


 元々温泉効果で赤かった顔をさらに赤くするマコちゃん。

 ファーストキスを奪っちゃったのかしら?


「ごめんなさいねマコちゃん、でもこれは仕方ないのよ?」


 私を人口呼吸で助けようとしてくれたあの小学生ちゃんの事があった後、人口呼吸を調べておいたお陰でしっかり出来たわ。


 わたしは別に大丈夫ですけどと口ごもるマコちゃんの元に。


「ハハッー姉ちゃんが助かって良かったなーッ! 感動的なシーンに巡り会えて涙がとならない」


 涙を拭って現れた人物が一人。


「え、誰ですかこの人」


「元宇宙人なの、ワタシの夢が一つ壊れたなの」


「ななな!? 主な元凶のあなたが何言ってるんですかー!!! 喋れるなら初めからちゃんと喋ってください!」


「いやーッボクの言い回しに笑ってくれたヤツは初めてでね、ノってしまうのも致し方無し」


 プンプンに怒り暴れるマコちゃんを抱き寄せて必死に止める。

 まだ安静にしてないと危ないわ。それに、それに。


「元凶は私よ、マコちゃんに抱きついてそのまま窒息させちゃったのよ? 私ッマコちゃんを……殺し掛けたのよ? 恨むなら私を」


「リンさんが自分を責めることはありませんよ! ……ちょっと来てください」


 食い気味にそう言ったマコちゃんは、私の手をグイグイ引っ張って湯槽に二人で入ってくわ。


 ダメよマコちゃん、私と一緒に入ったらまた。


「えいっ」


「むわッ!?」


 手でお湯を鉄砲みたいに飛ばして来たマコちゃんは、子供の無邪気さ溢れるような笑顔を見せるわ。


「へへっリンさんも遊びたかったのかなって思ってたんです。大晦日で泣いて終わってしまうのは区切りが悪いですよ! そのリンさんの泣いた面を私が水鉄砲で洗い流してあげましょう!」


「お湯かけっこするなのー!」


「あぁじゃあ私も混ぜてもらうわ!」


「大晦日らしく盛り上がろうじゃないかッハハッー!!!」


 大晦日、銭湯に響き渡る笑い声がリン達の心と身体を温める。


 キッチンカーを始めた今年は不安がいっぱいだった。

 そんなキッチンカー日常で幸せ溢れるこの時間が尊く、来年も護って行きたい。そんな贅沢な願いを祈ってもいいのよね……?




 ◇




「リンは何をお願いしたなの?」


「ふふっ内緒~」


「わたしは皆の秩序安全を願いましたよ!」


「マコには聞いてないなの」


 銭湯で出会った姉妹と別れて、今は除夜の鐘を鳴らし終わった頃。

 早め早めと急いで来たら、来年を迎える前にドーン出来たわ。


「来年を迎える場所はどうするなの?」


「ん~マコちゃんは何処がいい?」


「いつも通りキッチンカーの中でどうでしょうか」


「無難で良きなの、マコをよしよししてやるなの」


 少し屈んだマコちゃんの頭を撫でるランちゃん。

 そしてお喋りしながらキッチンカーに到着。いつものこの狭い空間も和むわね。


「わたし明日からこのキッチンカーとお別れするの嫌です~」


「大晦日めそめそするなって言ってた人がめそめそしてるなの。哀れな生物なの」


 めそマコちゃんをよしよしと慰めているわ。

 私もよしよししよっマコちゃんの頭はご利益がありそうね。


 坊主だったり禿げてはないけど、ショートヘアだから撫でやすいのよね。


「あ、そろそろ年越しよ! あと三十秒!」


「もうですか!?」


「なんかするなの?」


「じゃあ良くあるジャンプしましょ! 私達だけ今年を少しでも長く堪能するのよ!」


 擬似無重力バンザイ!

 今年はこれからが勝負、後秒で終わるところを抗うのよ!


「マコ、これで数秒だけこのキッチンカーに居れる時間が増えたなの。喜べなの」


「キッチンカーの中でジャンプするんですか!?」


「さあ手を握って~」


 驚くマコちゃんに無視を決め込む私とランちゃん。お互いの手を握り。


「ジャンプなの~」


「まだ早、痛ッ」


 キッチンカーの天井に頭をぶつけたマコちゃんを、ランちゃんがぷぷーと嘲笑してるわ。仲睦まじくて良き良きね!


「もう一度行くわよ、せーのッ」


 年越しの瞬間、二秒程今年を楽しんだ三人。

 私とマコちゃんは頭にたんこぶをそれぞれ一つと二つ付けて、新しい年を迎えたわ。


「「「ハッピーニューイヤー!!!」」」

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