表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
底辺配信者とスライム 特別編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/71

第70話 一日フロアボス その1

「一日、フロアボス? ワラビが?」


 ギルド受付の石田さんが、ボクたちの家に直接やってきた。


「ツヨシさん、どうなさったんです?」


 台所にいたヒヨリさんも、居間に顔を出す。お茶とおせんべいを、石田さんの席に置いた。


「実はダンジョンの楽しさや危険性などをレクチャーするよう、ギルドから依頼が来まして」


 石田さんは一度、お茶でノドを潤す。


 ボクの動画が流行ったことで、ダンジョンに興味を持つ一般人が増えたらしい。だが、危険を顧みない、ただ目立ちたいだけの冒険者崩れが後を絶たないとか。


「試しにツヨシさんのテイムモンスターであるワラビさんに、一日ダンジョンマスターをやってもらおうかと」


 いわゆる一日フロアのボスになって欲しいという。


「一日署長みたいなものですか?」


「そうですね。平たく言うと」


「わかりました。ワラビもいい?」


 ボクが尋ねると、「マスターが言うなら」と承諾してくれた。


「じゃあヒヨリさん、明日はそういうことなので、でかけますね」


「気をつけてください、ツヨシさんとワラビさん」


 ヒヨリさんに続いて、畑仕事をしていたピオンも、「いってらー」と手を振る。




「え、子ども!?」


 ダンジョンに来て、驚く。


 なんと、一〇代にも満たない学生たちが相手だった。


 武器も、新聞紙で作った剣と盾である。手に持っているボールは、魔法のつもりなんだろう。


「職業訓練だったんですね」


「まあ、そんなところです。【ラープ】といいまして」


 ラープとは、ファンタジーを実感しながら冒険をする、一種のオリエンテーリングである。いわゆる「実際に動くテーブルトークRPG」だ。


「申しわけありません。私も、話に聞いていたことと、随分変わってしまっていて」


 一番困惑しているのは、どうも石田さんみたい。


「いえいえ。石田さんのせいじゃないですよ」


「どうか、お願いできないでしょうか?」


「わかりました。お引き受けしましょう」


「ありがとうございます。ギルド長は、後で袋叩きにしておきますので」


「あはは……」


 今の石田さんなら、やりかねないなぁ。

 


 ナビゲーション役は、まさかのメイヴィス姫だ。ポケットが大量にある釣り用ベストと、ショートパンツスタイルである。


「久しぶりね、ツヨシ」


「姫様。もう書類整理はいいんですね?」


「いいえ。コルタナや配下に押し付けてきたわ」


 身体を動かしたくて、ギルド主催のラープに同行したという。


「はいみなさーん。今日は、この山を登りますよー。この山を登りきった先に、スライムの王様がいるそうでーす」


 子どもたちが「わーい」と騒ぐ。子どもたちの中には、剣をぶんぶん振り回す生徒も。


「まだよー。じゃあ、行ってみよー」


 ナビ役の姫様が先頭に立ち、児童たちがゾロゾロと山の小道を歩く。


「あっ。ゴブリン発見です!」


 ゴブリンに扮した冒険者が、生徒たちの前に立ちはだかった。


「どうしよっか。戦うか、逃げるか。選択肢を間違えると、大変なことになるよっ」


「これだけの人数がいるなら、ゴブリンくらい押し切れる!」と、一人の少年が斬りかかる。


 後ろにいる女性陣が、赤いボールをゴブリンに投げた。あれはファイアボールのつもりらしい。しかし、ボールは明後日の方向へ。


「ゴフゴフ」と、冒険者はゴブリンになりきって、されるがままになった。


 退散していくゴブリンの背中を見て、児童は大ハシャギだ。


 しかし、先陣を切っていた少年は難しい顔をしている。


「先生、今の判断って、間違っていた? 僕、仲間を危険にさらしたのかな?」


 質問されて最初は戸惑ったけど、ボクは真摯に答えようと思う。


「いいんじゃないかな? 君たちは大人数で歩いていて、ゴブリンに見つかったでしょ? あのとき見逃していたら、仲間を呼ばれていたかもしれない。賢明な判断と思いました」


「ありがとうございます先生」


 納得してくれたようで、児童は頭を下げた。 


「怖がらせる必要は、なさそうですね」


「あのくらいの年齢のコたちに、冒険のリアリティなんて教える必要はありませんから」


 彼らはまだ、現実がしょっぱいと気づく年頃じゃない。


「相手の力量を見て、どれくらいの強さで行くか考えよう、ワラビ」


「はい。今回はあくまでもプロレスというのは、心得ております」


 さすがワラビだ。伝えなくても、今日は負け役に回るとお考えである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ