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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
最終章 ドラゴンとの生配信バトル

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第54話 「いえーい、勇者くん見てるー?」 → 妻凸

 ヒヨリさんが、ピオンごとさらわれたらしい。


「急にすいません」


 石田さんが、ワゴン車から降りてきた。


「いえ。一大事ですから。それは?」


 これ、ヒヨリさんの車じゃないか。


「第一層のダンジョンで、これを見つけました」


 ボクは、車のキーを受け取る。


「ダンジョン前に駐車している車の中に、集めた薬草がそのまま残っていました」 


 ギルド職人に頼んで合鍵を作って、ヒヨリさんの車をギルド本部まで運転していったという。


「ヒヨリさんのご実家が、依頼主となって捜索依頼が来ています」


 誘拐犯の疑いは、最初から考えていない。ヒヨリさんだって、一般人が相手にならないほど強いから。


 可能性があるとすれば、ヒヨリさんより強い冒険者か、モンスターだろうと。


「しかし、ドラゴンから直接通信がありました。『ツヨシという冒険者と連絡を取れ』、と」


 ドラゴンが、ボクを名指しで指名してきた。


 妙だ。メイヴィス姫から、「ドラゴンは自然災害のようなもの」と説明があった。それが、ニンゲンに連絡をしてくるなんて。


「ツヨシが、ドラゴンを怒らせたことでもしたのか?」


「わからないわ」


 メイヴィス姫も、心当たりはないという。


「とにかく、ドラゴンと話し合ってみましょう」


 コルタナさんの誘導で、ギルド本部へ。


「ああ、よく来たね。こっちだ」と、ギルド本部長が迎えてくれた。


 いつでも、ドラゴンと話ができるようにしてあるそうだ。


 本部長が、PCのモニターをオンにする。


「いえーい勇者ツヨシくん、見てるー?」


 やけにノリのいい男性が、ドアップで映り込んだ。この男が、ドラゴンなのか。たしかに、そう言われれば可能性がある。全身の皮膚が青黒く、頭には蛇腹状の角が生えていた。


「竜人族ね。人と交わって、ニンゲンと同じ繁殖能力を持った一族よ」


 メイヴィス姫が、解説してくれる。 


「いえいいえーい! オレサマはブルードラゴン族の(ショウ)(トウル)。伝説の勇者とほぼ互角の力を持っている勇者とお話できるなんて、テンションがバク上げじゃん!」


 ブルードラゴンが、ショウトウルと名乗った。それにしても、ヤンキーくさい。竜人だからか、青いスカジャンを着ている。


 部屋も、任侠映画に出てきそうなリビングだ。机は上等な木材で作られていて、壁には日本刀が飾ってある。じゅうたんなんて、ホワイトタイガーの皮じゃないか。


「ヒヨリさんは無事なんですか? 返してください!」


「ひゅー、威勢がいいねえ」


 ボクが凄んでも、相手はまったく怯んだりしない。


「お前さんがオレサマの話を黙って聞いてくれたらよお、映してやらんでもない」


「いいから、無事かどうか確認させてください!」


 ショウトウルのテンションが、ボクの怒る姿を見てさらに上がった。


「んー? いいのかなー? あんな姿を見たら、ツヨシくんには耐えられないんじゃないかなーっ。アヒャヒャヒャ!」 


「うるさいねえ! あんた!」


 エプロンを付けた若い女性が、後ろのフスマを開けて割り込んでくる。


「なにやってんだい、まったく! 娘が起きちまったじゃないのさ!」


 ブルードラゴンの頭を、おたまで殴り飛ばす。


 おたまという柔らかそうな素材なのに、ショウトウルがフスマの向こうまで吹っ飛んでいった。


 子どもって言っていたな。この竜人族は、奥さんなんだろうか。


「バカだねぇ! さっさと要件をいいなよ! お嬢ちゃんが、かわいそうじゃないのさ!」


「ごめんよ母ちゃん! て、てめえ、撮らなくていいんだよこんなとこ!」


 頬を抑えながら、ショウトウルがカメラマンに凄む。


 ショウトウルの横っ面に、奥さんがビンタの一撃を食らわせた。


「いや撮っちまいな。コイツのクソなっさけねえ姿ぁ、全世界に配信してやるんだよ!」


 奥さんドラゴンがショウトウルの胸ぐらを掴んで、何度も往復ビンタをする。


「ごめんなさいごめんなさい! 母ちゃん許して!」


 何度もショウトウルは、奥さんにあやまり倒していた。


「あんたは、娘をあやしてきな。あんたが騒いで泣かしたんだから!」


「はい。すいませんでした……」


 トボトボと、ショウトウルがフェードアウトする。


「さて」と、奥さん竜人が、動画の向こうから語りかけてきた。


「改めて自己紹介だね。アタシはショウトウルの妻で(ラン)。ここの女将だよ」


「どうも」


「話をする前に、ヒヨリちゃんだっけ? ニンゲンの女の子の様子を、ちょっと見てくれるかい?」


 カメラマンに指示を出し、ランさんがカメラを移動させる。


「さらったお嬢ちゃんは、この先にいるから」


 旅館の一室みたいな部屋まで、移動した。


「お嬢ちゃん、いいかい? 入るよ!」


「もぐもぐ。どうぞ」


 モゴモゴした声で聞き取りづらいが、たしかにヒヨリさんの声がする。どうやら無事みたいだけど、口に猿ぐつわでもされているのかな?


 それにしても、廊下からしてやけに豪華なお部屋だ。誘拐される場所というより、おもてなしをされるような部屋に見えるけど。


「邪魔するよ」


「ふわい」


 ヒヨリさんの返事を確認してから、ランさんが奥の間のフスマを開けた。


 そこには、カレーライスをモリモリ食べているヒヨリさんとピオンが。

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