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底辺ダンジョン配信者、干からびたスライムを育成していたらバズって最強コンビへ成長する  作者: 椎名 富比路
第六章 黒い勇者との戦い

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第53話 ヒヒイロカネの剣

 半分になった金の盾を、センディさんに見せる。


「ソードでいいんだな? アーマーじゃなくて」


「はい。ワラビと相談して、決めました」


「わかったぜ、ツヨシ。じゃあ」


「はい。冒険者は続けます」


 ボクはテイマーだ。ボクが死ぬと、ワラビが死ぬ。ならば、ボクの生存率を上げた方がいい。


 ワラビは、ミスリルソードをすべて食べている。そのまま、ヒヒイロカネも半分食べてもらった。残ったヒヒイロカネで、剣を作ってもらうことにした。


「なら、何も言わんさ。待ってろ」


 センディさんが、自分の武器を下げようとする。


「待て」


 たくましい老人が、センディさんの手首を掴んだ。いつの間に、ここに現れたんだ?


「お前は、自分の剣を打て。この者の剣は、ワシが打ってやろう」


「おやっさん」


 センディさんが、老人の方を向く。

 たしか、この人はセンディさんの師匠とか言っていたっけ。


「我が名は神室(カムロ) 弦太朗(ゲンタロウ)。ツヨシ殿、ワラビ殿、甥のセンタロウが世話になっておる」


 カムロさんは、センディさんのお父さんの弟さんらしい。兄ではなく、おやっさんと呼ばせている。


 センディさんの本名は、神室 扇太郎(センタロウ)というんだって。幼い頃から、センディさんはお父さんからビジネスを、カムロさんから剣術と鍛冶を教わってきたという。


「ツヨシ殿とワラビ殿、いつぞやは助かった。感謝する」


 カムロさんが、ボクとワラビに頭を下げた。


「いえいえ、そんな。ボクたちは、あなたに何もしていません」


「仲間の仇をとってくれた。礼とはいかんが、お主の剣を打とう」


「ありがとうございます」


 ボクが金の盾を差し出すと、カムロさんがさっそく盾を剣に加工し始める。


 センディさんの師匠に、剣を作ってもらえるなんて。


「攻防一体の剣とな?」


「はい」


 幅広ながら振りやすく、攻撃も防御も兼ねる剣がいい。


「サンプルを見ますか? ワラビが、モーフィングできるのですが」


 今のワラビなら、ミスリルソードを再現できる。


「よい。お主の筋肉の付き具合や、ワラビ殿の質感などを見れば、おのずとこの鉱石をどう扱えばよいか教えてくれる」


 すごい……。あっという間に、剣ができあがっていく。ボクの理想の形に。


「まだ、一時間も経っていない」


「おやっさんの鍛冶スキルは、尋常じゃねえんだ」


 人の体つきを見ただけで、カムロさんはその人にあった武器を作れるんだとか。


 「なにを言うとるんじゃ? 時間をかけすぎるから、魔剣に魅了されてしまうんじゃっ。魔剣を叩くときは短時間で集中的にやれと、あれほど言うたじゃろうが!」


「あいすいませんね!」


 ヤケ気味に、センディさんの刀を打つ手が激しくなった。 


 できあがりを待っている間、ワラビと状況を観察する。


「ワラビ、また危ない目に遭うかもしれない。ワラビにもしものことがあったら、耐えられないよ」


 カムロさんの口ぶりだと、ダンジョンの魔力が強くなったっぽいし。


「それは、マスターツヨシがお気になさることではありません。むしろ、あなたは自分の身を守ることをお考えください」


「あはは。そうだね」


 よく考えたら、ワラビは不死身だった。ワラビが死ぬときは、ボクが死んだときである。


「ごめんね。あやうく、ワラビに全部を委ねるところだった」


 ダメだね、ボクは。ボクは、ワラビのテイマーなんだ。自分やワラビの生き方は、自分で決める。


「あまりご自分を責めないように」


「うん」

 



 武器ができあがったようなので、見せてもらう。


 ボクは、息を呑む。ため息すら、つけない。


 見た目は、淡い桃色に輝く剣である。ミスリルの時よりも細いが、ワラビを武器化することを想定して細身にしたらしい。


「刀でもよかったが、使い勝手のよい剣がよかろうと、この形にしておいた」


「ありがとうございます」


「いやなに。魔王が去ったのだ。今後ダンジョンは、なにが起きるかわからぬ。センタロウには」


 作業をしながら、カムロさんが険しい顔をした。


「といいますと?」


「勢力の拮抗が、乱れておるのじゃ」


 なんでも、魔王ルクシオという最大勢力が消滅したことにより、異世界じゅうが群雄割拠になっているという。


「スライム『ごとき』に負けたクズ魔王」「そんなに弱い魔王だったとは」「面汚しの魔王より、自分が統治したほうが地球のため」


 魔王ルクシオ敗北の報は、散々な言われようだとか。


「ダンジョン配信は、異世界でも行われているからな。動画を見たヤツらが、イキって地球に攻め込もうとしているようだぜ」


 ん? 前に聞いた話と違う。


「ほとんどの魔王は、地球を警戒していると聞きましたが?」


「それは慎重派の話じゃ。ルクシオより弱い輩が、地球で一旗揚げようと息巻いておるのじゃ」



 なんか、迷惑系配信者のようだな。


「とはいえ、いきなりは攻め込んでは来ぬだろう」


「なぜですか?」


「聞けば、この付近の山でドラゴンが目覚めたとの話じゃ。其奴を恐れて、各世界の魔王も侵攻できぬという」


 ドラゴン……。


「自分の意思で侵略も平和的交流も選ぶ魔王に対し、ドラゴンは自然災害のようなものじゃ。触れれば、すべてが灰に変わる」


「大昔の地球にも、ドラゴンが数匹いたからな。守り神的な存在もいれば、悪さをするドラゴンも……」


 センディさんが話そうとした矢先、メイヴィス姫とコルタナさんが、ダンジョンから戻ってきた。ひどい顔をしている。


「どうしたんですか? 血相を変えて」


「さっきギルドから連絡があって、ヒヨリがさらわれたって!」


 ボクは、剣を落とす。


「誰に?」


「ドラゴンよ!」



(最終章に続く)

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