とりあたま
宵に提灯を持ち、見回りに出る。
最近うわさになっている『鳥頭』の妖は人間を食らうと言ふ。
正味、見回りの当番でもなければこのような刻限に出歩いたこともない。
二人組で見回るのだが、当番の相方はへらへらしている頼りなさそうなやつ。
周りの女子が自分に惚れているはずなのに違う男の元に嫁いでいく話をされる。
早く帰りたい。
そこに高級な香りがして、予感と気配がした。
霞美通りに牛車が現われ、三つ目の黒牛が「おりましたぞ」と喋る。
中から現われたのは、耳が鷹の翼、狩衣を着た美青年。
「まさか『鳥頭』っ?」
思わずかまえてみるも、怖いほどに美しいその男は耳の翼を動かしてみせた。
「うん、おるの・・・」
「おい、どうしよう・・・えっ?いない?」
どうやらひとりで逃げ出した当番の相方は、遠くの近くで悲鳴を上げた。
「そち、さがっていなさい」
「うわっ」
気づくと側にいた耳翼男が、木製の長い数珠を持った片手をふった。
そこに、当番の相方のものであろう血を付けたくちばしを持つ『鳥頭』が現われた。
普通の衣、頭は鳥で、舌は毒々しく、落ちたよだれが地面で音を立て煙になった。
「あいつのツバは人間の身体を容易に溶かす。機会があったら逃げなさい」
「あ、あなたは・・・?」
「うちの三つ目の牛が狙われていてね。退治しようかと思っている」
ものすごい早さで駈けて来る『鳥頭』は、三つ目の黒牛に喰いかかった。
思わず「ひ」と喉元が鳴る。
食いついたはずの牛と崩壊するはずの牛車。
そこには魔境があって、『鳥頭』は自ら吸い込まれ断末魔を上げ消えた。
幻の術をかけた時に三つ目の牛を小さくした、と、男は袖を探り手の上の牛を見せた。
それがミツヒデと、巡回役だった男、ジュゲンとの出会いだった。




