23 アレクたち?の独り言
胸の奥が、妙に静かだ。
悲鳴が上がり、馬が暴れ、貴族たちが泥にまみれて転げ回っているというのに、俺の中には騒音が届かない。まるで厚い氷の底から眺めているような感覚だ。
狼が走る。
ウィリアムの意志をなぞるように。
俺たちは楽しんでいる。狼に追われる貴族を見て。
噛みつき、ひっかく。傷が残るだろう。だが、殺させない。
恐怖だけを、最大限に与える。
それは、俺たちの合意だった。楽しむぞっと約束した。
「ほら、見ろよ」
弟が低く笑う。
男が足をかかえている。あの足助かるだろうか?
狼が出た、馬が驚いた、運が悪かった。
どっちでもいい。家族が死んだその事実はかわらないから。
死んだ彼らは俺たちにとって、祖父母であり、叔父だった。
そしてママの大事な人だった。
大事な人が死んだことを馬鹿にしたやつらが、今、同じ狼の前で震えている。
みっともなくて、楽しい。
「許すと思うか?」
三人が、ほぼ同時に呟いた。
答えは、最初からわかっている。
許さない。
絶対にだ。
これは始まりにすぎない。
今日の狼は、ただの挨拶だ。
狼が方向を変え、去って行く。
ウィリアムが満足そうに息を吐いた。
「いい顔してたな」
ああ、と俺は心の中で頷く。
あれは恐怖の顔だ。
命を奪われる前の、魂が裸になる瞬間の顔。
銀灰妃は、もう泣かない。
俺たちがいるからだ。
母の涙を、俺たちが笑いに変える。
母の恨みは、俺たちが代わりに裁く。
狼は消えた。
だが、復讐は終わらない。
むしろ、今からだ。
俺は剣に付いた血を、ゆっくりと拭いながら、震える貴族たちを見た。
地に伏して震えるやつらを、見下ろした。
心の中で、声が響く。
『ここからだ』『こんなもんじゃなかった』
あぁ、そうだ。同感だ。
たまに誰かが、俺の体を通して見てる。考える。呟く。
そして、呪う。
上等だ。俺は使いやすい道具だろう。思う存分やってくれ。
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