22 それぞれの狩り
銀灰妃目線
今年も狩りの季節がやって来た。わたしは参加しない。
ウィリアムが兄二人に付き添われて初参加だ。
わたしの名代として、叔父も参加する。
三人がなにか企んでいるようだが、わたしには内緒だ。成長したせいかこういう風になって来た。寂しいと思うが、悪意とか怨念が中身だから我が子であって我が子でない。
最初から大人だったように思うが・・・どうだっただろう?
あの事故のことを必ず話題にして、場をしらけさせているようだが、それも周りが慣れてくればねぇ。
[ママ、ウィリアムが狼を操ろうと頑張っている。野生のやつらは変に純粋だから難しいって]とアレクが言って来た。
[まぁそれなら、邪魔になりそうだから、ウィリアムに連絡は控えるわね。危ないことをしては駄目よ]
[ママ、こいつ強いんだ。その辺のやつらに噛み付いている。殺したら駄目だから、怪我させてる。じゃね]
とウィリアムから楽しげな連絡が入った。
[ママ、アレクだよ。今、狼と戦っている。って言ってもなかはウィリアムだけどね。面白いよ]
なにをやってるの?
後日、叔父から狩りのことを聞かされた。
今年は狼の檻の鍵が壊れていたとかで、狼は移動中に逃げ出したらしい。らしいというのは移動の任に当たった者は全員が死んでいたから、詳しい事はわからないとか。
そして狼は見学の貴族がいるところに走りこんで来たらしい。
王子たち三人は狼に先回りして、貴族たちを守って狼と戦ったそうだ。
護衛の騎士団と並んで戦ったそうだが、囲みをやぶった狼は令嬢の顔に怪我を負わせたり、足を思い切り引っかいたりしたそうだ。
王子たちは、そんな狼を勇敢に追い払ったそうだ。
大抵の貴族、叔父も含めてだが、彼は護衛と一緒に馬で狼を追いかけ、見失い、探して走り回って、なんの役にも立たなかったそうだ。
行方不明の狼は、騎士団が探して始末をつけるらしい。今年の狩りは長丁場って事ね。
◇◇◇
ジョシー目線
陛下が我が子にサイモンと言う名前を下さった。わたしの茶色の髪と茶色の目をうけついだ我が子。可愛い。この子に全てを与えたい。でも今は大人しく、慎ましやかに。
王子たちも、この子を可愛がってくれている。
でも、生まれた順番が遅すぎる。アレク様は王太子になってもおかしくない年だ。まだ、決まってないのは王妃腹のマイク様を、サンダース侯爵が押しているからだと聞いた。
でも王妃様はウィリアムを異常に可愛がっている。アレク様もマイク様に遠慮しているとか。
アレク様がサイモンを押してくれたら・・・それには?
義父に銀灰妃に家族の事故について調査して貰うように頼もう。
あの狩りの日、銀灰妃は家族が来ると言ってたような・・・いや、別の日?
予定が違った・・・思い出せ・・・あの日・・・
「宰相が手紙を出したらしいの。狩りに行くよりこちらに来て欲しいわね。子供を生んだら出て行けるか、確認しておきたいのよね」
あの時は子供を持ったこともないし、ねずみは貧乏家族と、一緒に過ごす方が気楽ってわたしも思ったんだ・・・だって子供って面倒だと思っていたから・・・
確かに宰相が手配したとかで家庭教師が来てたけど、すぐに来なくなった。あの貧乏人を騙すなんて簡単・・・
あの人たち、わたしに銀灰妃のことをよろしくって毎回頼んで、馬鹿みたい。
と思った時、ジョシーは涙がこみ上げて来た。わたしは意地悪してた・・・デイジーなんて名前をつけさせたり・・・あの人、なんにも悪いことなんてしてないのに家族を殺されたんだ。
あの人だけが親切にしてくれた。
犯人を探して教えてあげよう。
◇◇◇◇
叔父目線
酔って暴れて、また借金をこさえて兄さんに押し付けて、ほとぼりが冷めるまで王都から逃げている間に、ちょっと素敵な女と知り合った。部屋に転げ込んで、用心棒をやっているとそいつの男が帰って来た。
逃げようとしたら捕まってしこたま殴られた。
それで、そいつに姪っ子が綺麗だって話をしたら勘弁してくれた。姪っ子を連れ出そうと、王都に戻ったらなんと姪っ子は王様の所へ。第二妃とか・・・驚いた。
そいつにそう言って必死に謝った。するとそいつは自分の旦那に話をした。
そしたら、運が向いて来た。
そういつの旦那は、なんと王妃様の実家だった。今はまだ顔を出すなと言われた。
逃げて殴られてもたまらないから、使い走りなんかで小遣い貰って過ごしていた。
そうしていたら、なんと兄貴一家が殺された。いや、めったなことは言えない。事故で死んだ。
そこで急いで家に行って金目のものを・・・いや、家財の整理をした。
貧乏所帯に大したものはなかった。姪っ子が家に出した手紙なんかはどんどん捨てたが、宰相さんが送った手紙はやけに立派なんで、なんかの役に立つかと取って置いた。
なんかこう、いろいろ忘れた頃、姪っ子に会いに来るよう指示された。
そしたら、どういうわけか、あの王子様たちに懐かれた。
今日はウィリアム王子の義理の祖父だとかの使いが来た。
銀灰妃の実家のものをなにか持っていないかと聞かれた。
なんでもアレク様がウィリアム様を可愛がってくれるのが、有難いからなにかお礼をしたいとかで
「お金を出せばたいていのものは手に入りますが、気持ちはなかなか・・・」と意味ありげに言葉を切ると
「情報も」と続けた。すると今日はそばにいるトーマが「にゃーん」と啼いた。
トーマを見るとこっちをじっと見ていた。
「情報・・・ありますよ」と答えた。
「ほーーーさすが叔父様ですね。ご一緒します」だとさ。
やることが早いねと思ったら、「にゃー」とトーマが啼いた。
手紙を渡すと、とりあえずと金貨を一枚くれた。
ほんとに運が向いて来た。
狩りにも招待された。護衛と一緒に狩場を馬で走った。いい馬だった。
狼は狩れなかったが、馬から降りたら女が声をかけてきた。
上品に一緒にお茶を飲んだだけだったが、いい匂いがする女だった。
王子の大叔父でなつかれていると言うとえらく感心されてしまった。
女は俺の手を握ると
「王宮で声をかけますね」と言った。
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