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ナンダロネの冒険譚  作者: なんだろね


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黄金の卵を見つけた約一年前の出来事。


 俺とロネは、人生の中で初めて訪れる都市に浮かれていた。


 「こんなどでかい村があるなんてな〜。いや、都市か」

 「そうだね。私たちは小さな村を点々としていたからね。こんな大きな都市に入るのは初めてだから感動するね」


 俺たちは足を止めて、都市ラビュータスの大きさに感動で震えていた。


 門までたどり着くと、門番として二人の屈強な男が立っていた。


「この都市は初めてかな。身分証明書や身分を保証できるものはあるかな?」


 俺たちは生まれてこの方、小さな村を点々としていたため、身分証を持っていなかった。


「すみません、小さな村を点々としていたので身分証明書を持ってないんですけど、どうすればいいですかね?」

「それなら、入行料として一人銀貨一枚を徴収する必要があるよ」

「わかりました。これで二人分の入行をお願いします」


 ロネはそう言いながら、銀貨二枚を門番に手渡した。


「確かに受け取った。身分証明書がないなら、ギルドで銀貨一枚で登録できて、そこでギルドライセンスをもらえるんだけど、それが身分証明書に使えるよ」


 門番の人は都市の地図を持ってきて、わざわざギルドの場所まで教えてくれた。


「ありがとうございます」

「この都市を楽しんでくれ。良い一日を」


 門を通り過ぎると、規則正しく並んだ綺麗な建物がずらりと並んでおり、多くの人々が行き交うその迫力に驚きを隠せなかった。


「うわ〜、中ってこんなことになってるんだな〜」

「こんなに人がいるんだね。それにこの都市の建物、綺麗に並んでてすご〜い」


 俺たちは初めて見る光景に感動していた。


 俺たちは都市をある程度探索した後、そこまで高くなさそうな食事所で食事をとっていた。


「そういえば、ギルドに登録するのに銀貨一枚だって、そんなにお金いるんだね〜」

「今の私たちの手持ちは合わせて、銀貨一枚と銅貨五十枚しかないね」

「じゃあ、どっかで働かせてもらって銅貨五十枚稼ぐか〜」


 俺たちはギルドに登録して冒険者になることが夢だったため、どこかで銅貨五十枚を稼ぐ必要があった。


「おーい、そこの君たち!今の話は聞かせてもらったよ!」


 俺たちが今後の方針を示し合わせていると、後ろから大柄の男に声をかけられた。


「えっと、あなたは……」


 急に声をかけられたので、俺たちは警戒を露わにしていた。


「俺はハールスドル・ウォード。ここの領主の息子で、この都市の騎士団長の任を預かっている」


 そう言われて、俺たちは立ち上がり背筋を伸ばし、目線を合わせずに会釈を行なった。


「騎士団長閣下、いかがなさいましたでしょうか?」


 俺がそう言うとロネが横から腹に肘鉄を入れてきた。


(バカ、貴族様の許可なく喋るな)

 ロネが小さい声かつ早口で耳元で囁いてきた。


「気にするな、気にするな。俺はそんくらいで別に罰したりしないよ。それに俺から話しかけてきたんだし」


 ロネの囁きも聞こえてたらしいが、ウォードと名乗った貴族は寛容なことに、特に罰を与えるつもりはないみたいだ。


「では騎士団長閣下、私たちにどのようなご用件でしょうか。見た目通り私たちは田舎者でして、閣下のお役に立てることはあまりありませんが……」

「いや、今は人数が欲しくてな。さっき後ろから聞いていた限りだと、お金がないんだろ? もし、この話に乗ってくれるなら宿代一週間分と、それぞれ銀貨一枚ずつ報酬を払うと約束する」

「それはもちろん、騎士団長閣下のお望みなら」


 ロネがそう言うと、ウォード様は小さなため息を吐きながらこっちを見た。


「先ほど言った通り、別に俺の言うことを断ったくらいで罰したりするつもりはない」


 俺とロネは顔を見合わせて頷き合った。


「いえ、私たちとしてもお金がないため、騎士団長閣下が保証してくれる仕事で、報酬も凄いというのはありがたいんですよ」

「そうか。まぁ、命の危険はあまりないから大丈夫だと思うが……」

「それを聞いてさらに安心しました」

「たが、結構肉体労働で大変だぞ。今更聞くがお嬢さんも一緒で大丈夫なのか?」

「はい、ある程度肉体労働はできると思います」

「そうか、まぁ人がいて困ることはないか。じゃあ、個人依頼として正式に依頼させてもらうよ。これがその依頼書ね」

「わかりました。ありがとうございます」

「あ、あと俺のことは騎士団長って呼んでくれ。ここの都市にいる奴らはほとんど騎士団長って呼ぶから、それに慣れちまってよ」

「わかりました、騎士団長様」

「まぁ、それでいいか」


 そう言い残すと、ウォード様は食事所から出ていった。


「ふぁ〜、緊張した〜」

「ね、びっくりしたね」


 俺たちは初めて会う貴族に緊張していた。


「それで、依頼内容はどんななの?」

「依頼内容はこの近くにある森林の、浅い所の伐採だって。木材が必要らしいよ」

「あ〜、最近少し寒くなってきたから、早めに寒さ対策を行うのかな?」


 火をつけるのは魔法でもできるが、魔法が使える場所は魔力がある程度濃い場所に限られる。魔力が薄い居住地での寒さ対策は基本的に暖炉であるため、このようにでかい都市だと木が大量に必要なんだろう。


「そうだね。じゃあ、これ食べたら早く森林の方へ向かうか」

「おっけー」


 渡りに船とはこのことであり、俺たちは必要な金と宿を確保することができた。




 城壁の外の森林の前にある平原には、およそ三十人近い人たちが集まっていた。


「よーし、集まったか! これから寒くなるからな、今のうちにできるだけ木材を確保するぞぉー!」


「「「おー!」」」


 ウォード様の号令によって、森林の伐採が開始された。


 各々違った心鏡の能力で森林を伐採していた。ある者は獣化して身体能力を上げ、拳で木を折ったり。ある者は槍を作り出し、木を何箇所も貫いて倒したり、心鏡が攻撃的なものじゃない者は、支給された斧で木を切ったりしていた。


 中でも一番伐採のスピードが速かったのはロネで、心鏡の鎌を作り出し、斬撃を飛ばすと一回の斬撃で三本くらいの木が切り倒された。それが続けて何回も連続で行われるため、百本くらいの切り株ができたあたりで、ウォード様から待ったが入った。


「おい、おい、凄いお嬢さんだな! 斬撃が飛ぶなんて心鏡、数えるくらいしか見たことないぞ」

「お褒めいただき光栄でございます」

「ただ、こっからが大変だぞ〜。これを城壁外の倉庫まで運ぶ必要があるからな〜」


 ウォード様は遠い目をしながら言っていた。


 俺は心鏡の布を作り出し、粘着性を強くした布を用いて、丸太四本をいっぺんに浮かび上がらせた。


「騎士団長様、俺は先に運んでますね」

「待て待て、お前も凄いな……。一つ提案があるんだが、馬に乗ることはできるか?」

「はい、一応」


 俺がそう言うとウォード様は自分が乗っていた馬を持ってきた。


「じゃあ、この馬を使って何回も往復してくれるか? 丸太を置く場所は門の近くならどこでもいい」

「俺に貸してもいいので?」

「あまり良くないが、なんとなくお前なら大丈夫だろ」


 俺がウォード様の言葉に呆れている間に、ウォード様は丸太を一箇所に集めるように周囲へ指示を出していた。俺はつくづく思った、貴族でも変な人がいるんだな、と。


 ウォード様から借り受けた馬は脚が速く、往復で十分くらいだった。


 途中から俺の心鏡でどこまで運ぶことができるか試したりしてみて、最終的には一回で六本の丸太を運ぶことができていた。そのため、完全に暗くなる前にすべての丸太を集めることができた。


「いや〜、助かった!本当に助かった!」


 本来なら何日にも分けて行う仕事を一日で終わらせることができたのが嬉しいのか、ウォード様は上機嫌にしていた。


「君たち、今更だけど名前はなんて言うんだ?」

「私がロネで、こいつがナンダです」

「へぇ、ロネとナンダね。いや〜、こんな使い勝手のいい心鏡を持っているのは本当に珍しいな〜。ぜひ、これからも仲良くしてくれ」

「私たちにそのようなことを言っていただき光栄です」

「ここには今、俺たちしかいないから、別にそんなかしこまった言い方じゃなくていいさ。流石に公共の場所では別だがな」

「いや〜 そう言ってくれるなら楽にするわ〜」

「そうね、大体騎士団長様の性格もわかってきたし、もっと楽にするわ」

「いいね〜 お前ら気に入った!なんなら俺のこと呼び捨てでも構わないぞ」

「お、なら何かあればよろしくなウォード」

「私はウォード様って呼ばせてもらうわ」

「まぁ、いいか。これから仲良くなればいいもんな。まぁ、俺は大抵城壁の騎士団長室にいるから、なんかあったら尋ねてこい」

「わかった、今回は仕事をくれてありがとな」

「いや、こっちのセリフだ、お前らのおかげでだいぶ時短できた。感謝するよ」


 そこで報酬を受け取り、ウォードと解散した。




 ウォードが一室ずつ取ってくれた宿で、俺たちは一部屋に集まって談笑していた。


「いや〜、ここの宿、お風呂まで付いてるって〜」

「最高だわ。ウォード様に感謝ね」

「本当だな〜。ここの宿一泊銀貨五枚だってよ」

「太っ腹だね」

「本当。でもここに一週間いるとお風呂がない宿に泊まるのが嫌になってくるかもな〜」

「私はもう、高くてもお風呂があるならいいじゃない、って思考になりつつあるわ」

「じゃあ、明日からギルドに登録して、たくさん稼がないとね〜」

「うん、がんばろ〜」

「じゃあ、また明日。お休み〜」

「お休み〜」


 その後、ロネを見送ったのち就寝した。

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