4話闇に飲まれる前に
美咲は懐中電灯を握り、地下の闇へと進む。階段を下るたび、冷気が体を包み、影は壁や床に揺れ、囁きが耳元で低く響く。小屋から遠ざかるほど、空気の重みが増し、呼吸をするたび胸が締め付けられる。
壁の刻印や手紙、写真の一つひとつを丁寧に読み解く。文字のかすれや紙の質感、墨の匂いまで感じ取り、影はそれに応じて微かに揺れ、形を変える。影はまるで生きているかのように、美咲の動きに反応する。
奥の広間に足を踏み入れると、古い机や棚、散乱した紙や道具が床に広がる。影はそのすべてに映り込み、光を帯びて揺れ、壁の文字や刻印と共鳴して囁きを増幅する。微かに流れる風も、床板の軋む音も、すべてが恐怖を加速させる。
美咲の心拍は早まり、手が震え、呼吸が浅くなる。影の形は微かに人の輪郭を帯び、過去の記憶や失われた声を映し出す。箱に入った手紙や写真の一枚一枚が、その空間の時間を止めるかのように重く、美咲の胸に迫る。
「…逃げられない…全部、見なきゃ…」
恐怖と好奇心が入り混じる中、美咲は一歩ずつ、影が導く闇の奥へ踏み出す。足元の砂利や落ち葉の音、冷気の微細な振動、影の揺れ、囁きのリズム、すべてが彼女を包む。
通路の先にはさらに扉があり、その奥には未知の空間が待っている。影は揺れ、囁きは低くなるが、導くように微かに光を放つ。美咲は手紙と写真を抱え、恐怖と好奇心を胸に、一歩ずつ進む――。




