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あんなタイトル  作者: 櫻木サヱ
見えざる手

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28/40

2話闇を裂く影

小屋の奥に一歩踏み入れると、冷気が全身を包み、美咲の息が白く立ち上る。床板の軋む音が響き、影が壁や天井を滑るように揺れる。まるで恐怖そのものが形を持って生きているかのようだ。


美咲は手にした箱を抱え、懐中電灯の光をゆっくり壁に当てる。壁に刻まれた古い文字や模様が微かに浮かび、揺れる影の中で不気味に反射する。影は生き物のように微細な動きを繰り返し、囁きは低く、耳元で絡みつくように響いた。


箱を開くと、中には古い手紙と写真がぎっしり詰まっていた。手紙の文字はかすれ、ところどころ破れているが、孤独と恐怖、諦めの声がにじみ出る。写真の中の子どもたちは微笑んでいるはずなのに、影が伸びてゆがみ、まるで彼女を見つめているかのように揺れる。


「…ここで、何が…」美咲は小さな声でつぶやく。

耳元で囁きが重なり、過去の記憶や影が絡み合う。胸の奥がぎゅっと締め付けられ、背筋に冷たいものが走る。


扉の奥にはさらに深い闇が広がる。微かな光が揺れ、影が美咲の後を追う。呼吸を整え、恐怖を押し殺しながら一歩踏み出すと、影は伸び、低く呻き、まるで全てを試すかのように揺れた。


美咲は箱を抱え、壁の文字や刻印を目で追いながら進む。空気の冷たさ、床の軋む音、影の微かな揺れ、囁きのリズム、すべてが恐怖を増幅する。足を踏み出すたびに時間が止まったような感覚になり、心臓が胸を突き破りそうになる。


通路の奥に広がる空間には古い机や棚が散乱し、影は床や壁に映りながら揺れる。箱を手に取り、手紙や写真を読み解く美咲。影は人の形を帯び、過去の記憶と融合するように揺れる。


囁きは悲しみと怒り、恐怖と諦めが混ざった声となり、美咲の耳元で繰り返される。息を止め、体を震わせながらも、彼女は一歩ずつ奥へ進む――。

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