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「隆弘くん、私のこと会長から何か聞いてない?」


 なんて聞かれたので素直に答えた。「何も聞いていません」

 なんだろう、会長に生前金借りてたから返してくれるとかそういうことだろうか。そう思ったが「何も聞いていません」と答えたことをものすごく驚いているようだった。


「本当に?本当に何も聞いていないの?」


「はい。何かお話や約束があったんですか?確認してきましょうか?」


 そういうと少し慌てたように「いいのよ、いいのよ」なんて言って去って行った。

 なんだったんだろうか。しかし、いくら息子がこの会社で働いているからといって自分がここにいてもおかしくないという風情で会社に来るのはどうなのだろうか。どうかと思うが、あんな自信満々に会社に来ている人に下手に注意してキレられたら怖い。そう思って息子の方に「会社関係者じゃないお母さんが会社に来るのは止めてほしい」と伝えたのに一向に改善することはなかった。でも、これからは社員証がないと入れないシステムを導入するのでこういったことはなくなるだろう。

 まるで自分が社長です!みたいに堂々とやってくるので、息子が勤めているということできっと何か勘違いしていたんだろうな。会長だった亡き父にやたらなれなれしく接していたのもそういうことが原因だったのかもしれない。


「社長、お電話です」

「わかった」


 おっと、いけない。仕事、仕事。


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