車窓を外から眺めて
毎回思うのですが、少し特殊なことに手を触れてみたいと思うのです。
——列車接近!
警笛が鳴り、メガホンから拡声器特有のフィルターにかかった、かすれたような声がそう叫んだ。
列車見張り員の合図とともに作業員たちは作業を辞め道具を片付け始める。退避寸法の目安は軌道中心から2.3Ⅿ離れたところを規則としている。厳密にいうと建築限界は1.905Ⅿであるから、退避寸法もそれと同等と考えてよい。2.3Ⅿは養生を兼ねての寸法になる。しかしながら退避においてわざわざ寸法を測ることはしない。たいていは施設物より外へ退避する。つまり電力柱より外側である。というのも電力柱がいちばん列車を干渉しないぎりぎりに建てられた鉄道施設物だからである。
退避を終えると責任者が45度の傾きで手をかざす。そして全員がそれに倣う形となる。この形は鉄道仕事を扱うのに際して必要不可欠な形態の一つである。軌道内で作業する場合、列車見張り員を立て、車両監視を行い、列車接近の合図をさせ、接近に伴い退避を行い、退避完了を列車の運転手に伝え、列車が無事に通れることを列車の運転手が確認し、無事に列車が通過するのである。
——だるいな。
真夏を過ぎたころから赴任した某建設現場で、彼はレールを測っていた。すべてが直線の区間である当現場は列車が現れるのは下り側の駅の向こうのカーブからか、上り側の坂の頂点からである。すでに午前も午後もレールを測っているが、そんなに毎日このレールの基準高さを計測して一体何の成果が上げられるのだろうかと思っている。
鉄道近接位置にH鋼の杭を打って土留めをしながら、造成作業を延々とする現場であるが、土留めをしながらも一向に掘り出す気配のない工程が、ここへ来た彼をしばらく退屈させることになった。人がいるためか、それとも人が余っているためか、無用な計測作業が1か月以上も続いている。別段その責任が彼のためにあるわけではない。仕事であるから、計測作業も毎日しなければいけないのだろうが、本当にこの計測は毎日する必要があるのだろうか? 彼は1か月も続けていてはなはだ疑問だった。
取り急ぎは何の感慨もなく




