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無人の一言3
期待をしてはいけない。そこにあるのは複数の連続した行為と、二つに絞られた選択のみである。
「11時にG駅北口の○○カラオケ店の前で待ち合わせましょう」
ここまでの約束にこぎつけるのにいくらか払っている。一つのメッセージを送るのに数百円も払わなければならないうえに、行為に数万払わなければならない。こんな悪徳な商売が成り立つのだろうか? しかも当の本人は来ない。
私は不思議な面持ちのままメールすることにした。
「もう1時間待ちました。帰ります」
数分もしないうちに返事が来た。
「仕事で急に打ち合わせが入ってしまいました。終わったらすぐに向かいます。もう少し待っていてください」
私は夜勤明けのけだるさとともに、商売女というのはこんなものかと思った。
メールの返事も見終わらないうちに、山手線に乗り込んだ私は、新宿へと引き返していた。何の感慨も浮かばなかった。混雑する電車の中で吊革につかまる私に脇に女の髪がこそこそと触れてくることが何かしらの背徳感を思わせた。
初めから私は知っているのだ。あと二件ある。あと二件の約束のうちどこで捕まえることができるだろうか――。それとも今日は何も得られずに終わるのだろうか。
絶望の中で少しの期待を持ちながら、私は電車に揺られているのだった。
そして次に行くだけだ。




