時を止めて
朝焼けが東京都心からやってくる。H駅3番線ホーム7時弐拾九份発特急あずさ壱号に乗るために、息も白く現れる早朝の私は東京の西にして割とこの大きな駅でプラットホームをゴムグリップのよく効いたトレッキング用の簡易な靴で足音をなにか小さな鳥の鳴き声のような音をキュッキュッと言わせながら歩いている。
C線は幾度となくT行が3番ホームを通過したけれど、あんな関東平野の隅っこまで平日の朝から出向くような人がこんなにいるのだろうかと、思わされるほど人通りが多い。乗る人がいれば降りる人もいる。特に意識して考えたこともないから、それは水の流れのような出来事である。残像が幾度となく通り過ぎて、私はまた時間の中に取り残された。
プラットホームとは不思議なもので、このとき特急券を買いに早めにH駅まで訪れた私は、たしかに券を購入してから半時ほど何をするでもなく待つことしていたわけだ。別段隣の人が何者であるだとか、目の前の歩く人たちが知り合いというわけでもない。私はその駅で何者でもない人間たちを見ていたわけだが、そんな私もやはり傍から見れば何者でもない人間だった。待つという行為の中に、なにとも関係しない空白の時間がそこにはあった。逆に言えば私はその時、時を止められていたのである。
券を見ると8号車5番とある。やがてあずさ壱号が入線してくると私はプラットホームの端にある停車位置を探して歩き始めた。




