イチ
彼女[メリッサ]は憂鬱であった。
御年35歳の彼女には夫がいない。これは決して彼女がモテなかったわけでも、結婚した男が亡くなって未亡人になったわけでもない。単純に彼女の怠慢であった。付き合うのが面倒だからと言って今まですべての誘いを断ってきたことによるものであった。
このカイロ村に住む、すべての男衆は結婚してしまい、残るは爺さんどもと生まれたばかりの子供たちのみ。つまりは残り物となってしまったのであった。
「このままではいけない、何とかして貰い手を見つけねばならん。」
そういって頭を抱えているのはメリッサの母[ミナミ]である。
メリッサは別に結婚できなくて憂鬱なのではない。むしろ結婚など面倒なのだと考えていたのであった。もっと自由に過ごしたいのだ。なのに母は毎日、結婚しろ、男を見つけろ、ろろろろろ。
「この子のことはものすごく愛しているんだけどね。むしろこの子がいればいい。そうだ、この子と結婚することにすればいいんだよ!」
「何を馬鹿なこと言ってるんだい!!そんな馬鹿言うまえに、さっさと男を探してこんか!」
「にゃぁー。」
この子とは、数年前メリッサが森で拾った猫[タロー]のことである。この世界には様々な種類の猫たちがいる。小さくて可愛らしい猫から体長2、3mほどにまで成長した大きな猫までおり、また、大人しく人懐こい猫から好戦的で凶暴な猫まで、まさに多種多様と言える。
メリッサは村では腕のいい狩人で、王国の人間も入るのをためらう森にちょくちょく入っては狩りをし、その獲物で生活しているのだが、いつもの通り魔の森に入って狩りをしていたところ、怪我をしてうずくまっていたパンサーキャットの子供を見つけたのである。村の人には止められたが、連れて帰って手当てをしたところ、そのまま懐いてしまった。しょうがないのでメリッサの家で番犬、もとい番猫として生活しているのである。
メリッサの言う通り、見た目は確かに猫である。だが、確かに拾ってきた当初は手に乗るほど小さくかわいらしかったのだが、数年もたてば立派な成獣となった。パンサーキャットは一般に体調4mまで成長するものと言われており、並の戦士ならば一撃で屠る程の能力がある。
状態:
タロー[パンサーキャット](テイム@メリッサ)
さて、生まれたものは皆加護を与えられる。もちろんタローにもそれは同様であった。まず、タローに与えられたのは恋愛のアルカナ、授かった能力は魅了である。
魅了であった。
そんなタローも立派な雄。そしてもちろんメリッサのことは大好きであった。であれば、これは必然であったのかもしれない。




