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隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~  作者: 空気人形


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「仕掛けられた扉」

これは怪異の類とはまた少し違うのだが、自分が体験した中で最も恐ろしく、そして今でも後味が悪い話だ。


大学受験のため、前日に見知らぬ街のビジネスホテルへチェックインした。

翌日の試験に備え、部屋で黙々と勉強に励んでいた夕方のこと。途中で席を立ちトイレに入っていると、部屋のドアを「コンコン」とノックする音が響いた。


一人で受験に来ているため、訪ねてくる知り合いなどいるはずがない。

不審に思いながらもそのままトイレをしていると、次の瞬間、カチャリとドアが開く音がした。


慌ててトイレから顔を出すと、見知らぬ人物がすでに部屋の中まで入ってきていた。

私の荷物のすぐ手前まで迫っていたその人物は、私と目が合うと「あっ」と声を漏らし、そのまま逃げるように廊下へ去っていった。


ホテルの清掃が入る時間でもない。恐怖と混乱の中でドアへ駆け寄り確かめてみると、オートロックのラッチ部分にプラスチックカードが挟み込まれており、外から施錠されないよう細工がされていた。


チェックイン時には気づかなかったが、誰かが事前に部屋に侵入し、鍵がかからないよう仕込んでいたのだ。あまりの気持ち悪さに、震える手でそのカードを抜き捨てた。


翌朝、チェックアウト時にフロントへクレームを入れたが、スタッフは終始曖昧にはぐらかすばかり。試験の時間が迫っていたため、それ以上追及することもできず会場へ向かうしかなかった。


試験を終え、帰りの列車に揺られながら、ふと冷や汗が吹き出した。

もしあの時、部屋を留守にしていたら。もしトイレから出なかったら。

貴重品や、大切な受験票ごと荷物を盗まれていたのではないか。あるいは、それ以上の目にあっていたのではないか。


後日、利用した旅行会社にも事の顛末を伝えたが、ホテル側からの納得のいく説明はなく、真相は闇の中のままだ。

『隙間奇談 ~日常の「すきま」に潜む、奇妙な短編集~』をお読みいただきありがとうございます!

毎日20時に更新しておりますので、明日もぜひお越しください。



また、別作品の中編ホラー『群青の嘘 ~港の廃屋と消えた少女~』『海冥の檻〜偶像(かみさま)の言う通り~』も掲載中です。


『隙間奇談』とは一味違う、じっくり魅せるホラーとなっておりますので、こちらもあわせてお楽しみいただけたら幸いです!


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