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World Hearts ♪ ワールド ハーツ  作者: 道徳を忘れた紳士
第一章 ファースト・コンタクト
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第四話「宇宙人と作曲」

 ある日、突如としてインターネットに表れたある一人の少女。


 楽曲動画の投稿と共にデビューを果たしてから未だ一年も経っていないにも関わらず、音楽アーティスト界の超新星とも呼ばれるモチの快進撃は凄まじかった。


 世間はその彼女の歌唱力を、七色の歌声の持ち主や天使の歌声たりと称し、

 MV映像では、CGとは思えないほどの地球と新東京を軸としたスケール感満載のハイクオリティ動画を毎回提供していたり。SNSでは、中毒性の高いリズムとマッチしたモチダンスが流行ったりとで、街中でも、時折モチダンスを踊る人も見かけるようになった。


 それだけでは終わらない。


 モチはデビューをしてから1年足らずでソロアルバムを3つもリリース。

 どれもキュートでゴージャスな映像付きの、モチのカリスマ性が宿った集大成。

 もちろん言うまでもなく、瞬く間に注目の的。

 これはどの世界アーティストを見ても、尋常じゃない投稿スピード。

 ネットを開けば、コラボ案件やレコード会社からの捜索願いに聞こえなくもないネット記事が出るほどに注目されている。

 それでもなお連絡手段を残さない。DM返信もしないことでさらに有名になった正体不明の謎アーティストだと言われているのが、彼女、モチだ。


 これだけ説明すればいいだろうか。

 これはモチが宇宙人だからで説明できるのだろうか。

 ともかく今、僕はそんな超有名な彼女と作曲をしている。


「ここの無音からドロップ入る前にシュワ〜ってやつ入れたらもっと弾けるんじゃない?」

「ロンナイスアイデアロン!シュワ〜ね。これこれこれ、こうかな?」


 サビ前のドロップについて、一つ提案をした。

 するとモチは慣れたような手つきで、僕のイメージした通りの音源を瞬時に探し当てた。


「モチはや」

「えへん。んじゃ、もう一回聴いてみよ」


 バチンッ!! 

 と、

 モチは曲を再生する度に、これでもかというほどにスペースキーを叩きつける。

 彼女は毎回これほど躍動感あふれる感じで作曲しているのだろうか…


 ♪♪♪~


 ここで気になったところが1つある。

 それはモチが作曲に使っている音源やプラグイン、アセットなど、更にはシンセでの音作り、果てには手癖までもが驚くほどに僕と似ているという所だ。

 マイクもいい物を使っているし・・・・って

 これこの前物置部屋にしまってから無くなったと思ってたやつじゃねえかおい。


 ・・・もともと僕の作る曲とモチの作る曲のジャンルが同じだという事は分かっていたが。

 僕はいつも曲を成り行きで作っているので、

 自分が欲しいものだったり、作りたいものだったりがあまり決まっていない。

 でもモチにはそれがある。

 己の信念のような、固い意志が。

 柔らかそうな名前なのに…


 そして僕はその彼女の意志(リズム)に共感できてしまう。

 Vibe(バイブス)の良さというか、僕が求めているものというか。

 キーボードに手を置いては自分の鼻唄の感覚を打ち込み当てる。

 この感覚というか。


 まあ、でもあちらはプロで有名だから、僕も無意識のうちに影響されていたのかもしれない。

 自分でも何を言っているのかが分からなくなってきた。


「モチちゃんは歌詞からマスタリングまで全部一人で作ってるの?」

「そうだよ」

「wow, ワンマン?」

「ワンガールね」

 

 驚いた。

 だって本来なら、モチみたいなこういう(アイドル)アーティスト活動の裏には、必ずビッグな企業や優秀な作家がついているはずだ。

 だけど音源の並べ方、フォルダーの仕切り、適当にくっつけられている予備歌詞みたいなフレーズたち、見る限りすべて自分で作っているように見える。

 別にモチが一人でできないと疑っているわけではない。

 その逆だ。全てを一人で作っていることに驚いているのだ。

 

「これからは全部ロン譲りになるけどね」

「はい?聞き間違いですか?」

「その通りだよ」


 どの通りだよ。

 この人は本当に面白いことを言う。


「僕と一緒に曲を作るって、

 この一曲に参加するんじゃなくて、僕が全てを?」

「そう。全部。それでわたしが歌うの」


 僕に丸投げするだって? あのソロモチが?


「これ以外の曲も?」

「これからの曲も」

「お、oh、ok…」


 こんな交渉見たことがない。

 僕自体、交渉をあまりしたことないのもあるが。

 でも一応これって僕がモチちゃんのことを全面プロデュースするって事になるのか?

 本音を言えば嬉しいけど、本当に僕で大丈夫か?

 色々と大変になりそうだし。


 そんなこんなで、曲を練り始めてから2時間が経過した。

 道中、モチのフレンドリーでパッションな喋り方もあってか、最初の敬語も少しずつ抜けていった。


 名前だけは、モチから散々「さん?」と言われたので、「ちゃん」付けで行こうとも思ったが、

 ちゃん付けをすると、どうもモチさんの権威が目下の存在に感じてしまうので、

 ここは敬意を払って、そのままモチとよぶことにした。

 そのほうが呼びやすいし。


 ~♪。



「「良くなった!!」」

「やっぱりロンは分かってるね!」

「そうかな?」

『やっぱり?…?』


 モチはこちらを見ながら、にっこり褒める。僕は照れる。

 感覚的にこの方が気持ちよく聞こえる表現を伝えただけなのに、

 それを一発で理解して、そのように再現できてしまうモチの方が凄いけどな…


「で、モチさ…この曲の歌詞は既に作ってあるので?」

「この曲の歌詞はロンに任せる」

「任せる?!」

「全部ね」


 歌詞は全部任せる?!・・・そんな光栄。喜んで書かせてもらおう。

 大御所の概要欄に僕の名前が載ることを考えるだけでウキウキする。

 おっと、気を取り乱してしまっていたか。思い出せ、ここは宇宙船の中だぜ。


「あと、さっきのここにあった歌詞みたいなやつは?」

「んん~、あれは他で使うかな。なんか思ってたのと雰囲気が違った」

「そう?じゃあ新しく考えてみるよ」

「よろしく」


 歌詞は曲の心臓。

 アーティストの思想と方向性を指す重要な羅針盤。

 いくらリズムやメロディがいいからって、その言葉との鼓動が合わなければ意味がない。

 それくらい、歌詞をつけることは重要なお仕事だ。


「モチとしてはこの曲にどんな感じの歌詞をつけたいの?」

「ん~、この曲はロンとの出会いを記したものにしたいからー

 この心は?」

「僕に心を読めとでも?」

「えへへへ」


 なんてちょっとした冗談も言えるようになった。

 モチはこちらを見ながら失笑した。

 なんだ、今の。

 ちょっと恥ずかしい。


 作曲も順調に進んで、気分がよくなったところ。

 さりげなく立ち上がり、質問してみる。


「急にどしたの?」

「あのモチさん」

「あい」


 さん付けしたら、妙に不機嫌な顔をするのをやめてくれ。悪いことをしている気分になる。


「モチさんが宇宙人でこれが宇宙船だっていう事は理解しました。んだけど。

やっぱり。僕と一緒に曲を作るって、、そもそもなんで僕を知っているのですか?」

「理解してくれて結構。

 わたしがロンと音楽を作るのは・・・・その理由は・・・」


 そこで貯めないでくれ、心臓が破裂しそうだ。


「それはもちろん運命なのさ!」

「運命ですか…」


 運命・・・か

 そんな決めゼリフで宇宙人に運命だと諭されたら信じたくもなる。

 けれど、こんなにも有名な彼女が敢えて僕を選ぶだなんて。

 流石にそれは僕にとって虫が良すぎる。


 あと、僕が欲しいのはそういう答えじゃない。

 嗚呼。もうこれ以上なにも質問する気にもならない。

 

 疲れた。

 このPCの時計バグってるんじゃないのか?


「ちょっとここで横になりますね、モチさん…」

「うん。いいよ。あと…さっきの事、ロンにはいつかバレるってのは分かっていたけど、

 まさか今日だとは思わなかったよ・・・」

「・・・うん」


 んえむい…(眠い。。。)


「あ。でも、これからちゃんと話すから、もう少し……

 って・・・あらら。もう寝ちゃった」

「・・・」


 ロンは徹夜。

 いつもの朝5時の就寝時間から程よく離れて、

 そのまま目の前の円形状のクッションにぐったり倒れ込み、そのまま寝落ちした。

 モチは動かしている手を止め、ロンが眠っているベッドの方に向かった。


「・・・・・・・おやすみ、ロン。また後でね」



 z。



 zz。



 zzz。。



 その日、変な夢を見た。

 屋上でモチに出逢う夢。

 さっきの出来事じゃない。

 何処か、遠く離れた、長い夢。


 ・・・

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