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World Hearts ♪ ワールド ハーツ  作者: 道徳を忘れた紳士
第一章 ファースト・コンタクト
1/5

プロローグ

 みんなは夢を見ることはあるだろうか?


 全く見ない。という人もいれば、

 たまにしか夢を見ないという人もいる。


 僕の場合は、睡眠時間が足りれば毎日夢を見ることができる。

 しかし、その夢も全部。

 起きる頃には全て忘れてしまっているほど、

 どうでもいいようなものばかりだ。


 今度は逆に、全く夢を見ない人が、

 毎日夢を見る人の割合が意外と多いことを知ると、

 彼らはびっくりするらしい。


 なぜなら、僕もその一部の人間で、

 ()()()()ことなんて、

 人生で最も無駄な時間の一つだと思っていたからだ。


---


 幼い頃から僕は、

 父親を超える世界的音楽家ミュージシャンになることを日々目指してきた。


 母親は、僕が音楽の道を目指すことには滅法反対していたが、

 僕は母親の言う事には、全く聞く耳を傾けなかった。

 父親のドラマーだったジョナおじさんからは、「君ならなんでもできる」と、

 甘やかし半分、子供ながらにドラムや音楽の勉強を教えてもらっていた。


 小学校では、みんなとは違う肌の色もあって、少なからず嫌な事もあったけど、

 それは、周りの大人が丁寧に説明してくれたり、

 自分も会話を頑張ったりして、皆と仲良くなれたので問題にはならなかった。 

 それ以上に、親が世界的スターなだけあってか、僕はクラスの人気者だった。

 楽器もダンスもできるし、自慢ではないが、欲しいものはすぐ手に入る。

 生活に不自由したことはない。極めて充実した幼少期だった。


 そして、

 その世界的スターの息子という事に僕は、

 自分に計り知れない才能が眠っているんだと自惚れていた。

 しかし、現実はそう甘くはなかった。


 あれは小学校5年生の時だったかもしれない。

 いきなり職員室に呼び出されて、翌日にはもうアメリカにいた。

 


 父親が死んだ。



 周りからは不良の死だと聞かされた。

 母親もジョナおじさんも、他の人たちもみんな彼を囲んで泣いていた。

 それでも僕は泣かなかった。泣けなかった。

 だってあの人は、数ヵ月に数日くらいしか僕と母親と顔を合わせなかったから。

 それでも、彼の決して笑顔とは呼べないその寝顔を見ると、

 僕の今までの()()がいなくなったんだとその時悟った。


 それからだろうか。

 僕が子供の頃に夢見ていた世界スターになる夢を諦めたのは…


 おまけに母親は、僕のことなど見向きもしなくなった。

 そして高校に入るころには、僕はジョナおじさんと二人暮らしをしていた。

 悪い生活ではない。

 ただ、僕の知らない誰かの為に皆が涙を流して、

 十年以上経った今でもなお、周りに気を使われているのが気掛かりで仕方がない。


 だけど、今になって母親が言っていたことの理由が少し理解できた。

 父親は子供の頃から、

 その歌唱力、リズム感、スター性でテレビやラジオを一世風靡させていて、

 大人になってからは、ダンスパフォーマンスやライブの積み重ねで、

 さらに有名…超有名になって

 何年経とうが、どんな音楽素人が彼を見ようが、一目瞭然。

 彼の輝きは、本当に世界を動かすレベルだった。


 つまり僕の場合は、

 子供の頃から人脈や伝手によって世間に顔出しするのではなく、

 ただ小さい頃から楽器を学んだ、

 (いち)普通の子にしか過ぎなかったっていうことだ。

 親が世界的スターであっても、その子はスターじゃないし、

 スターになるわけでもない。

 あの頃の誉め言葉は全部、僕に向けての称賛ではなくて、

 スターである親父に向けてのものだったという事に気がついたのも、

 数年たってからのことだった。



 ある日の学生時代。

 友人たちが『昨日、あの有名人と一緒にパーティーしている夢を見たんだ!』

 と楽しそうに話しているのを聞いて、

 僕は心の中で、ふと首を傾げた。


 朝起きたときの夢なんて覚えていない。

 覚えていたとしても、それが何の役に立つというのか… 

 寝ている間の時間ほど無駄なものは無いし、

 寝ているときに見る夢ほど意味のないものはない。

 現実で起きていることで精一杯なのに、(勉強とかテストとか)

 寝ている間の下らない妄想なんかに時間を割く必要が在るのだろうかと、

 日々そう思っていた。

 (一応、これは人間の生物性を問うたものではなく、ただそう思っていただけだ)

 

 だからこそ、夢を見なくなっていた僕は、

 「私は毎日いろんな夢を見ているよ」とモニカが言った時、何とも思わなかった。

 寧ろ、夢の中でも変なことに巻き込まれているのではないかと心配した。

 でも、正直ちょっとは羨ましい。

 いや、気になる。が正しいか。

 そしてモニカに一言、どんな夢を毎日見ているのかを聞いてみて、

 そこで僕は気が付いた。


 僕は寝る時の夢と、将来の目的の方の夢を混合しているのだということを、

 父親が居なくなって諦めていた()は、現実じゃないっていうことを…

 世界的スターになる夢は諦めても、僕は音楽を辞めなかった。

 正確に言うと、それ以外にやりたい事が無かっただけなのだが。

 たとえ、音楽で世界が取れなくても、

 音楽はこのすべての気持ちを和らげ、没頭して忘れさせてくれる。

 そんな魔法があるのだ。

 

 だから、

 今もこうしてベッドで音楽を聴きながら、夜更かしスマホをしている…

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